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2章 球技大会

俺は貴哉と恋人っぽい事がしてぇの!

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 休み明けの学校はとても怠かった。元々朝に弱いのもあるけど、今日は特に怠かった。それは空だ。あれから一切連絡は取っていない。別れたから当たり前なんだけど、嫌いになったとかで別れた訳じゃなかったし、空がどうなったのかも心配で気まずかった。

 迎えに来てもらった伊織と歩いて学校へ向かう。
 俺の心境を察したのか元気付けようとしてくれていた。


「貴哉~!朝から暗いってー!今日の昼飯奢ってやるから元気出せよ♪食堂行こうぜ♪」

「朝はいつもこうなんだよ。てかお前は何でそんなに元気なの。寝起き悪い癖に」


 金曜日の夜は伊織んち、土曜日は俺んちにそれぞれ泊まったが、伊織は寝起きが悪かった。金曜日に至っては起こしてもすぐに起きないし、土曜日は寝ている俺を無表情で無理矢理襲おうとして来たんだ。
 でも起きてしまえばいつもの爽やかアイドルに変身するから怖ぇ。こうやって何もなかったかのように明るくしてるからな。


「ずっと一人だったから自分の寝起きなんて分からねぇよ。んー、そういう貴哉も寝起き悪くね?」

「お前程悪くはねぇよ」

「俺達さ、いろいろ似てるよな♪嬉しいな♪」


 伊織はニコニコ笑っていてとても楽しそうにしていた。
 てかよぉ、伊織と歩いてると周りがすげぇ見てくるんだよな。本人は慣れてるから気にしてねぇけど、俺は気まずい。ほら、あのセーラー服着た女達も伊織見て何か話してるし。


「貴哉ー?どした?」

「なんでもねぇよ。さっさと学校行こうぜ~」


 言ってもどうにもならないだろうしな。
 まぁ俺もその内慣れるだろ。

 てか伊織は俺と付き合った事を周りには言うつもりなのか?伊織の性格だから言うだろうけど、正直俺は気まずいんだ。同じクラスに空がいるからな。


「なぁ伊織、お願いがあるんだけど」

「何だ?何でも言えよ♪」

「俺達が付き合ってるのって隠したりしねぇよな?」

「当たり前だろー?前と違ってちゃんと早川と別れてんだし、俺は堂々と付き合いたい」

「分かった。それは良しとしよう。でもさ、出来れば空の前ではイチャつくのとかしたくねぇんだ」

「あー、了解。なるべくしないようにする。もう貴哉は俺だけのだし、向こうがちょっかい出さない限りはな」

「よし。あ、昼飯食堂だっけ?現地集合な!お前絶対迎えに来るなよ!」

「えー!迎えに行きたい!何でダメなんだ?」

「目立つからだよ!ほら今だってみんなお前の事見てるじゃねぇか!」

「そんなん気にしなきゃいいだろ?彼氏の迎えに行けないとかやだ!」

「気になるに決まってんだろ!お前は慣れてるからいいだろうが、俺はあんなに注目浴びながら歩き回るのはごめんだからな!」

「分かった。そんじゃ俺が見られなきゃいいんだな?」

「おう。そしたら迎えでも何でもしやがれ」

「何でも?言ったなぁ?」


 な、何だよこいつのこのニヤリとした笑顔は!
 嫌でも勝手に見られちまう癖にどうする事も出来ねぇだろうが。

 その後伊織はスタスタと近くにいたセーラー服の女二人組の所まで歩いて行き、何かを話していた。すると、女二人は慌てた様子で逃げていくように見えた。
 あいつ何言ったんだ?


「おい伊織、何してるんだよ?」

「次俺の事見たら女だろうがなんだろうがぶん殴るって言ったんだよ。周りにも言っておけって言っておいたからその内広まって誰も俺の事見なくなるだろ」

「はぁ!?正気か!?何でそんな事言ったんだよ!」

「実際には殴ったりしねぇよ。ただの脅しだ。俺の悪い噂が出回れば今みたいに注目される事もねぇだろ」

「馬鹿野郎!それじゃお前の評判が悪くなるじゃねぇか!」

「そんなのどーでもいいんだよ。俺は貴哉と恋人っぽい事がしてぇの!貴哉が俺を愛してくれてれば周りなんてどうでもいい!」

「なっ……」


 このバカ!そんな恥ずかしい事を大声で言いやがって!近くにいた奴らがコソコソしながら逃げて行くじゃねぇか!
 これじゃ違う意味で注目浴びるんじゃね?


「はぁ、参ったよ。俺が悪かったよ」

「え♡じゃあ昼休みになったら迎えに行っていいのか?」

「好きにしろよ」

「やったー♡」


 ニッコリ笑って俺の隣に近寄ってくる伊織。
 本当に嬉しそうにしてるのを見たら、それ以上は何も言えねぇよ。

 伊織は見た目こそ付き合う相手には困ってなさそうなのに、自称恋愛初心者らしい。だから普通に付き合った時のカップルがするようなのに憧れてる所があるらしく、俺といろいろやりたがるんだ。

 そんな伊織は嫌いじゃない。
 むしろ一緒にやって満足してる伊織を見てると俺まで嬉しくなるんだ。

 はぁ、こうやって俺が妥協して付き合っていくんだろうなぁ。


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