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4章 文化祭

うわ、アイスクリームの事言ってんのか?

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 お好み焼き屋からみんながぞろぞろと出て行き、二次会へ向かう奴、帰る奴と分かれた。
 俺は二次会に行くつもりで、伊織と二人で歩いていた。

 カラオケとか久しぶりだな~♪しかもこの人数とかすげぇ盛り上がりそうじゃん。
 俺はワクワクしていると、後ろにいた紘夢に声を掛けられた。


「貴ちゃん、あのさー?」

「ん?どうした?」


 立ち止まって振り向くと、紘夢の隣には空がいた。俺と空はさっき言い合ったままで、一言も交わしていなかった。


「カラオケ屋さんに着くまでに空くんと話してくれないかな?ほら、喧嘩したままでしょ?二次会も楽しく過ごしたいし、ね、いーくんも貴ちゃん借りてもいいでしょ?」


 紘夢はいつもの笑顔でそう言った。
 俺の隣にいる伊織にも確認してるけど、別に空が怒ってねぇなら俺はもう気にしてないってか軽く忘れてたからいいんだけど……
 伊織は俺を見てた。


「てか早川と喧嘩してたのか?」

「喧嘩っつーか、ちょっとした言い合いした。なぁ、話して来ていいか?」

「それ二人で話す必要あるのか?別に今ここでお互い謝って仲直りすれば済む事だろ?」


 あ、やっぱりダメなのね。
 ワンチャン、いいよって言うかと思ったけど、今の伊織はダメって言うよな。

 俺は空を見て、ここで声を掛ける事にした。


「俺もそう思う。俺はもう気にしてねぇけど、空は?」

「貴哉……」

「貴ちゃん、ちゃんと二人で話してもらえないかな?空くんは本当に打ち上げに貴ちゃんが来るの楽しみにしてたんだよ~」

「だから、何でそれぐらいで二人になるんだって言ってんの。そもそもどうして一条を通して話すんだよ?本気で仲直りしてぇなら本人が直接言いに来いよ」

「伊織、ちょっと言い過ぎだって」

「いーくんご機嫌ナナメ~?」

「一条さん、もういいです。桐原さんの言う通りです。行きましょう」

「あ、空くん待ってよ~!もうっ!いーくんの意地悪ー!貴ちゃんも意地悪ー!」


 空はキッと伊織を睨んで先に早歩きで行っちまった。それを俺達にベーッと舌を出して追い掛けて行く紘夢。
 あちゃー、空の奴気にしてんなぁ。
 てか伊織も容赦ねぇな。もう少し言い方あっただろうに。


「伊織」

「何?」


 名前を呼ぶと、もういつものニコニコ伊織に戻ってた。
 はぁ、面倒くせぇなぁ。


「もういいや。空の事は紘夢に任せるわ。俺達も行こうぜ~」

「貴哉、俺がいなかったら早川と二人で話してたか?」

「あ?多分話してたんじゃん?」

「このまま仲直りしなきゃいいのにな♪」

「お前なぁ……性格悪くなってんぞ」

「もう良い先輩は辞めたんだよ。そんな事してたら貴哉を取られちまうからな」

「そっか。お前もうパシリじゃなくなるんだっけ」

「おう♪文化祭終わったからな~。早川に気を使うのも辞めだ。いいよな?貴哉」

「好きにしろよ」

「じゃあ早速!貴哉、他の奴にあんまベタベタすんな」

「あ?してねぇよ」

「さっき詩音さんに食べさせてもらおうとしてただろ」


 うわ、アイスクリームの事言ってんのか?
 確かに伊織の前だったから俺もどうかとは思ったけど、詩音はそんな気さらさらなくて好意でやってくれてんのに断れってんのかよ?

 てか茜にはお好み焼きをフーフーまでして食わせてもらったけどな!


「もー分かった分かった。ああ言うのはちゃんと断るよ。これでいいか?」


 伊織はまだ不満そうな顔してやがった。
 一体どこまでワガママ言うつもりだ?


「まだあるのか?」

「いや、ないよ」


 伊織はニコッと笑って俺の手を握って来た。
 絶対あるだろ。
 でも、面倒くさかったから無理に聞こうとはしなかった。

 俺の出来る範囲でならワガママも聞いてやる。
 だけど、それを超えるような事言われたら俺も聞いてやれねぇよな。

 例えば空の事だ。

 空とは話すなとか関わるなとか言われたら出来る気がしねぇ。てかそんなのする気もねぇ。
 今は空とは喧嘩したままだけど、その内普通になるだろうし、そしたら今まで通り接するつもりだ。

 伊織の不満そうな顔は空の事かもな……

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