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2章 球技大会

よそ見してる貴哉にプレゼントあげる~♡

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 伊織がタクシーを呼んで紘夢んちに着いたのは14時過ぎ。腹減ったから途中で飯を食ってたらこんな時間になったんだ。てか昨日牛丼食ってから何も食って無かったな。

 そして俺と伊織を見た茜、桃山、紘夢、藤野、そしているとは思わなかった雉岡。五人は固まったままずっと見ていた。

 だよな。そうなるよな。
 だって上下お揃いとか目立つもんなぁ。

 俺は少し恥ずかしくて顔を逸らしていると、一人機嫌のいい伊織はみんなに挨拶をしていた。


「よう待たせたなお前ら!」

「ちょっと待ってよいーくん!ちょーウケるんだけど!ギャハハ!」


 むしろ桃山みてぇに笑ってくれた方が楽でいいや。
 

「貴ちゃん!いーくんに無理矢理着せられた!?我慢してないで脱いでいいよ!」

「人聞きの悪い事言うんじゃねぇよ。仲良いから合わせたんだよなぁ♡」

「そうだな。はは……」

「秋山、顔引き攣ってるぞ」

「茜!そんな事よりテニスやろうぜテニス!」

「おい貴哉」

「うおっ!?」


 茜に突っ込まれて誤魔化そうとしたら、伊織にグイッと引かれて抱き付かれた。そ、外でもやるのかよそういうの!


「俺とお揃い嫌だったのか?」

「嫌じゃねぇよ!俺が望んで着ました!だから離せっ」

「だよなぁ♡」


 このやり取りを見ていたみんなはドン引き。
 ここで紘夢の隣にいた雉岡がみんなが気になっているであろう質問をして来た。


「俺あんま二人の事良く知らねーんだけど、桐原と秋山って付き合ってんの?」

「吉乃!ナイス質問だよ!」

「いや、秋山は早川と付き合っているんだろ?桐原は一方的に気に入ってるだけだろ」

「えー、でも貴哉が望んで着たって言ってるぜ?てか何なのお前ら三人って。面白い関係だよなー」


 茜から空の名前が出て少し動揺したけど、その後の桃山の言葉でみんなには話さなくちゃと思った。
 ここにいるみんなだけじゃない。学校の奴らはみんな俺と空が付き合ってる事を知っている。


「貴哉、お前が話したく無いなら話さなくていい」

「伊織……」

「早川がどういう行動に出るか分からねぇけど、お前が言いにくいならそのままでいい」


 伊織が気を使って俺に耳打ちしてくれた。
 確かに今空との事を話すのはキツいかもな。昨日の空の事を思い出すから。


「なーにぃ?二人でコソコソと。怪しすぎない?」

「おいいーくん!俺とテニス組もうぜ♪雑魚共をボロボロにしてやろう♪」

「桃山とか。悪くねぇな」


 紘夢が怪しんで来たけど、桃山が割り込んで伊織を誘っていた。こういう時、桃山のマイペースさがありがたくもある。
 俺は相方の藤野を見る。藤野はニコッと笑った。


「藤野、待たせて悪かったな。濃い二年ばかりで窮屈だったろ?」

「初めは怖かったけど、桃山さんとは一度対戦した事あるし、二之宮さんもいたから大丈夫だったよ。秋山は大丈夫?」

「んー、まぁな!テニスやって発散する!」

「秋山はまずテニスに慣れなきゃだもんな。俺がサポートするから今日は前出てみて」

「おう!頼んだぞ藤野!」


 そして俺と藤野ペア。あとは茜と紘夢と雉岡だ。一人余るな。


「それじゃあ俺は審判に回ろう。まずは秋山藤野ペア対桐原桃山ペアでやろう」

「吉乃~座って見てよー♪」

「おー」


 どうやら紘夢と雉岡のペアらしい。
 いきなり伊織と桃山って言うとんでもねぇ奴らとやる事になっちまったけど、藤野がサポートしてくれるなら心強い。学校での練習ではダブルスは出来ないから俺にとって初めてになるな。

 俺は藤野と一緒に綺麗に整備されたコートに入る。紘夢んちも大分見違えたよな~。テニスコートだけじゃなくて、庭全体も手入れされてて本当に大きくて綺麗な豪邸だ。


「最初のサーブは一年に譲ってやんよ~」

「よし、俺からやります」


 桃山が藤野にボールを投げて藤野は上手にラケットで受け取っていた。
 俺は紘夢からラケットを借りて藤野に言われた位置に立つ。
 相手のコートには後ろに桃山、前に伊織がいた。
 桃山の実力はもう知ってる。伊織は自他共に認める何でも出来るスーパーマンだからきっと強いだろう。
 とりあえず俺はテニスとやらを知らなくてはならない。


「藤野ー、いつでも始めていいぞー」

「はい!」


 茜の掛け声で藤野は元気良く返事をした。後ろにいるから見えないけど、藤野も上手い。
 そして藤野がサーブをしてボールが俺の横を通って相手のコートに向かって行った。
 ボールは相手コートの後ろに飛んでった。それに素早く反応した桃山は軽々とボールを打ち返した。すげぇ!やっぱ桃山はすげぇ!


「あいよっと!」


 桃山が打ち返したボールは再び俺の横を通って俺達のコートの後ろへ飛んでった。そこには藤野がいるはず!俺は振り向いて確認すると、既にボールを打ち返してる藤野がいた。まじかっけー!


「秋山前見て!後ろは大丈夫だから」

「お、おう!」

「よそ見してる貴哉にプレゼントあげる~♡」


 藤野が返したボールをまた桃山が追い掛けて、こっちに打ち返そうとしていた。あいつ今俺って言った!?
 桃山は今度は高く飛んでラケットを大きく振ってボールを思い切り打ち返してる来た。あ!スマッシュってやつだ!俺が呆気に取られていると、桃山が打ったボールは俺の真横に落ちた。


「フィフティー桐原桃山ペア!」

「桃やる~♪」

「マスクしたまますげぇね。あいつの運動神経まじどーなってんの?」


 茜が言うと、コート横に座ってた二人が言った。
 いや、まじですげぇよあいつ。体育の授業でも凄かったけど、実際対戦しながら見るとより伝わってくる。


「秋山、大丈夫か?」

「ああ。悪い、体動かなかった」

「気にすんな。桃山さんの打球は結構重たいから無理はしない方がいい。俺も取れなくて悪かった」

「藤野良い奴過ぎるだろー!」

「にゃはは~♪貴哉ビビってやんのー!」

「てめぇ桃山ぁ!俺狙いやがったな!」

「だってゲームってそういうもんでしょー?隙を狙って勝利を勝ち取る♪悔しかったら貴哉もやってみな~♪」

「桃山、お前貴哉に球ぶつけたらただじゃおかねぇからな?」

「いーくん怖っ!俺仲間よ!チームチーム!睨むなよー!」

「ほらさっさとサーブしろよー!」


 こんな感じで俺は一球も打ち返す事が出来ずに桐原桃山ペアの圧勝で終わった。
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