僕と先生は、終わった。

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第1章 同棲生活始まります!?

最高で最悪の転機

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気に食わない。
入学した時から、気に食わなかった。
あの人の姿、声に触れるだけで、何故だか胸が高鳴ってしまう自分も、そして、
そんな俺のことなど知る由もなく、いつもいつも軽々しく話しかけてくるあの人も。
見たくないのに見てしまって、聞きたくないのに聞いてしまう。
そして、あの人の数学だけは、いつもいつも完璧にしたいと思ってしまう乙女思考な自分。どうしてだろう、嫌われたくないだなんて。
うざったい。
いったいなんなんだろう。 
これが若気の至りなら、どれだけ楽だろうか。

だって、相手は先生で、しかも男で、40だ。
常識的に考えて、あり得ない。
今日の最後の授業は、古典だったが、俺はずっと頭でそんなことばかり考えていて、先生に当てられてもずっと上の空だった。
たまたま中井が助けてくれて、助かった。
中井は俺の後ろの席の、数少ない友人の一人だ。
もともとあまり人付き合いが多いわけでもないし、人が好きなわけでもないから、自分からは話しかけにいかないのだが、何故か中井だけはずっと、そんな俺のダチでいてくれる。
ぐるぐるいろんなことを考えているうちに、古典が終わった。俺は吹奏楽部の中井に軽く挨拶をして、帰路についた。
まさに、程よく黄金色の空を眺めながら、見慣れた商店街を歩いていく。
少し本屋に寄って行こうと思ったが、恋愛成就の本が置いてあったので、やめた。
阿呆らしい俺のこんな想いは、ただひっそりと枯らしてしまえばいい。
そうすればこれ以上悩むこともなくなるのだ。
考えを振り切るように歩くペースを速めれば、家はすぐそこだ。
ドアノブを握ったところで、俺は立ち止まってしまった。張り紙がドアに貼り付けられていたのだ。

[かずまへ
申し訳ないとうさんはこの家を売りましたあとで必ず迎えに行きますお金をおいておくのでどこかにとまってください]

普通の人なら父親からこんな風にされたら驚いてパニックになるのかもしれない。
だけど、残念ながら我が家はふつうではない。
どうせまた派手に女遊びして、金がなくなって家を売ったんだろう。
いつかはこうなるとどこかでわかってる自分がいた。
なにせ、親父は金がなくなると車を売ったり、俺の私物を勝手に売ったりするような男だ。
また金がなくなれば、俺も売られるのかもしれない。
俺は、張り紙の走り書きしたような、他人ならほぼ読めない乱れた文字を眺めた。
「はっ、何がかならず迎えにいくだよ。
いつもそうやって勝手に出てって、迎えに来たのは何ヶ月後だ?」
呆れている自分の中に、悲しんでる自分がいるなんて認めたくはない。
俺はどこへいくあてもなく、また商店街の方にぶらぶら歩き出した。

コンビニの前で、何時間も座り込んでいた。もう8時になりかけている。
この季節だから、そこまで真っ暗ではない。
しかし、雨が降りそうな雲が広がってきた。コンビニに入っていく連中は、俺の方を怪しげに話している。
俺は、目を閉じた。
そこで、聞き覚えのある声を聞いた。

「あれ?長月君?どうしたのこんなところで!」

それは、聞いてはいけないと耳を塞いでも、それでも胸が高鳴ってしまうあの声だ。

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