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2章 球技大会
俺は……言いたくねぇ
しおりを挟むそれから伊織はずーっと俺にくっ付いていた。とても機嫌良さそうに、俺を自分のものだと自慢するかのように。
「貴哉ー♡今日も一緒に寝ようぜー♡」
「いや、母ちゃん心配するから帰るし」
「んじゃ俺が貴哉んち泊まる♡」
「おーそうしろ」
「こらそこー!人んちでイチャつかない!!」
伊織にチュッチュッとキスをされている所を腕を組んで仁王立ちしている紘夢に注意された。
今俺達は、テニスでかいた汗を流す為に紘夢んちのシャワーを順番に借りてる所だった。
俺と伊織は早々に済ませたから他の奴らが戻ってくるのをくつろぎながら待ってたんだ。
「あ、紘夢ー!お前テニス上手かったな!頭だけじゃなくて運動神経も良いんだな」
「スポーツは一通り習ったからね~って、話逸らしたなー?」
「おーい、紘夢ー?ドライヤーどこ?乾かしたいんだけど」
「あれ、脱衣所になかった?的羽ぁー!ドライヤー出してー!」
シャワーを済ませた雉岡が出て来て紘夢に聞いていた。てかこの二人こそいつ仲良くなったのよ?
「紘夢さん、何で雉岡とペア組んだのよ?」
「何でって、俺がテニスやりたいって言ったら誰も一緒にやってくれなくて、そこへ吉乃が紘夢とやるのは俺だーってカッコ良く言ったからだよ」
「コラ。勝手に話変えないの」
「似たようなものだからいいじゃん♪」
すげぇ雉岡に懐いてるみてぇだけど、すげぇ違和感があった。だって雉岡だぜ?あの演劇部裏方三人衆の、一番目立たない奴の雉岡!まぁ見た目こそインパクトはあるけどよぉ、そんな雉岡と紘夢だもんなぁ。
「何よ秋山?何か言いたそうじゃん」
「雉岡って、紘夢の事が好きなのか?」
「は?」
「あはは!さすが貴哉!面白ぇ事聞くな~」
「伊織も気になるだろ?」
「なるにはなるけど」
ずっと俺に抱き付いていて、興味がないのか話には入って来なかった伊織が笑ってた。
そして紘夢も満面の笑顔で雉岡を見ていた。
「吉乃ー♪俺も気になるー♡」
「ちょ、紘夢は知ってんでしょー?俺いじられキャラとかじゃねぇんだから辞めてくれって」
「うわっ紘夢は知ってるってよ!」
「だな!こりゃヤリまくってんな!」
「アイドルのいーくんがそんなセリフ言っちゃダメでしょ!」
「桐原もみんなのアイドルって言うキャラ崩壊して来たよな。好きな奴にはデレまくるし、それにキレたら怖いって噂本当だったんだ」
「なぁ雉岡ー!紘夢の事本気なのか?」
「まだ言うかねこの子は!」
「真剣に聞いてんの!紘夢は俺の大切な友達なんだ!」
俺がそう言うと、雉岡は黙ってジーッと見て来た。
だってさ、紘夢はこれからいろんな事やるんだから、そこへ中途半端な興味とかそういう理由で変な奴が寄って来てもムカつくじゃん!雉岡には前科があるからな!
ずっと俺を見てる雉岡はニコッと笑って言った。
「そうだったな。秋山の事は紘夢から聞いたから良く知ってるよ。俺は紘夢の事が好きだよ。その好きはお前らが愛し合ってるような好きだ」
「吉乃~♡かっこいー♡」
愛の告白をする雉岡にすかさず抱き付く紘夢。
へー、あの雉岡がねぇ。こりゃまた意外な奴とくっ付いたもんだ!
でも紘夢の事を本気だって言うなら文句はねぇ。そもそも俺もそんな偉い事言えねぇけどな。
てか喋ってる時に見えたけど、雉岡って舌にピアスしてね?数馬程じゃねぇけど、ピアスいっぱい付けてんなぁとは思ってたけど、まさか舌にまで開けてるとは……
「そっか♪雉岡、紘夢の事頼んだぞ」
「任せろ♪」
「へー、雉岡が一条をね~。一条も好きなんだよな?」
「うん♡俺って今でもクラスでは浮いてるんだけど、吉乃だけは仲良くしてくれてさ。あの時の吉乃は本当にカッコよくてヒーローみたいだったんだ♪」
「それ恥ずかしいからやめてくれって」
「あ!紘夢!お前耳!」
「あー♡貴ちゃんやっと気付いた~?」
自慢気に雉岡との思い出話をする紘夢の左耳にキラリと光るピアスが見えた。えー!紘夢がピアスとか意外過ぎるんだけど!
