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プロローグ(一章まるごと読み飛ばしOK非エロエピソード)
計画の経緯
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「今次計画においてもホムンクルス体をベースとする点は同じですが、こたびはホムンクルス体の構成素材をアダマンタイトに変更。
一度通常の方法でホムンクルス体を構成。その後、ファウスト博士のお力と教皇庁よりお借りした遺物『アダマンタイト・アセンブラー』を使い、ホムンクルス体の体組織を構成する分子すべてをアダマンタイトへ置換していただきました」
イェッタハンの説明にどよめきが起こり、全員の目が一斉に少女に注がれる。
(あんなに綺麗で柔らかそうな身体なのに・・・)
トゥリはボーっと少女の肢体に・・・特にその巨大な胸に見とれた。
(『いかなる武器によっても傷つけることかなわぬ』とはそういうことか)
アンタレスは唸った。
(待て、アダマンタイトは既に製造技術が失われ、宇宙移民時代に生産された少量が遺されるのみの超貴重品。それでホムンクル1体まるごと作るだと!?
下手すりゃそれだけで国家財政が破綻するぞ!!)
ゾーンは彼女にかかっているであろう予算の額を想像して顔を青くする。
(この計画のために教皇庁が保有していたすべてのアダマンタイトが投入されている。それだけでも教皇庁がどれだけ本気かは明らかだ)
マリスは自分がどれだけ巨大なプロジェクトを任されたかを今更のように思い出し、己の栄達に満足した。
(ホムンクルス体が最も魔力を消耗するのは損傷した身体を回復する時の筈・・・身体をアダマンタイトとし傷つかなくなったという事は、魔力の浪費を聖乳で補う必要がないということか!?)
ゼーダは冷静に計画の全貌を評価している。
(まったく、貴重な遺物だかなんだか知らんが、あの妙な機械やアダマンタイトを運ぶだけでどれだけ金と手間がかかった事か・・・)
シャーロックはその予算をどれだけ水増し請求できるか考えを巡らせた。
(こんな高度なことを成し遂げられるのは世の中で吾輩か我が師トリニティ様くらいのもんじゃ。
今じゃコイツこそ吾輩の最高傑作じゃて)
ファウストはほくそ笑む。
この場の全員がそれぞれの立場で思いを巡らせるなか、イェッタハンは続けた。
「そして、今次計画においても聖乳精製機能は採用しますが、触媒を補給する方法は廃止し、代わりに・・・聖乳精製の原料を・・・倒した敵の、血肉ではなく・・・」
イェッタハンの言葉が急に滞りはじめた。
(なんだ、急に歯切れが悪くなったな?)
重鎮たちが訝しむ中、イェッタハンは続ける。その額には嫌な汗が浮かんでいた。
「敵の・・・血肉の代わりに・・・随行者から、その・・・供給される・・・精液・・を・・・」
アンタレスは我が耳を疑いつつも叫んだ。
「貴公、正気か!?」
「王国の!人類の命運がかかっているのですよ!?」
ゾーンも思わず詰め寄る。イェッタハンは逆ギレするように叫んだ。
「そんなことくらい、わかっておるわ!!」
(馬鹿な、それではサキュバスではないか!)
マリスは信じられない物でも見るかのような表情でイェッタハンを見る。だが、彼の聞き間違いなどではない。現にアンタレスがさらにイェッタハンを責めたてているではないか。
「婦女子を戦場へ送り込むだけでもどうかしとるというのに、よりにもよって・・・どういうつもりだ!?」
「黙らっしゃい!!
