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2章
夏樹と弘樹
しおりを挟むそれから俺は律のマンションを出た。こう言う時オートロックって便利だな。部屋から出れば勝手に鍵が掛かるようになってるとかすげぇよな。
そして、律の看病中に来てた着信履歴を見る。
澪からだった。澪には俺から買い物に付き合ってくれってメッセージしておいたんだ。本当は律と行くつもりだったけど、とてもじゃないが連れ回せない。
澪に掛け直すとすぐに出た。
「澪ー?今暇ー?」
『今バイトの休憩中だよー♪あと少しで終わるんだけど、そしたら暇だよー』
「じゃあ一緒に買い物行こうぜ!って、電話大丈夫なのかよ?」
『今トイレから掛けてるから~。買い物行く行くー♡浴衣見るー♡あ、終わったらまた電話するよー♪』
相変わらず自由な奴だなと思って電話を切って一回帰る事にした。律が体調良かったら澪んとこにご飯食べに行ったりもしたかったなぁ。まぁそれはまた今度だ。
家に帰って澪からの連絡を待つ間、弘樹も誘おうかと迷った。澪もいるし大丈夫だよな?弘樹は元々家の手伝いとかで忙しいのもあって澪程は良い返事が貰える事はないけど、同じ幼馴染だから誘うだけ誘いたかった。
「誘うだけなら良いよな?」
スマホを取ると、ちょうど澪から電話が来てビックリした。なんつータイミングだ……
「おう。バイト終わったのか?」
『終わった終わったー。夏樹は今どこ?』
「家だよ。なぁ弘樹にも声掛けようと思うんだけど、どう思う?」
『いいんじゃない?ヒロくんが暇ならだけど』
「俺から誘って平気だよな?」
『あー、そう言う事ね!なら俺から誘うよ。そうすれば自然でしょ?帰って着替えたら夏樹んち行くねー』
澪のこういうサッパリしてるところ好きだな。俺達の中で一番乙女っぽいのに、実は一番男らしい部分ももっている。
澪は決して見た目は悪くない。むしろ男にしては可愛い外見で、結構モテる。だけど、本人が面食いでイケメンに好かれなければモテてる事にはならないとかワガママな事を言ってるんだ。
そうだ、今日時間があったら澪のバイト先に連れてってもらおう。澪の好きな人、佐倉さんだっけ?を紹介してもらおう。
勝手にプランを立てて澪が来るまで一階のリビングのソファでゴロゴロしながら待ってると、インターフォンが鳴った。澪にしては早いな。今母さんいないから俺が出るしかねぇんだけど。
「はーい?どちら様?」
「やあ」
「弘樹!」
玄関を開けると弘樹が笑顔で立っていた。
あ、澪が電話してくれたのか?
「澪から聞いた。買い物に行くんだって?俺もいいかな」
「もちろん!でも驚いたぜ。今さっき澪と電話してたとこだからさ」
「ちょうど家にいたんだ。一人で買い物に行こうと思ってて準備してたからちょうど良かったよ」
「そうだったのか!あ、中入れよ。澪はまだ時間かかるだろうし」
「お邪魔します」
相変わらずちゃんとしてる弘樹は、挨拶をしてから靴を揃えて入った。俺と澪なら自分ちみたいに入って行ったりするぞ。
弘樹をリビングに通して、作ってあった麦茶をコップに注いで渡してあげる。
弘樹と二人きりとか久しぶりだから何か変な感じだった。
「あ、弘樹は何を買うんだ?」
「参考書と文房具。夏樹は?」
「おー、夏休みでも勉強すんのか。俺は旅行で使うバッグとか着替えだ」
「どこか旅行行くの?……和久井と?」
弘樹に聞かれてドキッとした。が、別に隠す事じゃねぇもんな。弘樹も普通そうだし。
「ああ、律のお爺さんが持ってる別荘に行くんだ」
「へー、いいな。澪はバイトって言ってたし、俺は特に予定ないから羨ましいや」
「家の手伝いとかあるんだろ?」
「うん。でも母さんの雑用とかだし、あとは勉強かな」
「そっか……」
「…………」
何となく気まずかったんだ。だからとうとう沈黙になっちゃったんだけど、弘樹ってまだ俺の事好きなのかな?だとしたら迂闊に変な話は出来ねぇし。早く澪来ねぇかな。
と思ってると、弘樹が俺を呼んだ。
「夏樹」
「え?」
「今日誘ってくれてありがとう。澪から聞いた。夏樹が誘いたがってるって。和久井がいるから夏樹からは言いにくいかったんだよね?」
「えっと、はは、昔から澪を誘ったら弘樹もって当たり前だったじゃん?だからさ……俺から言えなくてごめんな」
「夏樹の気持ち分かるから大丈夫だよ。俺も夏樹には迷惑掛けないようにするから安心して」
「弘樹、お前ってさ……」
「?」
ニッコリいつもの笑顔でそう言うけど、弘樹はいつも誰かの一歩後ろにいる感じがするんだ。上手く言えないけど、遠慮して、我慢して、だから時々息苦しくねぇのかなって思ってしまう。
「まだ俺の事好きなの?」
「え……」
やべ。つい気になってた事を聞いてしまった。でも自分の感情を抑え込んでるような弘樹を見てたら黙ってられなかったんだ。
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