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3章 文化祭まで一週間
伊織もお疲れ!いろいろサンキューな
しおりを挟むバスを降りて紘夢んちまで三人で少し歩いた。
すっかりいつもの雰囲気に戻ったけど、茜は終始みんなに悪い事をしたと反省してた。
桃山は「みんなの事は放っておけ。茜には俺だけがいればいい」とか自分勝手な事言ってたけど、俺は謝るのは大事だと思って茜の背中を押した。
「茜、謝るのって勇気いるよな。俺もそうだった。でもさ、謝って仲直りした後って何かいつもより楽しくなれるんだよ。スッキリするって言うのかな?俺結構謝る事多いんだけど、良くなる事の方が多いぜ♪」
「秋山……そうだな。俺も秋山を見習って素直に謝ってスッキリするとしよう」
「俺も貴哉を見習って茜とイチャラブしてスッキリするとしよう♡」
桃山が真似をしながら茜に抱き付くと、茜は嫌そうに引き離していた。
でもさっきコインロッカーのとこで抱き合ってたよな?俺見たぜ?
「なぁ茜、さっき桃山と抱き合ってたよな?あれって何してたんだ?」
「あ♡あれは茜が俺に甘えて……」
「何もしていないぞ!秋山!さっきのは忘れてるぞくれ!」
「何でそんな必死なんだよ?」
「可愛いかったなぁ♡みなとっ!って泣きそうな顔してこうギュッて♡」
桃山が自分を抱きしめながら再現してるけど、あの茜があんなとこで本当にそんな事すんのか?
俺は疑いたかったけど、実際抱き合ってるの見たし……
「まぁそう言う時もあるよな!」
「ああもうっ!俺が迂闊だった!もうあんな失敗はしないぞ!」
「失敗って……」
「ところで秋山は柔道か何かやっていたのか?良く湊を投げられたな」
「それな!俺も気になった~!まぁ次は回避出来るけどな」
俺が桃山を背後から背負い投げした事を聞かれた。自分でも出来た事に驚いてるわ。
「中学ん時に柔道部の奴に教わったんだよ。喧嘩の役に立つかもーって遊びに行ったら教えてやるっつーからさ~」
「だからあんな綺麗に動けてたのか」
「でも随分前の事だし、俺力ねぇから桃山みたいにヒョロかったり油断してねぇと投げられねぇんだわ。七海とかなら余裕で出来るけどな!」
「是非小平を殺ってもらいたい♡」
「コラ!さっきのは俺のせいでもあるから目を瞑るけど、暴力はダメだぞ。湊は勿論、秋山もだ」
「俺は正当防衛だろ。先に仕掛けて来たのは桃山だし。腕ビリビリしたからな」
「ごめーん♡貴哉を殺るのは気が引けたけど、茜を傷付けたって思ったらつい♡」
「俺が茜を傷付ける訳ないだろ。でもお前の強さは十分分かった。絶対お前とはやり合いたくねぇわ」
「俺はまた貴哉とやり合いたいぜ♪楽しかった~」
「湊いい加減にしろ!秋山に手を出したら別れるからな!」
「それはやだ!貴哉と仲良くする!」
やっぱ二人って面白いな。
久しぶりに茜と桃山のやり取りを見たけど、何か安心するんだ。いつまでも仲良く一緒にいてもらいたいって思う。
茜が部活を辞めたら二人の時間も増えるだろうし、桃山にとっても良かったな。
そんな話をしながら一条宅へ到着。
鉄で出来た門は開いていて、俺達はそのまま中へ入り慣れたように庭を歩いて家まで向かった。
こうして庭を見ると、初めて来た時より綺麗になってるよな。業者に頼んだのか、生えてる木もちゃんと整えられてて正しくドラマとかで見るような立派な金持ちが住む家の庭だった。
インターフォンを鳴らすと、すぐに家の主人である紘夢が出て来た。
「お帰りなさい♪って桃も一緒だったの?材料多めに買って良かった~」
「おっす♪早川が肉じゃが作るらしいじゃん?」
「そうなのー♪めちゃくちゃ張り切っててね、あと卯月達も少し前に来てね……」
卯月の名前が出て茜の顔が強張る。
俺は背中をさすって「頑張れ」と小声で言ってやった。
「あ、卯月と話したいんだけど……」
「卯月なら空くんと料理してるよー。とりあえず入って~」
何?卯月も肉じゃが作ってんのか?
まぁ初めより大人数になっちまったから空一人で作るのは大変だもんな。
俺達も中に入れてもらい、まずリビングへ通された。
そこには伊織と雉岡が二人で座って話しをしていた。
「おう貴哉。無事二之宮を捕まえられたんだな」
「勿論♪伊織もお疲れ!いろいろサンキューな」
「お安い御用だぜ」
今回伊織は俺の言う事を聞いて本当に良くやってくれたよ。
俺は伊織に近付いて肩に手を置いてお礼を言ってやった。
そして桃山と一緒にリビングに入って来た茜がテーブルに座る二人の前に立った。
「あの、桐原に雉岡、それと一条……迷惑を掛けて本当にごめんっ」
「いいって。落ち着いたみたいで安心した」
「うん。まぁ茜ちゃんもいろいろあるんでしょうからね。人間だものね~」
二人の大人な対応に茜はペコッと頭を下げた。
そして茜の後ろにいた桃山がフラッとリビングから出て行く。
するとすぐに桃山の楽しそうな声が聞こえて来た。
「ひゃっはー!てめぇら!野菜はこう切るんだよ!」
「うわっ!一番持っちゃいけない奴が包丁持った!てか似合い過ぎてて怖いんだけどっ!」
「も、桃山落ち着け!そのまま刃物を床に置くんだ!」
桃山と七海と犬飼の大きな声が聞こえて来て、何だか想像出来る光景だけど、茜と卯月の事も心配だから俺も見に行く事にした。
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