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2章 球技大会

他の男ばっか見てた癖にー?

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 放課後の部活中、俺は自然と茜と犬飼を見ていた。今日から文化祭まで全部員が食堂に集まり合同で練習をやるんだ。俺達演者チームは真ん中を使ってシーン毎に練習。そしてそれを裏方チームが周りで背景を動かしたりして雰囲気作り。音声、照明器具とかも使って本格的にやっていた。一年チームはそれを見学していたり、サポートしたりと、何とも騒がしい空間になっていた。

 そして今は伊織のドラゴンと茜のマジョリーナの決闘のシーン。既に俺の役の弟子のデシーノはいなくなってるから俺はここから見学になるんだが、マジョリーナのすぐ横で裏方リーダーである犬飼が他の裏方達にいろいろ指示を出してるのが目に入って気が気じゃ無かった。

 もしあの二人が付き合ったとしたら?
 別に悪くねぇんじゃねぇの?

 犬飼には嫌な事されたけど、心を入れ替えたって言ってたし、実際部活ではちゃんとやってるからな。
 今だって汗かきながら裏方の仕事こなしてるし、てか裏方って思ってたより大変そうなんだよな。何よりめっちゃ動くんだ。裏方って名前なだけあって地味だけど、演者達が演技するのに合わせてあちこちを動き回ってるんだ。重い物は数人で持ち、次のシーンで使う物を用意したりと、見ていてとても忙しそうに感じた。
 そして裏方達が使う背景や小道具は演者達をより引き立てていた。普段見て来た二人の演技もこうきて見るとより世界観が伝わって来て、つい見入ってしまう瞬間もあるぐらいだ。

 ふーん、裏方ってかっけーじゃん。


「秋山~。そんなに見つめちゃって可愛いとこあんじゃんー♪」

「あ?何の事だよ?」


 横にいたヒロイン役をやる七海にニヤニヤとしながら言われた。


「いーくんの事見てたでしょー?もーラブラブなんだからぁ♪きゃー」

「は?別に見てねぇよ。俺が見てたのは……」


 こいつも俺と伊織の事をどっかで聞いたのか、ここでやっと茶化されてるんだって分かった。
 残念だけど俺が見ていたのは茜と犬飼だ。でもこの事を七海は知らないよな?犬飼はどうでもいいけど、茜が関わってるしあんま言いふらすのは良くねぇよな?


「裏方達だよ。あいつらすげぇ動くなって」

「ああ、まぁ仕事だからね~」

「なぁ犬飼ってどんな奴?あいつってあんなに汗かくキャラなの?」

「誠也ぁ?汗は誰でもかくでしょ。どんな奴って下衆い奴だよ」

「下衆……今でもか?」

「前トモにチラッと聞いたけど、秋山って犬飼達に襲われそうになったんでしょ?その首謀者はあの誠也だよ。誠也はいつも下の奴を動かして他にもたくさん悪い事して来たんだから。今はどうだろ?話には聞かないけど」

「ふーん」

「まさか秋山!誠也の事!?」

「んな訳あるか!そんなの俺も犬飼も伊織に殺されるだろ」

「だよね~!ねぇねぇ、いーくんとの話聞かせてよ♪どっちからー?」

「後でな。ほら詩音が睨んでるから黙れよ」

「ゲッ!」


 あんま話してると演技の邪魔になるからな。他の奴らは大人しく見てるし。七海は女みてぇだから一度話し出すと次から次へと話して来る。話の内容が恋バナだと尚更だ。

 
 そして今やってる練習が終わって一旦休憩になった。さっきまで茜と練習をしていた伊織が不機嫌そうに俺の隣にドカッと座って来た。


「お疲れ~。伊織良かったぞ♪」

「他の男ばっか見てた癖にー?」

「あ?」


 そっぽを向きながら伊織が言った。
 あ、俺が茜と犬飼ばかり見てたの気付いてたのか!だから拗ねてんのか!
 やば!可愛いとこあんじゃん。


「ひでぇよ。俺が頑張ってんのに他の男ばっか見て」

「あはは♪お前可愛いなぁ♡ちゃんと伊織の事も見てたから機嫌直せよ」

「なぁ、貴哉エッチしたい」

「突然だな。てかそう言うの堂々と言うの辞めろよ。周りに人いるだろ」

「なぁ帰りに貴哉んち寄っていいか?」

「……いいよ」

「やったぁ♡」

「お前は本当に……」

「で、何で犬飼ばっか見てたんだ?」

「あ、気付いたか?ほら、昼休みに話聞いたじゃん
?ちょうど茜もいたから二人が付き合ったらどうなんかなぁって思ってさ」

「ああそれでか。二人自体は別に問題ねぇんじゃん?犬飼ってああ見えてしっかりしてるし。悪い事しなければな。問題は桃山だろ。桃山がいる限り二人が付き合うのは無理だろうな」

「伊織はそう思ってんだ」

「なに、貴哉はいけるとか思ってんの?てか二之宮と桃山を別れさせられるのかよ?あの二人も今ちょー仲良しじゃん」

「別れさせる気はねぇよ。どっちを選ぶかは茜だ。俺は茜が笑ってられるならどっちと付き合ってもいいと思ってるだけ。一番大事なのは茜だからな」

「なるほどな。さすが親友~」


 俺が伊織と空と過ちを犯してしまった時に、茜に相談したんだ。そしたら茜は「俺は何があってもお前の味方だ。お前が良いと思うならそれでいいんじゃないか?」と俺に言った。
 とても嬉しかったんだ。現に茜は俺が助けを求めたり何か困ってると必ず助けてくれる。俺も茜に同じようにしてやりたいんだ。
 だから、茜の事を幸せに出来るなら桃山でも犬飼でもどちらでもいいと思ってるんだ。


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