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2章 兄と弟

※ 朝は食べないから

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 ※伊織side

 次の日の朝、床に敷いた布団で目が覚めると、俺のベッドを使っていた兄貴はいなくなっていた。
 ふと寂しさが込み上げてくる。

 兄貴がいなくなるのは慣れてる筈なのに……
 昨日寝付くまでずっと話していたからか。
 兄貴に嫌われた時からの空白を埋めるかのように俺は兄貴にたくさん話しかけた。
 途中で兄貴はウトウトしてたけど、それでも俺は楽しくてずっと話し掛けていた。

 まるでそんな出来事が夢だったような朝だった。


「はぁ……」


 一人でため息をついて部屋を出ると、一階の方から物音がした。
 兄貴だ!
 俺は急いで階段を降りてリビングに行くと、兄貴がコーヒーを淹れている所だった。

 俺に気付いて表情を変えずに俺の分のコーヒーをテーブルに置いた。


「はよ。どうしたよそんな慌てて」

「いや、兄貴がいなくなっちゃったと思って……」

「なんだそりゃ。一緒に父さんのとこに行くって言っただろうが」


 兄貴は冷蔵庫を開けて「チッ」と舌打ちをした。
 

「何だよこの家は食いもんがなんもねぇじゃねぇか。お前普段何食ってんだよ」

「朝は食べないから……夕飯とかも外で食べたり買って来たりしてる」

「はい無駄遣い~。自炊しろ自炊」


 乱暴に冷蔵庫を閉めながら軽く怒られた。
 自炊する時もあるけど、一人で食べる飯は美味しくないんだ。だから食えれば何でもいいって思って外食とかが多いだけだ。


「兄貴は自炊してるのか?」

「当たり前だろ。言っとくが俺はカードなんか渡されてねぇぞ。てかんなもん断ったわ」

「え、そうなのか?でも遊ぶ金は?」

「全部バイト代でやり繰りしてるってーの。学生なら普通だろそんなの。家賃と学校で掛かる費用は出して貰ってるけど、その他は全部自腹だ」

「知らなかった……兄貴すげぇ」

「凄くねぇんだよ。普通だ普通!お前が世間知らずなだけ!まったくっ」


 今の俺の生活は親から渡されたクレジットカードで成り立っているようなもんだ。それがなかったら何も出来ない気がする。
 でも兄貴は自分で稼いでその金で遊んだり生活したりしてるんだ……

 俺が思ってた兄貴と違って素直に感心した。
 グレてしまった兄貴は絶対親から金を貰ってると思っていた。


「幸い光陽がバイトOKだったから、そん時から貯めてたんだよ。お前みたいに誰とでも仲良くして誰とでも遊んでねぇからすこぶる貯まったわ」

「城山はダメだからなぁ」

「……腹減ったし、身支度したら出るぞ」


 確かに交友関係は広そうには見えなかったけど、少なからず連んでた友達はいたように見えた。それでも自分のバイト代だけで遊べてたって言うのか?そんなの可能なのか?

 兄貴は顔をふいっとしてリビングから出て行った。
 俺はコーヒーが置かれたテーブルに座って、しばらくそのままでいた。

 兄貴が朝までいてくれて、俺にコーヒーまで淹れてくれた。
 こんな事は初めてで、とにかく嬉しくて仕方なかった。

 この後二人で出掛けるのも楽しみだ。
 兄貴とは一緒に出掛けた事がないからどんな感じなんだろう。貴哉に似てるなら絶対楽しいだろ。

 兄貴はどんな風に歩いてどんな物を食うのかな?今日いろいろ知れたらいいな♪
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