28 / 100
2章 兄と弟
※ どんな人なんだ?兄貴の友達って
しおりを挟む※伊織side
父さんのマンションを出て兄貴と電車に乗って自宅がある方面へ向かう。
兄貴は相変わらず無表情で一言も喋らなかった。
迷ったけど、俺から話し掛ける事にした。
「兄貴、今日は本当にありがとう。これからよろしく」
「…………」
「兄貴?聞いてる?」
「うるせぇっ!今考え事してんだ!黙ってろ!」
「ごめん」
怒られた。
これからは兄貴に声を掛ける時は気を付けなくちゃいけないな。
それから俺はずっと兄貴の様子を伺っていたけど、自宅がある駅の少し前で急に立ち上がった。
「うし、ここで降りるぞ」
「え?何で?」
「うるせぇ付いて来い」
言われるがまま乗っていた電車を降りて兄貴の後を付いて行く。
今の俺は兄貴には逆らえないからそうするしかなかった。
黙って後ろを歩いていると、兄貴から話し始めた。
「やっぱ家具家電新調するわ」
「何で?」
「俺の部屋なんもねぇだろ?今住んでる所から持ってってもいいけど、手間とか費用とか考えたら変わらねぇなって。別途請求出来るし、この際だから最新のやつ買ってやる♪」
「確かに、兄貴ならそれぐらいしてもいいな」
「同居人にも話さなきゃなんねぇから、明日は少し遅くなるかも。平日は夕飯作ってくれる人いるんだよな?」
「うん。明日は俺、学校休みだよ。土曜日文化祭だったから振替で」
「マジかよ?あ、今日は俺に付き合えよ?買った物で持ち帰れる物は持って帰るから手伝え」
「勿論そうする。兄貴は予定大丈夫なのか?今からじゃ間に合わないの?」
「それはもういい。とにかくあの家で生活出来るようにしてぇんだ。優先順位が変わった」
兄貴と話してると本当に貴哉と話してるようだ。
貴哉も気分屋で言ってる事とかコロコロ変わるからな。自分第一で、気に食わないと相手が誰だろうが食い付く所なんかそっくり。
だから俺は兄貴といるのが楽しかった。
まだ少し気を使うけどな。
「てかよ、お前全然食ってなかったけど、体調悪いのか?」
「体調は良いよ。朝は食わないんだ。お昼も軽い物しか食わない」
「それ、これから禁止な。朝も昼もちゃんと食わせるから。残したら許さねぇからな」
「えー、無理に食ったら吐いちゃうって」
「てめぇ!俺が作ったもん吐いたら殴るだけじゃ済まねぇぞ!」
「えっ!兄貴が作ってくれるのか!?」
「おう。お前の事任されたからにはやってやる。お前は学業に専念しろ」
「兄貴~♪ありがとう!」
「恋人の事はまぁ厳しくするつもりはねぇけど、今までみてぇな派手な付き合い方はダメだぞ。何かねだられても断るんだ」
「あー、それなら大丈夫だと思う。ねだられてもご飯ぐらいだし、むしろ今まで俺が無理矢理買ってあげてた感じだし」
「おめぇダメ男じゃねぇか」
「これからは気を付けるよ。兄貴はルームシェアしてる人がいるって言ってたけど、恋人じゃないのかよ?」
これは父さんと朝食を取ってる時から気になってた事だ。
兄貴が他の誰かと一緒に暮らしてたなんて知らなかったから、意外で驚いたんだ。
やっと話始めてくれたし、今なら聞いても良い気がしたんだ。
「んな訳ねぇだろ。高校からのダチだよ。全部折半で節約できっから同居してるだけだ」
「へー、どんな人なんだ?兄貴の友達って」
「お前よりダメ男だ」
「ぶはっ!何それ~?兄貴ってばダメ男と暮らしてんの?」
「まぁな。でもあいつは根はしっかりしてる奴なんだ。ただ何に対してもやる気出さないだけで。あいつがやる気出したのを見たのは俺と同じ大学行くってなった時ぐれぇだな」
「そうなんだ。仲良いんだな」
「悪くはねぇよ。なんだかんだあいつといて俺もいろいろ考えさせられたしな。こうしてお前と話してられるのもあいつのお陰だよ」
これは新事実だ。
確かに、兄貴が親に言われたぐらいで俺の様子なんか見に来る筈がないとは思ってたんだ。
あんなに桐原家を嫌ってたのに、いきなり何で?って。
なるほどな。兄貴も俺が貴哉と出会ったように、生き方を変えるような人に出会ったって事か。
10
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
楽な片恋
藍川 東
BL
蓮見早良(はすみ さわら)は恋をしていた。
