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もっと素直になれたなら【早川雪編】
3.グレる弟
しおりを挟む俺は家を出てからも弟の事が心配でたまに実家の近くまで行き様子を見るようにしていた。母親がいそうな時間は避けて。
今日は夜働いている母親が仕事でいない時間を狙って来ていた。家には入らずに待っていると、弟らしき中学生が見えて、我が目を疑った。
「あれっ?兄貴じゃん、どうしたんだ?」
実家であるボロアパートの近くで立っていた俺に気付いて近寄って来る学ラン姿の男は紛れもない弟だった。だけど、最後に見た弟とは雰囲気が変わっていた。
俺の知る弟は世の中の汚い物など何も知らないようなあどけない少年、いや、天使のような見た目で、寂しそうな不安そうな表情をしていても俺を見つけると、この世の何よりも可愛く美しく笑って駆け寄って来ていた、そんな弟だった。
が、今目の前にいる弟はどうだ?綺麗な黒髪だったのに、脱色でもしたのか汚い金髪に学ランの前のボタンは中途半端に開けていて、ズボンもパンツ見えるんじゃないか?ってぐらいズリ下ろして、腰パン?と言う物をしていた。
俺を見る笑顔こそ弟だったけど、こんな不良俺が知ってる弟じゃない!
「おーい?兄貴ー?聞いてるー?」
「ハッ!空!お前何があった!?変な奴らとでも関わってるのか!?」
俺は我に帰り、弟の肩を掴んでグラグラ揺らして問い詰める。
弟は目をぱちくりさせて驚いていた。
弟の名前は空。四歳歳が離れていて、いつも俺の後を付いて来る可愛い可愛い弟だ。
そんな空がグレてしまった!兄としてこんなに心配な事は無い!やっぱりあんな母親なんかと暮らしてるからだ!俺があの時引っ張ってでも空を連れて出ていればこんな事にはならなかったのにっ。
自分が情けなくなり下を向いてると、空が明るく笑った。
「何だよそれ~?別に普通だしぃ?あ、髪は色抜いてみた~♪どう?似合うっしょ?女の子達からも好評なんだよね~♪」
「は?は?はぁ!?」
またまた驚いてしまった。空の喋り方にだ!前から空は落ち着いていて穏やかに喋る方ではあったけど、何だよ今のは!語尾をだらし無く伸ばして、ダルそうな喋り方は!不良は不良でもまるでチャラチャラしてる女好きな男じゃないか!
どちらにしても空がグレてしまった!
「あはは♪何か兄貴おもしれ~♪てか俺これから出掛けんだよ。何か用あったのか?」
「出掛けるってどこへ!?こんな時間から!?」
「へ?こんな時間ってまだ18時前じゃん。どこってデートだよん♡」
「デートォ!?彼女出来たのか!?」
「待ってよ。何でそんなに驚くの?俺に彼女いたら変なの?てか彼女なら一年の頃からいたしぃ?」
「そんなに前から!?何で俺に言わなかったんだよ!」
「え、兄貴に言う必要あるの?あー、違くて。別に言う事もねぇかなって。どうせどの子とも長続きしないしぃ?」
「ん?どの子ともって、今の子だけじゃないのか?ちなみに何人と付き合ったんだ?」
「キャハハ♡そんなの数えてねぇよ!兄貴ギャク専高くなったぁ?マジウケる~。あ、電話来たから行くわ。またな兄貴~」
空はそのままスマホをいじりながらどこかへ歩いて行った。
だ、誰だ今のは?俺が知ってる弟じゃない!
少し見ない間にあんなに変わるもんなのか?
いや、これは間違いなくあの母親の影響だ!女を取っ替え引っ替えって、もろに母親と同じ事をしているじゃないか!
にしても弟がああなってしまったのは俺にも責任がある。でも俺が会いに来たと言うのに、電話が来たらあっさり行ってしまったし、お兄ちゃん子だった筈の弟が数分話しただけで何処の馬の骨かも分からない女の元へ行ってしまうなんて……
俺は急に焦りが出て光ちゃんがいる店に走って向かった。
光ちゃんなら何とかしてくれる!グレてしまった弟を更生させてくれる!
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