2 / 15
第1章 同棲生活始まります!?
最高で最悪の転機
しおりを挟む
気に食わない。
入学した時から、気に食わなかった。
あの人の姿、声に触れるだけで、何故だか胸が高鳴ってしまう自分も、そして、
そんな俺のことなど知る由もなく、いつもいつも軽々しく話しかけてくるあの人も。
見たくないのに見てしまって、聞きたくないのに聞いてしまう。
そして、あの人の数学だけは、いつもいつも完璧にしたいと思ってしまう乙女思考な自分。どうしてだろう、嫌われたくないだなんて。
うざったい。
いったいなんなんだろう。
これが若気の至りなら、どれだけ楽だろうか。
だって、相手は先生で、しかも男で、40だ。
常識的に考えて、あり得ない。
今日の最後の授業は、古典だったが、俺はずっと頭でそんなことばかり考えていて、先生に当てられてもずっと上の空だった。
たまたま中井が助けてくれて、助かった。
中井は俺の後ろの席の、数少ない友人の一人だ。
もともとあまり人付き合いが多いわけでもないし、人が好きなわけでもないから、自分からは話しかけにいかないのだが、何故か中井だけはずっと、そんな俺のダチでいてくれる。
ぐるぐるいろんなことを考えているうちに、古典が終わった。俺は吹奏楽部の中井に軽く挨拶をして、帰路についた。
まさに、程よく黄金色の空を眺めながら、見慣れた商店街を歩いていく。
少し本屋に寄って行こうと思ったが、恋愛成就の本が置いてあったので、やめた。
阿呆らしい俺のこんな想いは、ただひっそりと枯らしてしまえばいい。
そうすればこれ以上悩むこともなくなるのだ。
考えを振り切るように歩くペースを速めれば、家はすぐそこだ。
ドアノブを握ったところで、俺は立ち止まってしまった。張り紙がドアに貼り付けられていたのだ。
[かずまへ
申し訳ないとうさんはこの家を売りましたあとで必ず迎えに行きますお金をおいておくのでどこかにとまってください]
普通の人なら父親からこんな風にされたら驚いてパニックになるのかもしれない。
だけど、残念ながら我が家はふつうではない。
どうせまた派手に女遊びして、金がなくなって家を売ったんだろう。
いつかはこうなるとどこかでわかってる自分がいた。
なにせ、親父は金がなくなると車を売ったり、俺の私物を勝手に売ったりするような男だ。
また金がなくなれば、俺も売られるのかもしれない。
俺は、張り紙の走り書きしたような、他人ならほぼ読めない乱れた文字を眺めた。
「はっ、何がかならず迎えにいくだよ。
いつもそうやって勝手に出てって、迎えに来たのは何ヶ月後だ?」
呆れている自分の中に、悲しんでる自分がいるなんて認めたくはない。
俺はどこへいくあてもなく、また商店街の方にぶらぶら歩き出した。
コンビニの前で、何時間も座り込んでいた。もう8時になりかけている。
この季節だから、そこまで真っ暗ではない。
しかし、雨が降りそうな雲が広がってきた。コンビニに入っていく連中は、俺の方を怪しげに話している。
俺は、目を閉じた。
そこで、聞き覚えのある声を聞いた。
「あれ?長月君?どうしたのこんなところで!」
それは、聞いてはいけないと耳を塞いでも、それでも胸が高鳴ってしまうあの声だ。
入学した時から、気に食わなかった。
あの人の姿、声に触れるだけで、何故だか胸が高鳴ってしまう自分も、そして、
そんな俺のことなど知る由もなく、いつもいつも軽々しく話しかけてくるあの人も。
見たくないのに見てしまって、聞きたくないのに聞いてしまう。
そして、あの人の数学だけは、いつもいつも完璧にしたいと思ってしまう乙女思考な自分。どうしてだろう、嫌われたくないだなんて。
うざったい。
いったいなんなんだろう。
これが若気の至りなら、どれだけ楽だろうか。
だって、相手は先生で、しかも男で、40だ。
常識的に考えて、あり得ない。
今日の最後の授業は、古典だったが、俺はずっと頭でそんなことばかり考えていて、先生に当てられてもずっと上の空だった。
たまたま中井が助けてくれて、助かった。
中井は俺の後ろの席の、数少ない友人の一人だ。
もともとあまり人付き合いが多いわけでもないし、人が好きなわけでもないから、自分からは話しかけにいかないのだが、何故か中井だけはずっと、そんな俺のダチでいてくれる。
ぐるぐるいろんなことを考えているうちに、古典が終わった。俺は吹奏楽部の中井に軽く挨拶をして、帰路についた。
まさに、程よく黄金色の空を眺めながら、見慣れた商店街を歩いていく。
少し本屋に寄って行こうと思ったが、恋愛成就の本が置いてあったので、やめた。
阿呆らしい俺のこんな想いは、ただひっそりと枯らしてしまえばいい。
そうすればこれ以上悩むこともなくなるのだ。
