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1章 二学期中間テスト
※ 貴哉が怒ってるのは想定内だった
しおりを挟む※空side
「……はい」
『やっと出やがったな!出るの遅ぇっ……じゃねぇ!悪いなこんな時間に!』
貴哉が怒ってるのは想定内だった。
だけど、気を使ってるのか一度言おうとしたセリフを言い直してるのに、それでも怒った口調なのが貴哉らしくて笑えた。
また貴哉の声が聞けてこんなに嬉しいなんて。
「別にいいよ。何の用?」
俺はなるべく普通に、やや突き放す言い方をする。そうしないとまた貴哉を求めてしまいそうになるからだ。
その結果いろんな俺が入り混じって、貴哉にもおかしいと思われちゃったけど、もう俺でもどれが本当の自分で、偽りの自分なのかも分からなくなって来ていた。
『お前の話だよ。お前は関わるなって言うけど、やっぱり俺は間違ってないと思う!ちなみにこの電話は伊織には言ってねぇ!別に言ってもいいけど、俺の独断で掛けてる』
「貴哉がそう思うならそうなんじゃない?もうなんでもいいよ」
桐原さんが俺に電話をした事は貴哉は知らないみたいだな。と言うことは二人は今一緒にいないのか?
『お前のその態度にも慣れた。もう好きにしろ。その代わり俺も好きにやらせてもらう!何がなんでもお前を止めるからな!』
「……どうやって?」
貴哉らしいセリフだなと思った。心のどこかで喜んでる俺がいる。
本当に自分勝手な奴だなって。
『あ?そんなの今から考える!』
「はぁ、話ってそれだけ?俺忙しいから切るよ」
桐原さんにも忙しいと言ったけど、予定なんて無い。こうして部屋に一人でいる。早く電話を切る為の口実だ。
すると貴哉は何かを思い付いたように話始めた。
『分かった!お前また俺の事迎えに来いよ!』
「何言ってんの?やだよ。それ今は桐原さんがやってるんだろ?朝から修羅場になるじゃん」
『伊織には俺から言ってしばらく来てもらうの辞めさせる。あいつに言われたんだ。お前のやりたいようにやれって。あ、浮気とかはダメだけどな』
「ふーん。俺がまた迎えに行ったとして、今日も言ったけど、また貴哉を好きになったらどうするの?結局桐原さんを怒らせるだけじゃん」
『空~♪』
「は?何?」
いきなり貴哉の嬉しそうな声がして、話が噛み合わないなぁと思ったけど、俺は自分の犯したミスに気付いた。
名前だ。放課後に三人で話した時に俺は貴哉の事を突き放す意味で「秋山」って呼んだんだ。それに対して貴哉は凄く怒っていた。
うっかり普通に名前で呼んだのに気付いたんだろう。
『お前に下の名前で呼んでもらえてすげぇ嬉しい♪なぁ、そんな風に普通にしてろよ♪じゃないと本気で殴っちゃいそうだ』
「…………」
『ん?どうした?何で何も言わねぇんだ?』
「貴哉」
『おう!何だ?』
いつも通りの貴哉に俺は言っちゃいけない事を言おうとしていた。
でも言いたい。貴哉なら何て言うかは想像つく。だから、俺は震える声で貴哉に縋った。
「貴哉に会いたいっ今すぐっ」
『空……分かった!今から会おうぜ!お前どこにいるんだ?』
やっぱり貴哉ならそう言ってくれると思った。
だから好きなのを辞められないんだ。
俺が求めたら必ず応えてくれるから。
きっとこれが本当の自分なんだと思う。
「家……でも貴哉、勉強は?」
『あー、帰ってから伊織にみっちり教わったからもう今日はやらねぇよ。一人じゃ出来ねぇし。そんじゃ今から向かうわ!ちょっと出て来れるか?』
「いや、俺が行くよ。チャラ男号で」
『じゃあ俺歩いてるから拾ってくれよ。じゃあな』
もう何もかもどうでもいいと思っていた俺は、やっぱり貴哉に会いたかった。会って抱き締めたい。散々冷たい態度を取った俺にも普通にしてくれた。
桐原さんと揉めようが今はそんなのどうでも良かった。
貴哉に会いたい。
ただそれだけ。
俺はそれだけが叶えばいいと思った。
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