これは王陛下御自らの御立案によるものですぞ!!」
これにはアンタレスも愕然とせざるを得なかった。
「王陛下・・みずから?」
信じられないという風に狼狽えるアンタレスに替わり、ゾーンが詰問する。
「そ、それを御諫めするのが臣下たる者の務めではありませんか!」
「私が御諫めしなかったとでも思うのか!?」
イェッタハンはもはや泣き顔だった。
「いや、しかし・・・
き、教皇庁はどういうおつもりでこのような計画を御承認されたのですか?」
まだ混乱から回復できていないにもかかわらずゾーンから突然話を振られてマリスは狼狽えた。
「いや、その・・・私も計画承認後に御役目を任じられたもので・・・経緯と詳細については・・・」
「私も御諫めしきれなかった責めまでは免れぬ。
だが!さすがに教皇庁は承認なさるまい。
教皇猊下が却下されれば、王陛下とて断念なさるに違いない・・・そう思っていたのに・・・」
イェッタハンの恨みがましい視線にマリスはタジタジになる。
「いや、そう恨みがましく申されましても・・・」
(ふ、当然だ)
シャーロックは人知れずほくそ笑む。
(このために莫大な工作資金を注ぎ込み、教皇猊下や枢機卿たちを説得したんだからな。
シャーロック商会の人脈を用いればこの程度は造作もない)
ゾーンは一番気になることを質問する事にした。
「彼女の身体はアダマンタイト製とおっしゃいましたが、アダマンタイトは非常に貴重な物の筈。アダマンタイト・アセンブラーもまだ動くものがあるとは存じませんでしたが、これも大変貴重で持ち出すのは容易では無かったことでしょう。
それだけ莫大な資金が必要になる筈ですが、この計画の予算はいったいどうなっているのですか?」
イェッタハンはたじろぎつつも答えた。
「いや、費用は王陛下が王室機密費からお支払いしておられたが、その詳細な運用となると私も把握しておりませぬ。
シャーロック殿が詳細を一任されておられたはず」
「シャーロック殿に!?」
ゾーンは驚いてシャーロックを見た。それは一番聞きたくない答えだったかもしれない。
この守銭奴に国庫をゆだねて、いったいどれほど巨額な負債を抱え込まされることになるかわかったものではないからだ。
シャーロックはゴホンと咳払いをして愛想笑いを浮かべながら一歩前へ出た。
「それではわたくしから御説明申し上げます」
一度通常の方法でホムンクルス体を構成。その後、ファウスト博士のお力と教皇庁よりお借りした遺物『アダマンタイト・アセンブラー』を使い、ホムンクルス体の体組織を構成する分子すべてをアダマンタイトへ置換していただきました」
イェッタハンの説明にどよめきが起こり、全員の目が一斉に少女に注がれる。
(あんなに綺麗で柔らかそうな身体なのに・・・)
トゥリはボーっと少女の肢体に・・・特にその巨大な胸に見とれた。
(『いかなる武器によっても傷つけることかなわぬ』とはそういうことか)
アンタレスは唸った。
(待て、アダマンタイトは既に製造技術が失われ、宇宙移民時代に生産された少量が遺されるのみの超貴重品。それでホムンクル1体まるごと作るだと!?
下手すりゃそれだけで国家財政が破綻するぞ!!)
ゾーンは彼女にかかっているであろう予算の額を想像して顔を青くする。
(この計画のために教皇庁が保有していたすべてのアダマンタイトが投入されている。それだけでも教皇庁がどれだけ本気かは明らかだ)
マリスは自分がどれだけ巨大なプロジェクトを任されたかを今更のように思い出し、己の栄達に満足した。
(ホムンクルス体が最も魔力を消耗するのは損傷した身体を回復する時の筈・・・身体をアダマンタイトとし傷つかなくなったという事は、魔力の浪費を聖乳で補う必要がないということか!?)
