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2章 文化祭までのいろいろ
ボラ部のTシャツ!?
しおりを挟む放課後、一週間振りに始まった演劇部での部活動に俺はヘトヘトに疲れてボラ部の部室に向かっていた。隣を歩く伊織は笑っていた。
「まじハード過ぎ……俺出番少ないのに何であんなに何度もやり直しさせられたの……」
「文化祭まで後二週間だからな~。これから毎日こんな感じだと思うぜ?」
「あと二週間もこれが続くのかぁ……そう言えば紘夢が今日からボラ部に入ったんだよな?あいつ上手くやったかな?」
「ああ、俺は演劇部行っちゃうから早川に任せたけど、あいつなら大丈夫だろ」
そう、俺が演劇部が終わった後すぐに帰らない理由は新入部員である紘夢の様子を見に行く為だ。
中間が終わったら正式入部する筈になってるんだけど、俺はまだ話してなかったから少し気になってたんだ。
「なぁ、今日早川と遊んで帰るんだろ?」
「へ?」
「へ、じゃなくて、え?早川が貴哉を借りるって言ってたぞ?」
「あー!朝約束したの忘れてた!」
やべー!伊織に言うのをじゃなくて、空と約束してたのすら忘れてたわ!
この俺の反応に伊織は腹を抱えて笑っていた。
「あはは!貴哉、それは酷過ぎるだろ!早川が泣くぞ」
「ちげぇって!今日いろいろあったからよぉ!あ、空から聞いたって事はOKって事かぁ!?」
すんなり伊織から許可が出て俺は嬉しくて聞き返す。伊織は笑った事によって出た目尻の涙を拭きながら俺の頭をポンポンを撫でて言った。
「おー、行って来な。俺は怜ちん達と帰るから。早川に何か買って貰うんだろ?好きな物買ってもらえよ」
「そんな事まで知ってるのか!いらねぇって言ったんだけどよ」
「貴哉、俺はこれからはお前のしたい事にとやかく言わないよ。それは愛が無くなったからとかじゃなくて、信じてるからだ。だから一線は越えるな。もし越えやがったら分かってるだろ?」
「……ん。分かってる。ありがと伊織」
一線ってのは何の事だか分かってるつもりだ。伊織の事を裏切るような事だろ。空が相手ってなると強くはイエスと言えない自分がいた。
伊織はそんな俺を分かっているかのように、俺の頬を撫でてそのままキスをした。まるで自分のものだと言うように、周りを気にする事なく自然にして来た。
「お前っ!ここ学校の廊下だぞ!」
「今誰もいないって♪」
「こういうのが写真撮られて悪用されるんじゃねぇの?」
「分かった。貴哉がそこまで言うならもうしない。廊下ではな」
「…………」
またあんな騒ぎになったらどうすんだよ。伊織は何とかなっても俺の成績はもう崖っぷちだっての!数学は良かったけどな!
でも、こうして少しずつでもお互いを分かり合って譲り合っていくのも悪くないな。
俺も自分がやりたいからとか言ってねぇで周りをちゃんと見なくちゃなー。
伊織と部室に行くと、中ではみんな揃って机で何か作業をしていた。てっきり帰る準備出来てるものだと思ってたから俺と伊織は顔を見合わせて驚いた。
そして、直登が俺達に気付いて顔を上げた。
みんなして何してるんだ?何か書いたり、パソコンいじったりしてるみてぇだけど……
「あ!二人共お帰りなさい!てかもうそんな時間なんだね~」
「はー、集中したぜ~!怜ちん俺甘い物食いたい……」
「那智くんにしては良く集中してたよね♪帰りに甘い物食べて帰ろうか♪」
「貴ちゃーん♡新人の一条紘夢くんです♡今日からよろしくね♡」
直登の声を聞いてみんな各々がやっていた事をやめて顔を上げた。そして紘夢が俺に近付いて来て手を握って挨拶して来た。
本当にボラ部に紘夢がいる!
「おー、こちらこそよろしくな!てか初日からすっかり馴染んでんじゃん?みんなで何してたんだ?」
伊織は中に入って行って、机の上を眺めていた。
紘夢はふふと嬉しそうに笑いながら説明してくれた。
「みんなでボラ部のTシャツのデザインを考えてたのー♪」
「ボラ部のTシャツ!?」
「葵くんから聞いてたからボラ部の部費なら知ってるし、Tシャツ作るぐらいの部費は貰ってる筈なんだ。てかボラ部はたくさん貰ってる方だよ。そこで俺が提案したの♪みんなでお揃いのTシャツ着て団結力を高めよーう♪ってね」
「俺は賛成~♪みんなでお揃いとか素敵じゃなーい?いーくんも貴ちゃんもそう思うよね!?」
「いいんじゃん?今は副部長に全部任せてるし、副部長が良いって言えば」
怜ちんが楽しそう言いながら次々と伊織にデザインを見せていた。伊織はそれを面白そうにみんながデザインしていた物を見ながらそう言った。副部長は空だけど、大丈夫なのか?
「俺もいいと思います。初めはそんなのいるか?って思いましたけど、これからある文化祭でも着れますし、一条さんが言う団結力ってのも高まるならそこに部費をあてるのも有りかなって」
「って訳だ。みんな力込めてデザインしろよー!」
空がみんなに言うと、伊織が言った。すると「はーい」とみんなが言った。
すげぇ。何かまとまってるじゃん。
ボラ部って三年がいなくなってから、みんな好き勝手やってる感じだったけど、ちゃんと声掛ければこうやってまとまるんだな。
俺は少しだけそのTシャツが完成するのが楽しみだった。
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