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1章 二学期中間テスト
※ て事は合格〜?やったー♡
しおりを挟む※伊織side
俺は朝のホームルームが始まるまでに一条に貴哉の事を話した。一条も貴哉の話だと分かると真剣に聞いていた。
俺はボラ部の入部試験と称して一条の賢い意見を聞くつもりだった。一条の推理力はほぼ当たる。そしてどんな無理難題でもいくつもの道を作り出して、必ず答えまで導く事が出来るんだ。
「なるほどねー。それ9割空くんが原因でしょ。その野崎くん?ってのがどんな子かは知らないけど、野崎くんが原因では無いと思うなー」
「それは何でそう思うんだ?」
「いーくんの話だけを聞いた考えだけど、貴ちゃんは本当に野崎くんの事を友達としか見てないよ。俺と一緒だね~。切ないね~。で、残りの1割だけど、野崎くんがした恋愛相談の内容だ。この内容によっては野崎くんが1割かなって思う。まぁほぼ空くんだろうけどね。ちなみに内容ってのは俺の彼氏が貴哉の事疑って殴り込みに行きそうなんだーとか、俺今更だけど貴哉の事好きになっちゃったから彼氏と別れるーみたいな貴ちゃん関連の内容だった場合ね。でも、貴ちゃんだったら友達にそんな事を言われて泣くとは思えないから、多めに見積もって1割!」
一気に推理した内容をスラスラと世間話でもするかのように話す一条に俺は呆気に取られていた。
こりゃ思ってた以上だな。俺も大抵の事は出来る自信があるけど、一条だけには勝てる気しねぇわ。しかも俺の話を軽く聞いて一瞬でそこまで導き出すなんて。
「まぁあくまでも俺の考えだから~、俺はいーくんの話しか聞いてないし。問題はどこで空くんと接触したかだね~。あの貴ちゃんを泣かすなんて、いーくんと空くん以外考えられないから、いーくんに心当たりが無いなら空くんで確定だよ」
「すげぇな一条。俺も早川だろうなとは思ったけど、そこまでは思いつかなかったわ」
「ふふ♪俺の得意分野だからね♪いーくんも大変だね~。貴ちゃんが彼氏だとさ」
一条はニヤニヤ笑いながら言った。
大変だとは思った事はない。ムカついたり辛い事もあるけど、それでも俺は貴哉といたいし、手放すつもりもないからな。何があろうと全力で貴哉を繋ぎ止めるつもりでいる。
「で、早川が原因だった場合、俺はどうするのが正解だと思う?」
「うーん。これは難しいな~。俺はね、貴ちゃんの言う通りにするのが正解だと思うよ♪」
「貴哉の?」
「まずは貴ちゃんが落ち着くのを待って、貴ちゃんの話を聞いて、貴ちゃんがどうしたいのかを聞いてそれに応えてあげるのが一番だと思う。多分いーくん単独で空くんとこに乗り込む気でしょ?それは絶対やらない方がいいよ。貴ちゃんを失う確率が上がるからね」
「へー、俺の事分かってんじゃん。何でそれをやると貴哉を失うんだ?付き合ってるのは俺だけど」
「付き合ってると言う事は別れる事も出来るんだよ」
「…………」
「俺もさ、自分の事を過剰評価し過ぎてたなってこの前の件で反省してるんだ。物事の大筋な流れや人を動かす事は出来ても、人の心までは完璧には操れないんだ。だから自分の力を過信し過ぎた俺は失敗して今はただの落ちこぼれ高校生だ。今回の貴ちゃんの件も、まずは貴ちゃんの気持ちを大切にした方がいいと思うよ。勝手に行動してそれがもし貴ちゃんにとって嫌だなと思う事だったとしたらいーくん嫌われちゃうでしょ。なるべくいーくんは空くんとは接触しない方がいい。ま、これは俺の考えだからいーくんがやりたいなら止めないけどね」
「はは、マジで聖人だな。分かった。一条の話聞けて良かったよ。是非ボラ部に入って欲しいと思ったね」
「て事は合格~?やったー♡あ、どんな結果になっても入部は出来るもんね~♡」
一条の推理力ってか、話には説得力があるんだよな。話術って言うの?本当にそうなんだって思わせるような話の仕方をする気がする。
なんつーか、俺のダメな所を指摘されたようで勉強になったわ。
「時間取らせて悪かったな。あ、この話内緒で頼むわ」
「了解~♪進展あったらまた聞かせてよ。じゃね~♪」
相変わらず明るい奴だな。
機嫌良く去って行く一条の後ろ姿を見て俺は自然と笑顔になれた。
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