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3章 文化祭まで一週間

※ って、前田じゃないか。どうした?

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 ※茜side

 演劇部での練習が体育館に場所が変わって、いろいろと忙しくなった。
 文化祭まであと一週間。俺は夢中であちこちを駆け回っていた。


「よし、このシーンまでは何とかなりそうだな」

「二之宮~!この背景ってここでいいのー?」

「あ、待ってくれ。それはもう少し真ん中に……」

「二之宮!さっき言われた位置からだと距離が空き過ぎる気もするけど?」

「それなら少し縮めてみよう。本番では衣装の関係でこれぐらいは空けていないと……」
 
「二之宮ーこっち来てくれー!」

「すまん!五分したら行くから待っててくれ!」


 あちこちから声を掛けられて、とにかく忙しかった。本当は一番心配な秋山に付きっきりで指導したかったんだが、そうも言っていられないみたいだな。今秋山は裏方の犬飼達と話しているようだ。


「忙しそうだな二之宮」

「そりゃ忙しいさ……って、前田じゃないか。どうした?」


 ステージの上で動き回っていたら、下から声がして目線だけ送るとそこにはニッコリ笑顔の前田侑士がいた。生徒会長になった前田が何の用だ?まさか体育館使用の変更か?それは困るな。いろいろスケジュールも組んじゃったし、使える日が増えるならいいけど、減るんじゃちょっと厳しい。


「我が校のスター達の活躍を見に来たんだ。順調か?」

「いや、今の所何とも言い難いな。そうだ、前田に相談があるんだけど少し時間いいか?」


 俺はステージの上からヒョイっと飛び降りて、前田に向き直る。すると、前田はピシッと姿勢を正してさっきまでの笑顔はどこへやら真面目な顔をし出した。


「な、何だろうな?二之宮が俺に相談なんて!」

「いや、ちょっと体育館を使える期間についてなんだが……」


 俺はダメ元でもう少し演劇部が使えるようにならないか交渉してみるつもりだった。他の部活よりも多くの時間を使えるのは理解しているけど、やっぱり少しでも多い方が嬉しいからな。
 せっかく生徒会長の前田が来てくれたから話しておくだけでもと思ったんだ。
 
 俺が困ったように話し出すと、前田はフワッと笑った。


「なるほどな。演劇部程の大所帯となるといろいろと大変だもんな。少し調整出来るか検討してみるよ。時間や日にちの希望はあるか?」

「本当か?希望は全部だけど、さすがにそれは申し訳ないからな。1日1時間。いや、30分とかでもいいんだ。他の部活が終わった後とかに少しでも使えたらありがたいんだ」

「了解。二之宮は本当に演劇部の事を考えていて感心するよ。これからも俺に出来る事があれば協力するから何でも言ってよ」

「ありがとう!前田も忙しいのにすまないな。あ、連絡先を聞いてもいいか?もし調整出来るようならなるべく早めに知りたいし、わざわざ足を運ばせるのも悪いからな。電話なりメッセージなりで教えてくれ」

「えっ!連絡先!?」


 その方がお互いの効率がいいと思ったから提案したんだけど、前田は大きな声を出して驚いていた。
 あ、もしかして俺と連絡先を交換するのは嫌だったか?そうだよな。前田は仕事で世話してくれてるのに、俺なんかと連絡先なんか嫌だよな。
 急に申し訳なくなったから謝る事にした。


「嫌ならいいんだ。自分勝手な事を言ってごめん」

「い、嫌じゃない!いいぞ!今すぐに交換しよう!」

「いいのか?あ、悪いなスマホは鞄の中なんだ。俺の番号を教えるから後でメッセージを入れておいてくれ」


 ズボンのポケットからスマホをサッと取り出す前田。本当に良かったのか?嫌々なら断ってくれてもいいんだけど、あまり言っても気を悪くさせるからな。とりあえず自分の電話番号を登録してもらった。


「メッセージ入れておくよ。二之宮、これからも頑張ってくれ♪また様子を見に来るな♪」

「え、ああ。頑張るよ」


 前田はスマホの画面を見ながら嬉しそうにしていた。
 良かった。別にそこまで嫌だった訳じゃないのか。そうか、いきなりだったから驚いただけかな?
 その後俺は再びステージに上がり、部活に戻った。

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