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3章 文化祭まで一週間

全然!あ、俺はこれ運ぶからな!

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 助っ人が来たから俺は何となくゲーム機が入ってる箱の蓋を閉じて見せないようにして、背中に隠すようにしていた。
 来てくれたのは部室にいた数馬、生徒会にこき使われていた藤野、そして演劇部からトモとその他二人が来てくれた。それでも何往復かは必要か。


「お前ら良く来てくれたな!ここにある箱を全部演劇部の控室に運んで欲しいんだ」

「うん!分かった!さっき一条さんとすれ違った時に場所は聞いたよ」

「うひょー!何だコレ?ロボットとか懐かしい~」

「秋山、これ何に使うんだ?」


 藤野に聞かれたから明日の文化祭の出し物だと言うと、おもちゃを?と不思議そうな顔をしていた。
 そりゃそうだろうな。誰もこのおもちゃ達を袋に詰め込むだなんて思ってねぇだろうよ。

 トモと、トモが連れて来た助っ人二人はそれぞれ二箱を両手に担いでくれた。


「すげぇじゃんトモ!かっこいいな!」

「だろー!?俺の事好きになったか!?」

「全然!あ、俺はこれ運ぶからな!」


 トモの言う事に適当に返して、俺はゲーム機が入った一際重い箱を持ち上げる。
 お、重いけど、これだけは他人には任せられねぇ!


「秋山重そうだな。一緒に持とうか?」

「だ、大丈夫だ!藤野はそこのぬいぐるみが入ったやつ頼む!」

「ああ。分かった」


 くそー、紘夢の奴、こんな大事な物をこんなとこに置き去りにしやがってー!俺が見付けてなかったから盗まれてたかも知れねぇだろ!

 まだ開けてないから分からないけど、他にも高級品がありそうだな。俺、見張りでここにいた方がいいよな?


「みんな悪いけど、数馬に付いてって、箱を運んでくれるか?俺はここで荷物を見張ってるから、紘夢に会ったら伝えてくれ」

「分かったー。あ、付いて来て下さい」


 数馬の指示で藤野、トモ達は箱を運んで行った。
 はぁ、そろそろ昼だから空と飯食いに行きてぇんだけどなぁ。

 俺は空に連絡してみる事にした。空はもう一つ机を借りる為に備品係の所へ行ってる筈だ。


『もしもーし?今戻るとこだけど、どうした?』

「紘夢が用意したおもちゃが大量にあってそれ運ぶのに時間掛かりそうなんだよ。昼飯遅くなりそう」

『それなら俺も行くよ。それ終わったらランチ行こ♪』

「まじ?早く来てくれー。裏の駐車場にいるからよ」


 何か空の声に癒されたわ。
 とにかく、この高級品が入った箱を紘夢に託したい。じゃなきゃ昼飯になんて行けねぇよ。
 俺が一人で空を待ってると、紘夢が戻って来た。


「貴ちゃーん♪みんなにそこで会ったよ~♪トモ達は頼もしいね~」

「紘夢!!何だよこれ!!お前こんなの詰め放題に出す気なのか!?」

「え?ああ、夢があって良くない?俺が子供だったら嬉しいかなって。あとPS5の箱とどこかにある筈だけど~」

「子供だけじゃなくて大人も食い付くわ!本当に100円にするつもりなのか?」

「勿論♪渡辺さんとそうだと思うけど、全部ボラ部に寄付するから、売上は全部ボラ部の物だよ♪知り合いから安く手に入れてるから気にしないでよ」

「お前、本当にいいのかよ?」

「貴ちゃん。これは俺なりの感謝と謝罪の気持ちなんだ。これだけじゃ返し切れないのは分かってるけど、少しでも多くの人を笑顔に出来たらって思ってるよ。でも貴ちゃんが辞めろって言うなら辞める。言う事聞くよ」


 紘夢は笑顔のまま、真っ直ぐに俺を見て言った。
 こんなの普通の奴じゃ出来ねぇ金持ちの道楽だとか思ったけど、紘夢は紘夢なりに自分が出来る事を考えていたんだ。
 なら俺から言う事はねぇな!


「そういう事ならいいんじゃねぇの?後で返せとかお前は言わなそうだしな。一緒にみんなを笑顔にしてやろう!」

「嬉しい♪貴ちゃんならそう言ってくれると思ってたよ♪」

「て事でコレと、PS5の箱は責任持ってお前が管理しろ。盗まれても知らねぇぞ!」

「はーい♡」


 背中に隠していた綺麗な箱を紘夢に渡して俺はやっと解放された気分だった。

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