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2章 文化祭までのいろいろ

戸塚ぁー♡俺やったぞー♡

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 午後の授業で、一番手応えのある数学のテストが返って来くる時が来た。これがダメだったら今回の中間もきっと全滅だ。何が何でも数学だけは!
 数学の教師が名前を呼ぶのを俺はドキドキして待っていた。


「よーし、じゃあテスト返すぞー。まずは……秋山~」

「はい!」


 普段は授業中に出さない大きな声で返事をして立ち上がり、緊張しながら黒板の方へ向かう。
 目の前まで来た俺を見て、ニッコリ笑う中年のメガネ先生。え、それはどっちの反応だ!?


「秋山~!良く頑張ったな♪」

「はっ!て事は!?」


 そんな言葉と共に回答用紙を渡されて自分の名前の横の点数を見て固まった。
 なんと!あの俺が!68点だとぉ!?


「今回のは少し難しかったと思ったけど、最近の秋山は本当に良くやってるよ。職員室でも話題になってたんだよ。これからもこの調子で頑張ってな♪」

「うおー!みんな見ろー!あの俺が68点だー!」


 先生に更に褒められて俺は思わずテストを頭の上に掲げて教室中に自慢していた。
 すると、みんなは驚いたり、笑ったりで、一気に賑やかになった。


「貴哉赤点脱出おめでとー♪」


 直登が手を振って褒めてくれた!
 空は頬杖をつきながらニコニコ笑顔で見ていた。
 そしてふと目が合った前の方に座る鉄仮面。薄く笑いながら俺に向けてグッと親指を立てて来た。その戸塚の行動が何よりも嬉しくて、俺は駆け寄り抱き付いていた。
 これにクラスは更に盛り上がった。


「戸塚ぁー♡俺やったぞー♡」

「抱き付くな!いちいちこっちに来るんじゃないっ!」

「こらー!戸塚ぁ!お前何貴哉を口説いてんだぁ!」


 すかさず空が立ち上がって怒っていた。俺は嬉し過ぎてクラスの奴ら全員を抱き締めたい気持ちだった。しねぇけどな!

 いやー、それにしても68点は凄えだろ?俺もやれば出来るんだよなぁ♪伊織に自慢してやろーっと♪

 ウキウキで自分の席に戻って他の奴もテストを貰ってるのを気分良く見ていた。


「直登、何点だった?」

「えー、70点~。俺数学苦手なんだよね~」

「マジ!?俺と変わらねぇじゃねぇか♪」

「そうなんだよ~。そろそろ俺もヤバいのかなぁ?」

「まぁ先生も今回のは難しかったって言ってたし、赤点じゃねぇからいいんじゃん?胸張れよ♪」

「貴哉に励まされるとかマジでヤバいなって思っちゃうじゃんっ」


 俺と直登がワイワイ話してると、数馬が戻って来た。数馬は学年トップの成績を維持してたらしいからちょっと気になってたんだよな。ちなみに午前中に返って来たテストは全部100点だったんだ。化け物かと思ったぜ。


「数馬何点だった?」

「ご、ごめん……教えられない……」

「どしたの数馬くん?午前中のは教えてくれたじゃん」

「あれは、良かったから……」


 そんなにヤバかったのか?なら無理に聞かねぇけど。てかそんなに難しい奴を俺ってば68点も取っちゃって凄くね?


「数馬くん、俺と貴哉より悪かったの?」

「それは……違うけど……」

「ならいいじゃねぇか♪トップじゃなくなるかもだけど、もうお前はこの教室にいられるんだし、無理して勉強しなくてもさ」

「そうだよー♪次頑張ろう次~♪」

「そ、そうだね!俺次頑張る!」


 ずっと下を向いていた数馬はやっと顔を上げた。そして一瞬見えた数馬の回答用紙を俺は見逃さなかった。いや、見えちまったんだ。え?見間違いじゃなかったら数馬の点数って……


「ちょっと待て!お前落ち込んでるんだよな!?」


 慌てて数馬の肩を揺らして聞くと、ビクッとしてコクンコクンと頷いた。


「98点で落ち込むとか俺達に対する嫌がらせかテメェ!」

「っ!!」

「数馬くん、それ全然言える点数だから」

「だって、今まで100点しかなかったからっ俺、やらかしたって思って……凄くショックだったんだ……」

「100点しかなかっただぁ?言うようになったじゃねぇか数馬よぉ?」

「あ、でも数馬くんが数学落としたって事は春くんがトップかもね~。今まで同率1位だったもんね二人は」

「って事は戸塚も100点しか取った事ないって事かよ?このクラスには化け物が二人もいやがったのか」

「元々春くんはもっと上の高校行けるぐらいの秀才だよ?ほら、親戚に一条さんもいるぐらいだし?」

「確かにな!」


 直登達と話しながらふと俺は空が気になった。あいつとは席が離れてるからこうやってすぐに話が出来ねぇんだよな。今はテストはもうしまって机に頬杖付いて黒板を眺めてた。
 今回酷かったって言ってたけど、空の順位落ちるんかな?今までは戸塚に続いて2位だったけど、励ましてやった方がいいのかな?
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