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4章 文化祭
※ 茜ちゃん、俺の事好きになってくれたの!?
しおりを挟む※誠也side
桐原と秋山がいないまま打ち上げは1時間を経とうとしていた。
今も茜ちゃんはちょこちょこ外に出ては秋山が来ないか様子を見てる。
俺はそれに張り付くように付いて行っていた。
「茜ちゃーん。もう来るまで中にいようぜー?」
「まったく、あいつら本当に来るんだろうな?」
「うーん、正直今日の桐原って結構ヤバくなかった?」
「桐原がヤバいって?俺には普通に見えたけど」
茜ちゃんは分からないって感じで首を傾げて聞いて来た。
なんつーか、俺は演劇部の裏方として演者の事を良く見てるんだけど、今日の桐原はいつもと違って余裕が無さそうに見えたんだ。
いつも余裕かまして涼しい顔して笑ってるんだけど、なんか焦ってるような感じ?それに、元気もないように感じた。
「演技はいつも通りやってたけどさ、合間とかいつもより口数少なかったし、秋山と何かあったんかなって思ってたけど」
「犬飼は良く見てるな。近くにいた俺でも気付かなかったのに。それならこの遅刻はそれが関係してるのかな?」
「それは分からないけどさ~。まぁどちらにせよ二人一緒にいるならほっとこうぜ~?」
「犬飼」
「はいなんでしょう?」
茜ちゃんに名前を呼ばれたから笑顔で反応すると、あの可愛い顔で微笑んでいた。
天使かよっ!!
「いつもそうやってみんなの事を見ていてくれてるんだな。さすが裏方リーダーだな」
「当たり前よ~♪裏方は演者の影だからな♪俺達次第で役者の輝きが変わってくるから、脇役一人でも見逃さねぇぜ♪」
「犬飼がいれば演劇部裏方は安泰だな」
「任せとけって♪」
茜ちゃんと楽しく話してると、店の中から二人誰かが出て来た。
あ、ボラ部の一年カップルじゃん。王子と無口なヤンキーだ。
二人は俺達に気付いて、王子の方がニコッと笑った。
「茜さんに犬飼さん♪こんな所で何してるんですかー?」
「ああ、秋山が来ないか見ていたんだよ。二人はどうしたんだ?」
「ごめんなさい。俺達この後用があるのでお先に失礼する事になったんです。文化祭お疲れ様でした♪」
「帰るのか。お疲れ様。気を付けて帰れよ」
「はーい♪また来週~」
王子が愛想良く挨拶してる後ろで無口ヤンキーはペコッと頭だけ下げていた。
こいつらも不思議な組み合わせだよなー。いつも一緒で仲良さそうにしてるけど、あの無口ヤンキーは他の奴と喋ってる所を見た事がない。まるで主人にしか懐かないペットみたいだ。
二人がいなくなった後、俺と茜ちゃんは自然と目を見合わせてどちらともなく笑い合った。
「犬飼はまだ俺の事を恋愛対象としての好きでいてくれてるのか?」
「いきなりだな!当たり前じゃん♪じゃなきゃほっぺにちゅーなんかするかよ。え、嫌だった?」
本当にいきなりそんな事を聞かれて少し驚いた。
そういう事を聞かれると期待もするし、振られるんじゃないかって不安にもなる。
茜ちゃんって天然入ってるからなぁ。
「嫌じゃな訳あるか。湊の前でだと困るが、今はいないしな。って、湊がいるのに他の男にキスされて嫌じゃないって俺はおかしな事を言っているな」
「茜ちゃんが嫌じゃないならおかしくなんかねぇよ!絶対に桃山の前ではやらないっ!約束する」
「……でもそれだと浮気にならないか?まるで秋山のような、どちらも好きって事だろ?」
「待って!茜ちゃん、俺の事好きになってくれたの!?」
今確かに言ったよな!?
それって桃山と同じような好きなのか!?
そう聞こえたけど、これは是非ハッキリさせておきたい。
「正直俺にも良く分からないんだ。湊と比べるのは良くないと思うけど、犬飼は犬飼で一緒にいて安心出来るんだ。優しいよな犬飼って」
「良く分からないか~!うーん……あのさ!さっきはほっぺにちゅーしたけど、俺が口にしたらどう思う?」
「それは……良くないんじゃないか?」
「えー!」
やっぱり桃山と同じような好きじゃないじゃん!
もし同じ好きなら口にしてもいいよな?出来るよな?
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