考えを振り切るように歩くペースを速めれば、家はすぐそこだ。
ドアノブを握ったところで、俺は立ち止まってしまった。張り紙がドアに貼り付けられていたのだ。
[かずまへ
申し訳ないとうさんはこの家を売りましたあとで必ず迎えに行きますお金をおいておくのでどこかにとまってください]
普通の人なら父親からこんな風にされたら驚いてパニックになるのかもしれない。
だけど、残念ながら我が家はふつうではない。
どうせまた派手に女遊びして、金がなくなって家を売ったんだろう。
いつかはこうなるとどこかでわかってる自分がいた。
なにせ、親父は金がなくなると車を売ったり、俺の私物を勝手に売ったりするような男だ。
また金がなくなれば、俺も売られるのかもしれない。
俺は、張り紙の走り書きしたような、他人ならほぼ読めない乱れた文字を眺めた。
「はっ、何がかならず迎えにいくだよ。
いつもそうやって勝手に出てって、迎えに来たのは何ヶ月後だ?」
呆れている自分の中に、悲しんでる自分がいるなんて認めたくはない。
俺はどこへいくあてもなく、また商店街の方にぶらぶら歩き出した。
コンビニの前で、何時間も座り込んでいた。もう8時になりかけている。
この季節だから、そこまで真っ暗ではない。
しかし、雨が降りそうな雲が広がってきた。コンビニに入っていく連中は、俺の方を怪しげに話している。
俺は、目を閉じた。
そこで、聞き覚えのある声を聞いた。
「あれ?長月君?どうしたのこんなところで!」
それは、聞いてはいけないと耳を塞いでも、それでも胸が高鳴ってしまうあの声だ。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
傷だらけの僕は空をみる
猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。
生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。
諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。
身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。
ハッピーエンドです。
若干の胸くそが出てきます。
ちょっと痛い表現出てくるかもです。
王道にはしたくないので
八瑠璃
BL
国中殆どの金持ちの子息のみが通う、小中高一貫の超名門マンモス校〈朱鷺学園〉
幼少の頃からそこに通い、能力を高め他を率いてきた生徒会長こと鷹官 仁。前世知識から得た何れ来るとも知れぬ転校生に、平穏な日々と将来を潰されない為に日々努力を怠らず理想の会長となるべく努めてきた仁だったが、少々やり過ぎなせいでいつの間にか大変なことになっていた_____。
これは、やりすぎちまった超絶カリスマ生徒会長とそんな彼の周囲のお話である。
学園の天使は今日も嘘を吐く
まっちゃ
BL
「僕って何で生きてるんだろ、、、?」
家族に幼い頃からずっと暴言を言われ続け自己肯定感が低くなってしまい、生きる希望も持たなくなってしまった水無瀬瑠依(みなせるい)。高校生になり、全寮制の学園に入ると生徒会の会計になったが家族に暴言を言われたのがトラウマになっており素の自分を出すのが怖くなってしまい、嘘を吐くようになる
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿です。文がおかしいところが多々あると思いますが温かい目で見てくれると嬉しいです。
真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~
シキ
BL
全寮制学園モノBL。
倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。
倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……?
真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。
一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。
こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。
今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。
当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる