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2章 球技大会
貴哉君、空と別れてくれないか?
しおりを挟むリビングで男三人がテーブルを囲ってティータイム。俺は空の隣。空の相向いに雪兄がいた。
最初に口を開いたのは雪兄だった。
「率直に言う。貴哉君、空と別れてくれないか?」
「へ?」
「兄貴!何言ってんだよ!」
「俺が思うに君は空の事を大事にしているようには思えない。弟が傷付いてるのは見てられないんだ」
「やめろよ!そんな話をするんじゃなかっただろ!」
「いいよ空。本当の事じゃん。俺空の事謝りきれないぐらい傷付けたし」
「貴哉……」
「認めるんだね。なら別れてくれるよね?」
「認めるよ。でも別れる別れないは雪兄とじゃなくて俺と空で決める」
「へー、そう来たか。話には聞いてたけど、本当に馬鹿なんだね」
「兄貴!いい加減にしろ!貴哉を悪く言うんじゃねぇ!」
「随分な口を聞くようになったんだね空。ああ、こんな子といたらそうなってもおかしくはないか」
「貴哉、もういい。行こう」
「待て。俺は雪兄と話す」
「貴哉!」
「話すって何を?これ以上話しても俺は空と君を認めないよ」
「兄貴が認めなくてもいい!」
雪兄はずっと落ち着いて俺達を否定する事を言っていた。そしてそれに対して反抗する空。
原因は俺だろうな。俺がこんな奴だから空の事も傷付けるし、空の兄貴にも認めてもらえねぇんだ。
普段だったらキレてるけど、今は違った。不思議と落ち着いて聞いてられた。
そうか、恋人の親族に嫌われるのって思ってたより辛いんだな。
でも俺は最近こう言う時の対処の仕方を学んだんだ。これで許してもらえるとは思ってないけど、俺が分かる精一杯の方法だ。
俺は黙って立ち上がって、雪兄を真っ直ぐ見た。
雪兄は俺を睨んだままだ。
「何?キレて暴力でも振るう?見た目通り気性も荒いんだな」
「雪兄、こんな事で許されるとは思ってねぇけど……やらせてくれ。俺、秋山貴哉は貴方の大事な弟を何度も傷付けてしまいました。その事は深く反省してます。本当に申し訳ありませんでした」
「…………」
「…………」
俺は謝罪と共に腰を折って深く頭を下げた。
二人は何も言わなかった。顔が見れないからどんな反応してるのか分からないけど、俺はそのまま頭を下げ続けていた。
「これからは空を傷付けないように行動するよう心掛けます。それが俺が出せる改善策です。ですから、どうか別れる別れないは俺達二人で話させて下さい。お願いします」
「もういいよ。頭上げて座りなよ」
「はい!」
雪兄に言われて顔を上げるて見てみると、そっぽを向いていた。
そして立ち上がり冷凍庫を開けて何かをしようとしていた。
相変わらずの反応に、俺はもう何も出来ねぇから紅茶を飲んで一息ついた。隣にいる空は心配そうに俺を見ていた。
そして雪兄は俺に近付いて来て「顔を上げて」と言った。俺は何だ?と思って雪兄を見上げると、おでこにペタッと冷たい何かを付けられた。
「ひ!何!?」
「冷えピタ。それで冷やしなよ。そんなに目腫らしちゃって、せっかくの綺麗な顔が台無しだよ~」
「え……あ、ありがとう……」
「兄貴っ」
そして、雪兄は驚く俺を見て盛大に笑い始めた。
その笑顔はまるでお笑いか何かのテレビを見て笑っているような、本当に楽しそうな笑顔だった。
「あはは!君、想像以上だね!馬鹿なんだろうなとは思ってたけど、そう来るとは思わなかったよ!」
「ん?あれ?これって褒められてんのか?」
「うーん。両方かな?」
いきなりのキャラの変わりようにどっちなのか分からなくて空に聞いてみると、苦笑いをしていた。
そして笑い終わった雪兄はニコッと笑った。
「なかなかいい謝罪だったね。キツい事を言って悪かったよ。俺、ブラコンだから話だけ聞いて絶対別れさせようと思ってたんだ。だけど、思ってたよりもしっかりしてるらしい」
「雪兄!」
「いいよ。二人で話して決める事、許してあげる。それと、改めて空の兄の早川雪です。貴哉くん、よろしくね♪」
うわぁ!あの雪兄がよろしくだって!
これって認めてもらえたって事だよな!?
笑った顔とか空とそっくりだし!
「ありがとう雪兄!こちらこそよろしくお願いします!」
「それじゃ仕事に行くよ。本当は今店でイベントやってるから忙しいんだ」
雪兄は支度して部屋から出て行った。
そして残された俺と空は顔を見合わせてどちらともなく笑い合った。
「貴哉すげぇじゃん!さっきのすげぇかっこよかったし!」
「だろー?いや、俺も伊達に悪さしてねぇっての?いやぁ担任の玉ちゃんのおかげだな!」
「?」
俺が教頭達に呼び出された時に玉ちゃんが俺の為に頭を下げてくれた事があった。
その事が俺の中ではとても印象に残っていて、とてもかっこいい大人に見えたんだ。
悪い事をしたらまず非を認めて謝る。
話はそれからだ。
俺が最近学んだ事。
初対面の奴に頭下げるのって結構勇気がいるけど、やってしまえばスッキリするもんだ。
この出来事は空は知らないから不思議な顔で見てたけど、とりあえず空の兄貴には会えて、俺の印象も少しは良くなったみてぇだから良かった。
後は空のバイトの話を聞いて、俺の話を空にするんだ。
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