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4章 文化祭

よっしゃー!みんなで猛犬狩りだー!

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 俺と空は芽依の婚約者らしき人とすれ違った時、空もその男を見たらしく「あ」と声を出していた。
 

「なんだよ?知り合いか?」

「いや、分からない。雰囲気は似てるけど……まさかね」

「あー!まさか客だった奴かぁ!?」

「わぁー!こんなとこでそう言うの言うなよ!」

「そうなのかよっ!何だよイケメンじゃねぇか!」


 あれ?俺苛ついてる……
 だって、空の客って事はヤッた相手かも知れねぇんだろ?てかもっと汚いおっさん想像してたし!普通に優しそうなお兄さんじゃねぇか!何かそう考えると嫌だ!


「違くはないけど、もしあの人がその人だったとしたら、友達みたいな関係だよ。唯一下心無しで世間話だけした人。それに俺の兄貴の知り合いかもしれない人」

「客は客だろ!俺やだ」

「貴哉がやきもち焼いてくれてるー♡嬉しい~♡」

「うるせぇ!チャラ男がモテやがって!しかも雪兄の知り合いって何だよそりゃ?」

「だから普通に友達だってば。兄貴と光児さんの会話聞いてて出て来た名前が同じ名前だったんだよ。それだけだから知り合いかもってだけ」

「ふーん。まぁいいや。今の俺があんま強く言える事じゃねぇしな。でもお前が他の奴とって考えるとすげぇ腹立つな」

「それさ~、めちゃくちゃ嬉しいんだけど♡付き合ってる時に焼いて欲しかったなぁ♡」

「焼かせるんじゃねぇよ。俺はどっちもぶん殴るぞ」

「桃さんみたいな事言うなよ!俺は貴哉一筋だから焼かせません!」


 確かに、空が他の奴とーとか、他の奴から好き好き言われてるの見た事ねぇよな。見た目はかっこいいから男子校でもモテそうだけど、男からは受け良くねぇのかな?
 まぁチャラ男だししょうがねぇか~。


「そうだ!桃山に電話するんだった!」

「何で早く気付かなかったんだろうな。宝探しって言うんでズルするみたいとか勝手に思い込んでたよな」

「あいつの事だからすぐに見つかると思ってたしな。文化祭とか暴れそうじゃん。今日に限って大人しくしやがって」


 話しながら電話を掛けると、すぐに出た。
 何かしながら話してるのか少し声が遠く感じた。そして近くに女子でもいるのかキャッキャっと賑やかな声が聞こえて来た。


『はいはーい。愛しの貴哉ちゃん?どしたのー?』

「お前今どこにいんの?」

『え、会議室だけど?ちょっと今手が離せねぇんだわ。電話もスピーカー』

「お前いつもそう言う事言って暇じゃねぇか。何してんだよ?」

『普通に商売やってますよ。今接客中だから切るぜー?』


 接客中だと!?あの桃山が!?
 てか会議室って何の店やってたっけ!?

 一方的に電話を切られたから空に聞いてみた。


「桃山、会議室で接客してるって。会議室って何やってるんだ?」

「会議室は個人とか少人数で催し物をやる人用のスペースだった気がする。教室一個分もいらなかったり、そういう多くの店が並んでる方が集客効果もあるから敢えてそこ選ぶ人もいるんじゃね?」

「あいつクラスからも部活からもハブられて一人でやってるってのか?ザマァだな」

「桃さんを受け入れるって一か八かだからな。下手したら大失敗する大きな賭けになるぜ?」

「何やってんだろー?場所も分かったし行ってみようぜー?」

「そうだな。これで貴哉の宝も手に入るな」


 俺達は会議室を目指して歩き出した。

 途中ですれ違う人達の中で一際目立つ二人組を見つけた。
 一人は大学生ぐらいの茶髪で綺麗な顔立ちの爽やかなイケメン。もう一人は両サイド刈り上げのサングラスでめちゃくちゃ強面の厳つい大人な男。
 二人共背が高くてめちゃくちゃ目立っていた。
 でも俺も空も良く知る二人だった。
 さっきもチラッと話に出て来た、空の兄貴の雪兄と、その友達の光児さんだった。


「おい空、雪兄達来てんじゃん!」

「ほんとだー。にしても目立つなあの二人」

「特に厳ついのがな♪」


 俺は二人に駆け寄って行くと、俺に気付いた厳つい方が両手を広げて迎えてくれた。


「雪兄~♪光ちゃ~ん♪良く来たな~♪」

「おー!貴哉ぁ♪そのTシャツお洒落なの着てんな~♪」


 広げられた両手の中に飛び込むと、俺を包み込んでヒョイっと持ち上げてクルクル回された。
 子供にするようなアレ。
 やべー、光ちゃんノリ良すぎ。


「光ちゃんウケる!!」

「貴哉も面白ぇぜ♪おう空、さっきお前の店行ったんだぜ」

「俺と貴哉休憩中なんだよ。兄貴達、店の方はいいの?」

「今日は夕方から営業にしたんだよ。可愛い弟が頑張ってる姿を見に来たんだ」

「めちゃくちゃ美味そうな野菜いっぱいもらって来たぜ♪これを100円で提供するとかお前ら頭おかしいだろ?大赤字じゃね?」


 俺を地面に降ろした光ちゃんを良く見れば、両肩には見覚えのある色のエコバッグがパンパンに詰まって掛けられていた。下の方にカボチャの丸みが見えて笑えた。
 光ちゃんからの質問に空が説明していた。


「野菜もおもちゃも提供者がいてそのエコバッグもそうだけど、全部タダで手に入ったんだよ」

「ボランティア部ってそんなコネがあるの?凄い組織だな。空が副部長やってるって聞いてたから気になってたけど、思ってたより頑張ってるんだな」

「ほとんどの仕事押し付けられてるからな」

「空はすげぇ良くやってるよ!みんなも頼りにしてるし、空がボラ部入ってくれて本当に良かったぜ♪」

「へー、なら俺も安心した」

「なぁ良かったら雪兄達も一緒に会議室に行かないか?」

「いいけど、何があるんだ?」

「俺と空は猛犬探してんだけど、どうやらそこにいるらしいんだ」

「猛犬?何それ?」

「あはは!訳分からねぇけど、面白そうじゃん♪行こうぜ雪~」

「よっしゃー!みんなで猛犬狩りだー!」


 ただ赤いブレスレット取りに行くだけだけどな。
 せっかく雪兄と光ちゃんが来てんだから一緒に周りたいじゃん?
 雪兄も空も一緒にいたいんじゃないか?
 俺は三人と一緒に会議室へ向かった。

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