ひとつ下の幼馴染、片桐優一朗(かたぎり ゆういちろう)に。
それは一方的で、実ることを望んでいないがゆえに、『楽な片恋』のはずだった……
早良と優一朗は、母親同士が親友ということもあり、幼馴染として育った。
ひとつ年上ということは、高校生までならばアドバンテージになる。
平々凡々な自分でも、年上の幼馴染、ということですべてに優秀な優一朗に対して兄貴ぶった優しさで接することができる。
高校三年生になった早良は、今年が最後になる『年上の幼馴染』としての立ち位置をかみしめて、その後は手の届かない存在になるであろう優一朗を、遠くから片恋していくつもりだった。
優一朗のひとことさえなければ…………
嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....
悪役令息シャルル様はドSな家から脱出したい
椿
BL
ドSな両親から生まれ、使用人がほぼ全員ドMなせいで、本人に特殊な嗜好はないにも関わらずSの振る舞いが発作のように出てしまう(不本意)シャルル。
その悪癖を正しく自覚し、学園でも息を潜めるように過ごしていた彼だが、ひょんなことからみんなのアイドルことミシェル(ドM)に懐かれてしまい、ついつい出てしまう暴言に周囲からの勘違いは加速。婚約者である王子の二コラにも「甘えるな」と冷たく突き放され、「このままなら婚約を破棄する」と言われてしまって……。
婚約破棄は…それだけは困る!!王子との、ニコラとの結婚だけが、俺があのドSな実家から安全に抜け出すことができる唯一の希望なのに!!
婚約破棄、もとい安全な家出計画の破綻を回避するために、SとかMとかに囲まれてる悪役令息(勘違い)受けが頑張る話。
攻めズ
ノーマルなクール王子
ドMぶりっ子
ドS従者
×
Sムーブに悩むツッコミぼっち受け
作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。
心からの愛してる
マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。
全寮制男子校
嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります
※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください
Q.親友のブラコン兄弟から敵意を向けられています。どうすれば助かりますか?
書鈴 夏(ショベルカー)
BL
平々凡々な高校生、茂部正人«もぶまさと»にはひとつの悩みがある。
それは、親友である八乙女楓真«やおとめふうま»の兄と弟から、尋常でない敵意を向けられることであった。ブラコンである彼らは、大切な彼と仲良くしている茂部を警戒しているのだ──そう考える茂部は悩みつつも、楓真と仲を深めていく。
友達関係を続けるため、たまに折れそうにもなるけど圧には負けない!!頑張れ、茂部!!
なお、兄弟は三人とも好意を茂部に向けているものとする。
7/28
一度完結しました。小ネタなど書けたら追加していきたいと思います。
聖女の兄で、すみません!
たっぷりチョコ
BL
聖女として呼ばれた妹の代わりに異世界に召喚されてしまった、古河大矢(こがだいや)。
三ヶ月経たないと元の場所に還れないと言われ、素直に待つことに。
そんな暇してる大矢に興味を持った次期国王となる第一王子が話しかけてきて・・・。
BL。ラブコメ異世界ファンタジー。
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──
あと一度だけでもいいから君に会いたい
藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。
いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。
もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。
※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる