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3章 文化祭まで一週間

可愛い空来たー!!

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 外に出て、ボラ部の陣地になっている体育館の出入口付近まで行くと、ちょうど暇な奴らが生徒会にこき使われて必要な机などを設置している所だった。それの対応をしているのは直登だった。


「おー!結構広く使えるんだな~」

「あ、貴哉♪一条さんが直接神凪さんに掛け合ってくれたからね~♪しかも体育館出入口の隣とかちょー目立つし最高だよね~」

「だな!ここなら俺も演劇部終わったらすぐに来れるわ」

「中西~、持って来た物はどこに置けばいい?後から怜ちん達も荷物運んで来るけど」

「あ、とりあえずここに置いておいて~。午前中には渡辺さんちが野菜持って来てくれるらしいから、明日までは部室で保管して、当日はここのスペースに置いておこうと思うんだ」

「あと紘夢がおもちゃ持って来るんだろ?」

「おもちゃも部室に運ぶよ。盗難防止でね♪」


 出店のレイアウトは直登と紘夢で考えたらしい。
 机で三方向を囲んでそこに野菜とおもちゃを詰めた箱を置いて客に好きな物を詰めてもらうスタイルみてぇだな。
 てかさ、これ去年やってウケたらしいけど、本当にやる人いるのかって思うんだ。野菜もおもちゃも売ってるの買えばいいし、自分で詰めるのとか面倒くさくね?


「なぁこれいくらでやるんだ?ボラ部って言ってももちろん金取るんだろ?」

「ボランティア価格で100円だよ~」

「100円!?安過ぎねぇか!?てか今野菜が高いって母ちゃん言ってたぞ!」

「一条さんが決めたんだけど、そこを狙ったんだよ。だからこそ主婦は勿論食い付くだろ?100円ならって思ってやってくれる人もいるだろうって。あと、おもちゃは基本的に子供向けだ。持ってるお小遣いで出来るようにしてあげたいらしいよ~。子供の夢じゃない?自分の財布からお金出して何かをするのって♪一条さんて優しいよね~」

「紘夢すげぇな!新人の癖に誰よりもボランティア感出してんじゃん!」

「でも野菜もおもちゃも提供者がいて、実質タダで手に入るから出来る事だけどね~」


 なるほどな。それなら誰かしらやってくれるかもな。
 直登が机を設置してくれた人に挨拶をすると、そいつらは照れたように笑って立ち去って行った。
 さすが王子だな。ささやかなとこでモテやがる。


「マーケティングに詳しい一条さんに、集客になるイケメン看板息子の中西か~。凄い事になりそうだな」

「マーケ?良くわかんねぇけど、二人に任せときゃ大丈夫そうだな!」


 空が一人でブツブツ言ってっけど、確かに二人のタッグは凄い。圧倒的頭脳で瞬時にいろんなプランを思い付き、それをすぐに実行してしまう紘夢と、綺麗な見た目に反して気が強く、発言力と行動力だけはある中西。あ、あと力もあるな。
 二人が揃うと怖いぐらい物事がとんでもない方向へ進んで行くから見てて面白ぇわ。

 俺も楽しくなって来たから空の隣で分かったように言うと、空が拗ねたよう顔をした。


「貴哉ぁ~?俺も頑張ってるよ?二人だけじゃねぇよ?」


 か、かわっ!?可愛い空来たー!!
 こんな空久しぶりだなぁ!
 俺が他の奴を褒めたりそいつといると拗ねるやつ!
 今すぐに抱き締めたいけど、堪えて褒めてやる事にした。


「そうだよな!空も頑張ってるよなぁ♡お前可愛いなぁ♡」

「ちょっとー!何甘えてんだよ空くん!副部長なんだから当たり前でしょ?貴哉も空くんに甘過ぎなんだよっ」

「だってさー、こいつ可愛いくね?何かこうムラムラ……ハッ!!」

「「え?」」


 これはヤバい。俺は酷え事を言いそうになって慌てて自分の口を押さえるけど、二人は有り得ない物を見るかのような目で見て来た。
 
 マジで俺どうした!?
 ちょっと空に甘えられたからって欲求不満なのか!?
 これじゃトモや桃山と変わらねぇじゃねぇか!


「貴哉♡俺はいつでも相手になるぜ♡なんならこのまま帰っても♡」

「何馬鹿な事言ってんの。てか貴哉、背伸びたよな?俺らと変わらなくない?」

「ん?」


 身長に関しては最近良く突っ込まれるなー。
 確かに、今見てみると空と中西と視線が同じな気がする。


「そうなんだよ!俺背伸びてんだよ~♪来月にはお前ら抜いてるかもな~♪あはは」

「来月って、後3日とかでしょ?無理じゃん。でも伸びててビックリしたわー。貴哉顔綺麗だからこのまま伸びたらモテるだろうなー」

「とうとうモテ期来るか!?」

「いや、ある意味今モテ期だけどね」


 俺と直登で楽しく話してたら、空の元気が無くなっていくのが分かった。
 そしてダンっと側にあったテーブルを叩いて大きな声を出した。


「嫌だ!!貴哉が俺より背高くなるの嫌だ!!」

「あ?何でだよ?見下されるのが嫌なのか?」

「モテるのが嫌なんだ!」

「またそんな事言ってんのかよ。仕方ねぇじゃんモテちまうのはー♪」

「空くん、良く考えなよ?今貴哉は桐原さんと付き合ってるんだよ?貴哉がモテても空くんには関係なくない?」

「ある!大有りだ!俺と貴哉は同棲、いや、一緒に家を建てるんだ!」


 おわっ!ここでそれぶっ込んで来るのか!?
 また面倒な奴に聞かれちまったじゃねぇか!


「はぁ?何訳の分からない事言ってんの。それって空くんが貴哉を奪い返すって事?」

「近い将来な♪」

「ふーん。桐原さんから奪い返すね~」


 空が自信満々に腕を組んで言うと、直登はニヤニヤ笑いながら意地悪そうにしていた。
 あー、また始まるよ……


「何だよその顔は?俺じゃ無理だって言いてぇの?」

「当たり前じゃーん♪でも面白いから見ててやるよー♪せいぜい空回って楽しませてよ~」

「あー!ほんっとにお前はいつもいつもそうやって俺に楯突いてくる!」

「空くんが噛み付いてくるからでしょ?俺は正論しか言ってないしー?」

「だったら!俺が貴哉とまた付き合ったら土下座しろよな!空様すみませんでしたって!」

「やだよ。土下座はいいけど、空くんの事を様付けて呼ぶのは嫌」


 二人の言い合いが始まって、俺はやれやれと黙って見てる事にした。

 何か懐かしいなって思うんだ。
 初めの頃は良くこうやって二人は言い合って、俺が二人共叱ったりして、そこに戸塚もいたな。
 今では人や状況がいろいろ変わってあまり見る事は無くなったけど、やっぱり俺はこのやり取りが好きだ♪


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