「吉乃が次にどこに穴を開けるか俺が決めろって言うから俺の左耳に開けてくれってお願いしたの♡いい話でしょー?」
「一条家の長男様に穴開けるとか決死の覚悟でしたけどね!」
「へー、やるじゃんお前ら。てか一条が付けてるのって本物のルビーじゃね?金持ちは違ぇなぁ」
金持ちはお前もな!と心の中でツッコミを入れて伊織の言葉を聞いていた。ルビーって宝石の事だろ?紘夢の耳に付いてるのは赤い石だった。
「さすがいーくん♪吉乃の誕生月が7月だからルビーにしたの♡ちなみに吉乃には俺の誕生月のを付けてもらってます!」
「あー恥ずかしい!」
まだまだ紘夢の自慢は続いた。今度は雉岡の右耳を見せて来た。いっぱいある中の一つだけやけに輝いてる石が見えた。え、あれって……
「一条って4月生まれ?」
「正解♪ダイヤモンドでーす♪」
「それなら俺も知ってる!すげぇ高いやつだろ?雉岡やったな!」
「貴哉、ルビーも同じぐらい高いんだぞ。そんな物をあっさりプレゼントしちゃうとか一条すげぇわ」
「なぁ伊織の誕生日っていつー?」
「俺は3月。貴哉は?」
「嘘!!一緒!俺も3月~♪」
「うわ、誕生月までお揃いとか羨ましいんだけど」
「まさか日にちまで同じじゃねぇよな?」
紘夢と雉岡に言われて伊織と顔を見合わせる。
同じ3月生まれってだけでもすげぇのに、まさかな~!でも日にちはバレたくねぇな……
「俺は2日だけど?」
「俺は……言いたくねぇ」
「言いたくねぇってなんだよそりゃ?」
「貴ちゃんの誕生日なら知ってるけどね~」
「紘夢!お前言うんじゃねぇぞ!」
「分かった。3日だろ?貴哉」
ここで伊織がニヤニヤしながら俺の誕生日を当てて来た。誕生日を言うと馬鹿にされるから言いたくなかった……くそ、何で俺は女子の日生まれなんだっ!
「3月3日雛祭りか!可愛いなぁ♪」
「黙れ雉岡!言いふらすんじゃねぇぞ!」
「あーはいはい」
「どこまでも可愛いすぎだー♡しかも1日違いとか嬉しすぎー♡一緒にパーティーやろうな♡」
「ほんと、誕生日までほぼ一緒ってここまで来たら二人は前世で何かあったね」
「なぁ、伊織の誕生日って本当なのか?俺今まで誕生日が1日違いの奴いなかったからビックリしてんだけど!」
「嘘ついてどーすんだよ。運命ってやつだな♡なぁ貴哉早く帰ってイチャイチャしようぜ~♡」
「茜達がまだ来ねえだろ。俺遅刻したから藤野も駅まで送りてぇし」
「ねぇ藤野って元テニス部なんでしょ?そんで、茜ちゃんと同じ中学の先輩後輩なんだってね」
「まじ?あの二人ってそんな接点あったのか」
「らしいぜ。藤野って良い奴だからお前あんま脅かす事すんじゃねぇよ」
「貴哉がいじめられてると思ったら体が勝手に動いてたんだよ」
「怖ー!絶対秋山には逆らわないようにしよー」
「貴ちゃんに怒られるまでやらなくても良くないか?ねぇ?貴ちゃん」
「そうだぞ!何事もほどほどにだ!」
「てか秋山も秋山だけどな。昨日桐原にキレてたけど、暴れ過ぎだって。マジで桐原を殴るとは思わなかった」
「あはは、殴られてたな俺~」
「あれは事故だ!伊織が避けると思ったんだ!てか雉岡俺には逆らわねぇんじゃねぇのか!」
「桐原笑ってるし大丈夫っしょ」
「てかみんな遅くね?何してんのよ」
ここで他の奴らがなかなか現れない事に気付く。俺達はずっと前にみんなでパーティーみたいなのをした部屋にいんだけど、まさかみんなで一斉に風呂入ってんじゃねぇよな?確かに広い風呂だったけど、藤野もいるんだぞ?
「あ、多分夕飯用意してくれてるんだと思うー。桃と的羽が張り切ってたから。楽しみにしててよ♪それと吉乃早く髪乾かさないと風邪ひくよー。ほらおいで♡」
「あ、紘夢が乾かしてくれんの?やったー」
紘夢が雉岡の腕を引っ張って部屋から出ていった。そう言う事なら夕飯楽しみだなぁ♪
俺は伊織とまた二人きりになった。
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