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3章 文化祭まで一週間

お前は変わらずチャラ男だ。てか前より派手になってんじゃねぇか

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 教室に入って自分の席に向かってる途中で、クラスに見慣れない奴の後頭部があって二度見しちまった。
 ライトブラウンの髪色の中に金色の束が無数にあって、髪の長さはうなじが見えるぐらい短く、あんな派手な奴いたっけ?って物珍しさで気になってしまった。
 服装は空みてぇなユルダボカーディガン羽織ってて、ピアスとかネックレスとかも空みてぇだった。
 ん?あれ?てかあれって空の席じゃね?
 え!?まさかあいつ!!


「空ー!?お前髪切ったのかぁ!?」


 俺が後ろから叫ぶと、その派手な奴がクルッと振り返ってパァッと笑顔で駆け寄って来た。
 うわ!バッチリ空じゃん!てか前髪は変わってねぇな!ってか、むしろ後ろが短けぇから長く見える?それと金色が混ざっててチャラさが増してるじゃねぇか!


「貴哉おはー♪ね、ね、どう!?イメチェンしてみた♡」

「イメチェン?いや髪色のせいでイメージは変わってねぇよ。お前は変わらずチャラ男だ。てか前より派手になってんじゃねぇか」

「あー、ハイライト入れてみたんだよね~。えー、似合わないかなぁ?」


 前髪の金色の部分をいじりながら気にし出した空。似合ってるよ?似合ってるけど、イメージチェンジは失敗だろ。だってチャラさ増してるもん。


「にしてもガッツリ行ったな~!うなじ見えてんじゃん」

「あ♡長さは貴哉好みになったぁ?」


 今度はクルッと後ろを向いて嬉しそうに聞いて来た。こいつ、また俺が言ったから切ったってのか?確かに空は髪が伸びるの早い。夏休みに切ってから少ししか経ってねぇかど、既に肩まで長くなってたから伸びたなとは言ったけどよ。


「俺好みになっても大好きなお洒落が出来ねぇんじゃねぇの?」

「アレンジね。まぁ幅は狭まるけど、これはこれで気に入ってるぜ~♪またすぐ伸びるしな」

「いいんじゃん?お前らしくて。似合ってるよ」

「ほんとー!?わーい♪貴哉に見せるの楽しみだったんだぁ♡」


 朝からはしゃぐ空。
 てか髪染めるのとか羨ましいんだよな~。俺は母ちゃんに怒られるから染められねぇんだ。俺も染めてぇなぁ。

 自分の前髪を見ながらそんな事を考えてたら、誰かが後ろからぶつかった。


「あ、悪い……って秋山じゃん……と早川?」


 ぶつかったのは藤野だった。眠そうなタレ目を擦って空を見て驚いていた。


「おう藤野。驚いただろ?イメチェンだと」

「いや、イメージはそのまんまだけど……」


 ん?何か藤野元気なくね?空にジッと見られて気まずそうに顔逸らしてるけど、何かあったのか?


「藤野、どうした?」

「いや、なんもねぇよ?俺席に戻るわ」


 そのまま俺とも目を合わせる事なく立ち去ろうとする藤野。いやいや、絶対何かあるだろ!
 気になったけど、そのまま行かせようとしたら空が藤野を呼び止めていた。


「ココ、俺もう怒ってねぇよ♪だから普通にしてくれよ?な?」

「……早川」

「えっ!お前ら喧嘩でもしてたのか?」


 そりゃ初耳だ。
 てかそんな接点あったっけ?
 空は教室では俺以外とはあんま話さねぇで、一人でイヤホン付けて音楽か何か聴いてたりするけど、藤野は藤野で仲良い奴と話してる事が多い。と思うんだ。
 

「まぁいろいろとな~」

「早川に秋山、また仲良くなれて良かったな。同じA組としてお前らが仲良いと安心するわ」

「サンキュー♡ココにも幸あれ~♡」

「?」


 二人のやり取りに訳が分からずにいると、空は俺に向かってニッコリ笑った。
 空が元気なら何でもいっか。

 その後空と少し話して、今日から紘夢んちでバイトを始める事を教えてくれた。
 どうやら給料が良いらしい。
 てか紘夢の奴、実家追い出されておいてどこにそんな金があるんだ?使う時は伊織より使うよな?ボラ部の全員分のTシャツだって紘夢が負担するとか言ってたし。
 あ!俺が神凪んとこ通ってた時にくれてた高級弁当とかって、もしかして紘夢が払ってたのか!?てっきり生徒会の権限をフルに使って贅沢してるもんだと思ってたけど、良く考えたら紘夢なら出来なくねぇよな?
 
 
「でさ、早速夕飯のリクエストされちゃったんだよな~。料理出来なくはないけど簡単なのしか作れないから困ってんだよな~」

「へ?ああ紘夢の夕飯?何作れって言われたんだよ?」

「肉じゃが」

「和食!あー、でもあいつ食った事ねぇもん食いたがりそうだもんな~。あ、それなら直登に教われば?あいついつも弁当自分で作ってんじゃん」

「確かに~。すげぇ偉そうにされそうだけど聞いてみよー」


 前にちょこっと付き合ってた時に弁当作って貰ったけど、味は間違いない。見栄えも良くて女だったら嫁にしたいと思えるぐらいの出来だったのを覚えている。
 直登もいろいろ残念だよな。イケメンで、料理上手なのに、気が強すぎんだ。

 それにしても肉じゃがか~。悪くねぇな?


「なぁ空、俺も空が作った肉じゃが食いたい」

「じゃあ貴哉も一条さんち来る?部活の後だから遅くなるけど」

「行くー♪」

「貴哉もいるとか嬉し過ぎー♪一緒に帰れるって事だよな♡」

「あ……それは一応伊織に話してみるわ」

「はぁ~。やっぱり許可が必要か~」


 俺が空が作った肉じゃがが食いたいから空と紘夢んち行くって言ってもあまり良い顔はしねぇだろうな。てか嫌な思いさせたくねぇし。
 帰りは伊織と帰って肉じゃが食いに行くだけってのは有りか?
 
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