ゼーダは冷静に計画の全貌を評価している。
(まったく、貴重な遺物だかなんだか知らんが、あの妙な機械やアダマンタイトを運ぶだけでどれだけ金と手間がかかった事か・・・)
シャーロックはその予算をどれだけ水増し請求できるか考えを巡らせた。
(こんな高度なことを成し遂げられるのは世の中で吾輩か我が師トリニティ様くらいのもんじゃ。
今じゃコイツこそ吾輩の最高傑作じゃて)
ファウストはほくそ笑む。
この場の全員がそれぞれの立場で思いを巡らせるなか、イェッタハンは続けた。
「そして、今次計画においても聖乳精製機能は採用しますが、触媒を補給する方法は廃止し、代わりに・・・聖乳精製の原料を・・・倒した敵の、血肉ではなく・・・」
イェッタハンの言葉が急に滞りはじめた。
(なんだ、急に歯切れが悪くなったな?)
重鎮たちが訝しむ中、イェッタハンは続ける。その額には嫌な汗が浮かんでいた。
「敵の・・・血肉の代わりに・・・随行者から、その・・・供給される・・・精液・・を・・・」
アンタレスは我が耳を疑いつつも叫んだ。
「貴公、正気か!?」
「王国の!人類の命運がかかっているのですよ!?」
ゾーンも思わず詰め寄る。イェッタハンは逆ギレするように叫んだ。
「そんなことくらい、わかっておるわ!!」
(馬鹿な、それではサキュバスではないか!)
マリスは信じられない物でも見るかのような表情でイェッタハンを見る。だが、彼の聞き間違いなどではない。現にアンタレスがさらにイェッタハンを責めたてているではないか。
「婦女子を戦場へ送り込むだけでもどうかしとるというのに、よりにもよって・・・どういうつもりだ!?」
「黙らっしゃい!!
これは王陛下御自らの御立案によるものですぞ!!」
これにはアンタレスも愕然とせざるを得なかった。
「王陛下・・みずから?」
信じられないという風に狼狽えるアンタレスに替わり、ゾーンが詰問する。
「そ、それを御諫めするのが臣下たる者の務めではありませんか!」
「私が御諫めしなかったとでも思うのか!?」
イェッタハンはもはや泣き顔だった。
「いや、しかし・・・
き、教皇庁はどういうおつもりでこのような計画を御承認されたのですか?」
まだ混乱から回復できていないにもかかわらずゾーンから突然話を振られてマリスは狼狽えた。
「いや、その・・・私も計画承認後に御役目を任じられたもので・・・経緯と詳細については・・・」
「私も御諫めしきれなかった責めまでは免れぬ。
だが!さすがに教皇庁は承認なさるまい。
教皇猊下が却下されれば、王陛下とて断念なさるに違いない・・・そう思っていたのに・・・」
イェッタハンの恨みがましい視線にマリスはタジタジになる。
「いや、そう恨みがましく申されましても・・・」
(ふ、当然だ)
シャーロックは人知れずほくそ笑む。
(このために莫大な工作資金を注ぎ込み、教皇猊下や枢機卿たちを説得したんだからな。
シャーロック商会の人脈を用いればこの程度は造作もない)
ゾーンは一番気になることを質問する事にした。
「彼女の身体はアダマンタイト製とおっしゃいましたが、アダマンタイトは非常に貴重な物の筈。アダマンタイト・アセンブラーもまだ動くものがあるとは存じませんでしたが、これも大変貴重で持ち出すのは容易では無かったことでしょう。
それだけ莫大な資金が必要になる筈ですが、この計画の予算はいったいどうなっているのですか?」
イェッタハンはたじろぎつつも答えた。
「いや、費用は王陛下が王室機密費からお支払いしておられたが、その詳細な運用となると私も把握しておりませぬ。
シャーロック殿が詳細を一任されておられたはず」
「シャーロック殿に!?」
ゾーンは驚いてシャーロックを見た。それは一番聞きたくない答えだったかもしれない。
この守銭奴に国庫をゆだねて、いったいどれほど巨額な負債を抱え込まされることになるかわかったものではないからだ。
シャーロックはゴホンと咳払いをして愛想笑いを浮かべながら一歩前へ出た。
「それではわたくしから御説明申し上げます」
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