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3章 文化祭まで一週間
※ もう遅いよ。俺キレちゃった。
しおりを挟む※湊side
あー暇だなぁ~。
一応部活出てるけど、退屈なんだよな~。デザイン部って~。何か俺抜きで文化祭の出し物決めて進めちゃってるしー?いつも俺だけ除け者なんだよな~。
別にあいつらセンスねぇからいいけどさー。
にしても茜とイチャつけねぇのは痛ぇわ。
でも茜には文化祭終わるまで関わるなって言われてるしなー。俺が邪魔なのは分かる。
だって茜大好き過ぎて邪魔しちゃうもん♡
駄々捏ねて土日会ってくれたからいいけどさー。
あと一週間も茜無しとかやってらんねーわ!
俺は一人で学校を出て歩いていた。
いつもなら茜がいて、二人で笑いながら過ごす時間だ。でも今はいない。あー、俺泣きそう。
スマホから着信音が鳴った。
えー、誰だよこんな時に。八つ当たりしちゃおっかなぁ?
「お♡」
相手の名前を見て俺は八つ当たりする必要がなくなった♡
だって大好きな茜からだったんだもん♡
「もしもーし?茜ちゃんの湊くんですよー♡」
『……たい』
「ん?鯛?鯛食いてーの?」
てか茜の様子が変だな。
いつもより声が小さい。
その後通話は切れなかったけど、茜は黙ったままだった。
「おーい?茜?聞こえてる?」
『湊』
「うん。湊だよ。どしたの?元気ないじゃん」
俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。
茜とは全く会ってない訳じゃないけど、前より一緒にいるの減ったからこうして声が聞けるだけでも嬉しかった。
でも気になるのは茜の様子が変だって事。
『会いたい』
ほら、変だ。
茜から俺に会いたいなんて今まで言った事ないのに、今にも消えそうな声で確かにそう言った。
「会おうよー♡俺今部活終わって学校出たとこ!茜は?」
『……駅の近くのコインロッカーのとこ』
「んじゃ行くから待っててよ♡」
『うん』
茜から会ってもいい許可が出て俺は全速力で駅まで走った。
茜に会える!それもそうだけど、何より茜に何かあったんだ。俺はその事が気がかりでとにかく急いでいた。
駅の近くにコインロッカーがあるけど、そこは人通りの少ない所で、使用者も少ないだろう。
茜はそこの少し離れた路地の間にちょこんと座っていた。
あー可愛いなぁ♡
「茜っ♡お待たせ~♡」
「みなとっ!」
顔を腕で隠して俯いていた茜に声を掛けると、バッと俺を見てすぐに飛び付いて来た。
うお!?なんだいこのサービスは!?
茜から飛び付いて来るなんてあり得ないぞ!?こいつ本物の茜か!?いや、匂いが茜だ♡
外で俺が抱き付いたりすると怒る癖に……
「おー、茜ってば自分から俺を突き離しといて寂しくなっちゃったのかー?可愛い奴め♡」
「ごめんっ」
「ううん♡嬉しい♡で、何があった?」
ずっと俺に張り付いたまま顔を上げようとしない茜を俺はいいこいいこしてあげる。
茜がこんなに甘えてくるなんてないから俺は嬉しくて仕方なかった。このまま持ち帰ってイチャイチャしてぇ♡
「茜が元気ないと俺まで悲しいじゃんよー」
「俺は……自分が嫌だっ」
「はい?」
「いつも周りの気持ちを無視して勝手な事ばかり……もう嫌だっ」
「誰かに何か言われた?話してよ」
「…………」
上手く聞き出そうとすると、茜は黙った。
きっと俺が仕返しに行くと思ってんだろ。行くけどな。
過去の茜の事は知ってる。
俺も人の事言えねぇけど、茜は真面目で口うるさい奴だから自分が違うと思ったら相手が誰だろうと厳しく叱っていた。それで周りと上手くやれてねぇってのは一年の頃から知っていた。
俺もいつも一人だったから、てか当時追ってた伊織に相手にされてなかったからずっとフリーだったんだけど、同じ境遇な奴がいるなぐらいの認識だった。
俺と違うのは、茜は自分の悪い所を知っていてそれを直して周りと上手くやって行きたいって思ってる所だ。そんな面倒な事考えるならもっと俺に構ってよって思うけど、怒られるから言わない。
そこは茜のいい所でもあるからな。
茜自身がそれで悩んでいて、自分の事を嫌だと言うのは見ていて辛い。
だから早く茜をこんな風にした犯人を聞き出して処刑したいんだ。
「俺が悪いんだ。俺がもっと気を使えれば」
「茜が悪くても俺は茜の味方だよ。だから教えろよお前を傷付けた奴を」
段々イライラが抑え切れなくなってきたなー。
このままだと犯人分かんねぇから全校生徒を処刑しなきゃいけなくなる。
さすがに面倒だよなー。作業がじゃなくて、後がね。
「ううん。もういいんだ。お前が味方でいてくれるなら俺は十分だ」
やっと顔を上げた茜は一生懸命笑顔を作っていた。
もう遅いよ。俺キレちゃった。
茜、悪いけど約束破っちゃうわ。
暴力はしないっての、そんなお前見てたら今は守れそうにねぇわ。
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