8 / 20
私をたどる物語 <8>
しおりを挟む
マネージャーも、勢いにのった私に、攻めのマッチメイクをしてきた。
元日本ランカーのY選手。
名前は聞いた事があった。
戦績は私と同じ、6勝(3KO)3敗。
私と同じ戦績で、日本ランクまで入った事がある。
すなわち、強い相手とやってきている証である。
これは、相当気合いをいれなければいけない相手だった。
試合は激闘すぎるくらいの激闘だった。
お互い顔の変形がハンパなかった。
やはり、日本ランカーまでなった男だけあった。
なんとか判定で勝つ事ができた。
引退を考えていた3連敗から、3連勝。
ランキングにも入っていた。
日本チャンピオンまで後12人。
やる気に満ち溢れていた。
次戦、1年前に敗退した賞金トーナメントに再びエントリー。
最後に闘ったY選手も、違うブロックで出ていた。
決勝までいけば、再び闘わなければならない。
あの強さだと、勝ち上がってくるだろうなと思った。
私の初戦の相手。
関西の選手で、戦績は7勝(3KO)2敗。
これまた、中々の戦績だった。
私も3連勝という勢いがある。
流れは良かった。
ただ・・・ただ、1つ気になる事があった。
腰の爆弾・・・
連勝している時は、確かに腰の調子は悪かったけれど、それを理由にロードワークをサボっていた。
連敗してからは、ロードワークの重要性を確信し、本当に腰と相談しながら走っていた。
ところが、前回の激闘のせいか、一気に悪化した。
ロードワークだけではなく、サンドバッグを打っている時でさえ、激しい痛みを感じる程だった。
でも、ここでトレーナーに腰の痛みを訴えて、ブランクを作る時間は、今の私には残されてなかった。
親との期限である4年目。
なんとかランキングを上位に持っていきたかった。
お願い神様、もう少しだけ、もう少しだけ、待って下さい・・・。
祈るような気持ちだった。
そして、あの悪夢がとうとうやってきてしまった。
試合日の5日前。
減量もなんとかうまくいき、調整の為、マスボクシングをしていた。
軽く、本当に軽くステップを踏み、相手の右ストレートをダッキングした瞬間。
体の中で鈍い音がした。
その鈍い音・・・私の希望をへし折る音。
その瞬間、その場に崩れてしまった私。
激痛で身動きできなかった。
抱えてもらい、リングの外に運んでもらった。
悪夢なのか・・・。
頭のどこかで、(あ~試合せんでもエエかも・・・)と、思っている自分がいた。
私は毎試合、試合が決まると怖くて怖くて仕方なくなる。
試合日が決まったその日から、その恐怖心はスクスク育っていく。
本当に不謹慎なんだけれど、天変地異でも起きて、試合自体中止になればエエのに・・・って、真剣に考えていた。
病院で診てもらうと、腰椎の3番目が疲労骨折していた。
それもかなり激しく、下手すると完全に折れて、歩けなくなってしまうと医者に言われた。
「先生!お願いします!どんな方法でもエエから、リングに立たして下さい!立ちさえすれば、後はなんとかするんで!」
「コブシさん、あなた、下半身不随なってしまうよ。試合は無理だよ・・・。」
この時の事と向き合うのは、実に20数年振り。
この事は、自分の中では間違いなくメガトン級のトラウマ。
ずっと見ないようにして過ごしてきました。
最初は、最後の試合だけを書こうとしていたんだけれど、何故か憑依したように書き出してしまいました。
退行催眠療法じゃないけど、自分の中でも文章にする事によって、きちんとこの事実と向き合おうと思いました。
いつも読んでくださる方々には感謝しています。
20数年振りにたどる記憶の糸・・・・・・
後、もう少しだけお付き合い下さい・・・・
元日本ランカーのY選手。
名前は聞いた事があった。
戦績は私と同じ、6勝(3KO)3敗。
私と同じ戦績で、日本ランクまで入った事がある。
すなわち、強い相手とやってきている証である。
これは、相当気合いをいれなければいけない相手だった。
試合は激闘すぎるくらいの激闘だった。
お互い顔の変形がハンパなかった。
やはり、日本ランカーまでなった男だけあった。
なんとか判定で勝つ事ができた。
引退を考えていた3連敗から、3連勝。
ランキングにも入っていた。
日本チャンピオンまで後12人。
やる気に満ち溢れていた。
次戦、1年前に敗退した賞金トーナメントに再びエントリー。
最後に闘ったY選手も、違うブロックで出ていた。
決勝までいけば、再び闘わなければならない。
あの強さだと、勝ち上がってくるだろうなと思った。
私の初戦の相手。
関西の選手で、戦績は7勝(3KO)2敗。
