【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ5th season

pino

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4章 文化祭

空~、お前俺がいなくて機嫌悪かったのか?

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 伊織の着替えも済んで、急いでそのままのタクシーでお好み焼き屋まで向かい、到着したのは打ち上げ開始から一時間半も経っていた。
 いくら何でも遅れ過ぎだろ。さすがの俺でも焦ったわ。
 伊織を先頭に店に入ると、それはそれは男共がぶっ詰まっててむさ苦しい光景が広がっていた。


「あ!秋山!」


 真っ先に俺達に気付いたのは店の真ん中の席にいた茜だった。
 すぐに駆け寄って来て腕を引かれた。


「遅くなって悪かったな」

「ずっと待っていたんだぞ!秋山の分焼いてやるから早く座れ♪」


 とても嬉しそうな茜は空いてる席に俺を座らせて新しく注文を取っていた。
 俺はハッとして伊織を見ると、少し苦笑いをして俺の後ろまで来た。


「俺は詩音さん達の方にいるから。楽しめよ」

「お、おう」


 俺にそう言って伊織は店の奥の方の席に歩いて行った。

 さっき伊織の本音を聞いたばかりだったから不安だったけど、今はいつもの伊織みたいだな。
 とりあえず大丈夫かな?

 茜がいた席は普段話さないような演劇部の奴らばかりだった。唯一話す奴と言えば犬飼がいた。
 ニコニコ機嫌良さそうに茜の隣に座ってるけど、上手く行ってるって事か?てか七海はどうした?


「よう秋山~。茜ちゃん何回も外出てお前を待ってたんだぜ」

「マジかよっ」

「もしかしたら店の場所が分からないかと思ってな。無事に辿り着いてくれて良かったよ」


 そう言えば前にもそんなのあったな?
 焼肉屋で演劇部の集まりがあって、そん時も遅刻したんだけど、茜が店の出入口で俺を待ってたな。
 

「お前どんなけ俺の事好きなの♪」

「心配してたんだからな?何かあったんじゃないかって」

「桐原といるんだし大丈夫だって~」


 新しく注文した物が届いてそれを犬飼が混ぜて焼いていた。俺の分かな?
 もうみんな食べ終わっているのか、鉄板の上には何無かった。
 他の席ではちらほら焼きそばとか焼いてたりするけど、ほとんどの生徒は雑談を楽しんでいた。


「貴ちゃーん!こっちにも来てー♪」


 ここで座敷席の方から紘夢の声が聞こえて来た。
 見てみると、紘夢とその隣に空もいた。空は頬杖をついてこっちを見ていた。


「あ、ちょっと行って来るわ。焼けたら呼んで?」

「ああ」


 茜達に言ってから俺は座敷に上がって二人の向かいの空いていた席に座る。
 紘夢は鉄板の上で海老を焼いていて、楽しそうにしていた。


「もー貴ちゃん来ないのかと思ったよ?あ、海老食べるー?」

「食う♪」

「空くん、海老焼けたから殻剥いて~」

「はいはい。面倒な事はすぐ俺にやらせるんだから」


 隣で紘夢が焼いてるのを見ていた空が器用に海老の殻を剥き始めた。
 どうやら空が紘夢の世話をしていたみたいだな。

 ここで剥いた海老を俺の前にあった取皿に乗せてくれた。


「熱いから気を付けてな」

「あ、サンキュー」


 ここで空と目が合う。
 すると、ニコッと笑った。良かったー!怒ってるんかと思ったぜー!

 俺は安心して紘夢が焼いて空が剥いてくれた大きめの海老をパクッと食う。
 うまー♡てか腹減ってたからもっと食いたい!


「うまいな♡もう一個くれ♡」
 
「もしかして何も食べてないの?それならお好み焼き焼こうか?お好み焼きの他にも鉄板焼きってのがあるよ~」

「あ、向こうでお好み焼きは焼いてくれてんだ」

「そうなの?てか貴ちゃん二次会行く?カラオケやるんだって」

「行くよな?貴哉?せっかく来たんだから♪」


 別に行ってもいいけど、空ってばやっぱ怒ってんのか?笑顔だけど、何か強く言われた気がするぞ。


「空、怒ってんの?」

「別にー?お好み焼き食べ過ぎて疲れただけ」
 
「あはは♪俺がいっぱい作り過ぎちゃってほとんど空くんに食べてもらったのー♪」

「食べ切るだけにして下さいって言ったのにっ!調子に乗るからっ」

「だって楽しいんだもん♪でもさ、機嫌悪いのそれだけじゃないだろ?ずっと貴ちゃんの事待ってたもんね」

「だから機嫌悪くないですってば!」


 紘夢に言われて言い返してる空は、拗ねてるみたいだった。
 

「空~、お前俺がいなくて機嫌悪かったのか?」

「てか遅過ぎるだろ!もうみんな食い終わって、そろそろお開きかーって空気出てんの分かるだろ!」

「んなっ!?別に学校じゃねぇんだから遅れても良くね!?てかまだ食ってる奴いるじゃん!」

「二人共喧嘩しないのー!」


 まさかそんなに強く言い返されると思わなくていつも通りにしてたのに、俺も昼から海老しか食ってなくて腹減っててあまり機嫌は良くねぇんだ。空がそう来るならとつい言い返しちまった。


「大体桐原さんがもっとしっかりするべきだろ!ただでさえ遅刻が多い貴哉の印象を、更に悪くするような事して!」
 
「だったら伊織に言えばいいだろ!何で俺に強く言うんだよ!」

「ここに貴哉がいるからだ!」

「あーそうかよ!じゃあ退席してやらぁ!気分悪ぃ!」


 まだ店に来たばっかだってのに、気分は最悪。
 俺と空の言い合いに紘夢もやれやれと言った感じで、黙って海老をぐちゃぐちゃにしながら剥いていた。

 何なんだよ!空の奴、あんなに怒る事なくね!?別に俺が遅刻して来ても迷惑してる奴いねぇじゃん!

 俺は乱暴に靴を履いて座敷席から離れてやった。

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