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1章 二学期中間テスト

なぁお前らって仲良いの?仲悪いの?どっちだよっ

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 チャラ男号はそれほどデカくないモールに到着して、駐輪場から中に入る。夕方過ぎだけど、金曜だからか思ったより人がいた。
 

「桐原さんもう着いてるって。中にいるらしいよ」


 何故か恋人の俺じゃなくて空の方にメッセージが行った。伊織の奴、空とやり合う気満々じゃねぇか。
 あいつがどこにいるのか聞こうとしたら歩いていた女子が騒いでるのが耳に入った。
「ちょーかっこい~♡」
「モデルか何かかなぁ?」
「あの制服って城山じゃない?」
 瞬時に伊織の事だと分かる会話だった。
 俺と空はその女子達が見ている方に歩いて行く。

 いたいた。中央入口入ってすぐの大きな噴水がある所に、一人でベンチに座っていた。制服姿でただ座ってるだけなのに、存在感たっぷりなのは、派手な赤い髪のせいじゃない。スマホをいじっていて俯いてるけど、その整った小さい顔に長い足をかっこよく組んでいる姿は男の俺でもかっこいいと思う。
 まるで芸能人のようなオーラだ。


「あの人相変わらず目立つなぁ」

「行こうぜ」


 二人で座ってる伊織に近付くとこちらに気付いて顔を上げて俺を見た。ニッコリ笑ってたけど、腹の中ではどう思ってるかなんて分からない。いや、間違いなく怒ってるだろう。


「待たせたな」

「俺も今着いたとこ。腹減ってるか?」

「いや、大丈夫」

「んじゃ適当にカフェとか入って話すか」


 伊織は空の事を一切見る事なく笑顔で言った。俺達は伊織の後ろを並んで歩いていた。すると、途中で伊織に手招きされた。


「貴哉隣おいで」

「え」

「早く♡」


 戸惑ってると、伊織に左手を引かれて強制的に隣に連れて行かれた。そして普通に指を絡めて手を握られた。ちょ、空の前とか以前にここ人多いから恥ずかしいんだけど!


「伊織っ」

「指輪、付けてるんだな♪嬉しい♡」

「は?そりゃ、お前に貰った物だから……」

「早川といる時は外してるのかと思った」

「っ……」


 うっ!伊織は笑顔のままだけど、何か心に刺さるぜ!俺が困ってるのが分かったのか、後ろにいた空が喋り出した。


「桐原さん、貴哉はそれずっと大事にしてますよ。安心して下さい」

「どうやら虫除けにはならないみたいだけどな」

「そりゃそうでしょ。そんな効果のあるリングなんて聞いた事ありません」

「大抵の虫なら寄ってこねぇんだけど、しつけぇのがいるんだわ。そいつにだけでも効いてくれればって思ってんだけどな」

「へー、それは大変ですね。リングだけじゃなくて全身コーデしてあげたらどうですか?そんな事しても寄ってくる虫はいるでしょうけどね」


 な、何だ?二人で虫の話し出したぞ?
 こいつら頭おかしくなったのか?


「なぁ、指輪って虫除けになるのか?だから高いのか?」


 俺が二人の間に割って入ると、伊織は目を大きくして驚いて、空はクスクス笑ってた。
 何だよこの空気は!
 そして伊織はいつもの笑顔になって、俺の肩を抱いて歩き出した。


「貴哉は気にしなくていい話だ。お前は本当に可愛いなぁ♪」

「うわ!それ馬鹿にしてんだろ!?」

「してねぇって。その可愛いのは俺の前だけにしろよ。マジで害虫が寄ってくるから」

「また虫かよ!それなら指輪とかよりスプレー買えよ!」


 絶対その方が効果的だろ!
 伊織はそれ以上虫の話はしなくなって、空は相変わらず後ろで笑っていた。

 そして一階のフロアにある落ち着いたカフェに入った。時間も時間なので、思ったより空いていた。
 伊織は俺を隣に座らせて、空を対面側に一人で座らせた。


「何飲む?早川も好きなの選べよ」

「俺は水でいいです」

「伊織!俺これ食いたい!」


 俺はメニューを開く前に店の入口のとこにあったポスターを見て美味そうと思ったパンケーキを伊織に見せる。


「え、腹減ってないんじゃねぇの?まぁいいけど」

「おやつなら食える♪」

「はは、早川は?」

「いりません」

「空!遠慮すんなよ~。あ、なら半分こするか?二枚のやつ頼んで一緒に食おうぜ♪」

「……貴哉一人で食べなって」


 頑なに断るもんだから、俺がそう提案すると、空は困ったように笑っていた。
 伊織が店員を呼んで注文をした。


「アイスティー一つとパンケーキ一つ。それとホットコーヒー二つ」

「!」


 伊織が注文を済ませると、空はジロッと見ていた。え、何?もう始まるのか?せめて俺が食い終わってからにしてくれねぇかな?


「貴方って人は本当に人の上に立ちたいんですね」

「何の事ー?俺が二人分飲むかもしれねぇじゃん」

「……後で請求とかしないで下さいね」

「なぁお前らって仲良いの?仲悪いの?どっちだよっ」


 また始まった俺の分からない会話!もういちいち割って入るのも面倒だったから俺から話を振って始める事にした。


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