これまた、中々の戦績だった。
私も3連勝という勢いがある。
流れは良かった。
ただ・・・ただ、1つ気になる事があった。
腰の爆弾・・・
連勝している時は、確かに腰の調子は悪かったけれど、それを理由にロードワークをサボっていた。
連敗してからは、ロードワークの重要性を確信し、本当に腰と相談しながら走っていた。
ところが、前回の激闘のせいか、一気に悪化した。
ロードワークだけではなく、サンドバッグを打っている時でさえ、激しい痛みを感じる程だった。
でも、ここでトレーナーに腰の痛みを訴えて、ブランクを作る時間は、今の私には残されてなかった。
親との期限である4年目。
なんとかランキングを上位に持っていきたかった。
お願い神様、もう少しだけ、もう少しだけ、待って下さい・・・。
祈るような気持ちだった。
そして、あの悪夢がとうとうやってきてしまった。
試合日の5日前。
減量もなんとかうまくいき、調整の為、マスボクシングをしていた。
軽く、本当に軽くステップを踏み、相手の右ストレートをダッキングした瞬間。
体の中で鈍い音がした。
その鈍い音・・・私の希望をへし折る音。
その瞬間、その場に崩れてしまった私。
激痛で身動きできなかった。
抱えてもらい、リングの外に運んでもらった。
悪夢なのか・・・。
頭のどこかで、(あ~試合せんでもエエかも・・・)と、思っている自分がいた。
私は毎試合、試合が決まると怖くて怖くて仕方なくなる。
試合日が決まったその日から、その恐怖心はスクスク育っていく。
本当に不謹慎なんだけれど、天変地異でも起きて、試合自体中止になればエエのに・・・って、真剣に考えていた。
病院で診てもらうと、腰椎の3番目が疲労骨折していた。
それもかなり激しく、下手すると完全に折れて、歩けなくなってしまうと医者に言われた。
「先生!お願いします!どんな方法でもエエから、リングに立たして下さい!立ちさえすれば、後はなんとかするんで!」
「コブシさん、あなた、下半身不随なってしまうよ。試合は無理だよ・・・。」
この時の事と向き合うのは、実に20数年振り。
この事は、自分の中では間違いなくメガトン級のトラウマ。
ずっと見ないようにして過ごしてきました。
最初は、最後の試合だけを書こうとしていたんだけれど、何故か憑依したように書き出してしまいました。
退行催眠療法じゃないけど、自分の中でも文章にする事によって、きちんとこの事実と向き合おうと思いました。
いつも読んでくださる方々には感謝しています。
20数年振りにたどる記憶の糸・・・・・・
後、もう少しだけお付き合い下さい・・・・
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
霜月は頭のネジが外れている
霜月@サブタイ改稿中
エッセイ・ノンフィクション
普段ゆるーくポイ活をしている私(作者:霜月)が、あるポイ活サイトで『ごろごろしながら小説書くだけで二万稼げる』という投稿をみて、アルファポリスへやってきた。アルファポリスに来て感じたこと、執筆のこと、日常のことをただ書き殴るエッセイです。この人バカだなぁ(笑)って読む人が微笑めるエッセイを目指す。霜月の成長日記でもある。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
身分差婚~あなたの妻になれないはずだった~
椿蛍
恋愛
「息子と別れていただけないかしら?」
私を脅して、別れを決断させた彼の両親。
彼は高級住宅地『都久山』で王子様と呼ばれる存在。
私とは住む世界が違った……
別れを命じられ、私の恋が終わった。
叶わない身分差の恋だったはずが――
※R-15くらいなので※マークはありません。
※視点切り替えあり。
※2日間は1日3回更新、3日目から1日2回更新となります。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
リアル男子高校生の日常
しゅんきち
エッセイ・ノンフィクション
2024年高校に入学するしゅんの毎日の高校生活をのぞいてみるやつ。
ほぼ日記です!短いのもあればたまに長いのもだしてます。
2024年7月現在、軽いうつ状態です。
2024年4月8日からスタートします!
2027年3月31日完結予定です!
たまに、話の最後に写真を載せます。
挿入写真が400枚までですので、400枚を過ぎると、古い投稿の挿入写真から削除します。[話自体は消えません]
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる