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2章 球技大会
アイツがいきなりあんな態度になったんだ!
しおりを挟む部活での出来事。今日も演劇部に参加する為に一人で部室に向かう。昨日に引き続き自販機前で伊織を見つけた。
昨日は七海の邪魔が入って脅かせなかったから、今日こそはやってやろうとゆっくり近付いて行く。
何を買おうか悩んでるみてぇだな!
俺は両手を開いて前に出して大きな声と共に伊織の背中を押してやった。
「いおりっ!!」
「!」
伊織の反応は思ったよりも薄く、驚いた顔をして振り向いて俺だと分かると、顔をふいっと前に戻した。
え?何この反応?
俺はてっきりめちゃくちゃ驚いて「なんだよ貴哉か~」とかおどけるもんだと思ってたから俺の方が拍子抜けしてしまった。
「よう。部活始まってるぞ」
「……ああ」
と言って先に食堂に入って行ってしまった。
何だよアイツ!昨日とは全然態度ちげぇじゃねぇか!!
俺は少しムッとしつつも、伊織の後を追って食堂に入る。
今日も詩音は来てるみてぇだな。
「お疲れ様です詩音さん」
「うす!詩音」
「やあ二人共。今日もよろしくね♪」
それぞれ挨拶を済ませると、伊織は俺を見る事無くスーッと他の演劇部の輪の中へ消えて行った。
「もしかしていーくん、機嫌悪い?」
「詩音もそう思うか!?」
「いーくんて態度に出るからねぇ。部員達には普通にしてるみたいだけど、貴哉くんと何かあったのかな?」
輪に入って行った伊織はいつもの笑顔で他の部員達と接していた。
はぁ!?俺が原因なのか!?
「知らね!さっき自販機の前で脅かしてやったらスカしてやがるんだ!」
「そうか。貴哉くん相手に珍しいね~」
そうだ。伊織は俺を見付けたらさも嬉しそうに懐いて来る奴な筈なのに。あれ?でもこんな伊織って、前にもあったような?
「秋山おつー♪今日の練習一緒だってよろしくー」
「はっ!七海!」
甲高い声が聞こえて来て、ふと蘇る記憶!
そうだ、前にも伊織に冷たくされた事があったんだ。そん時七海が伊織にベタベタして俺に嫌な態度取って来たんだ!
「まさかまたテメェが?」
「はぁ?何いきなり?」
「貴哉くん、いきなり疑うのは良くないよ。とりあえず僕からいーくんに聞いてみるよ」
「いーくん?えー、秋山ってばいーくんと喧嘩でもしたのぉ?今日俺らと二之宮チーム一緒なんだからやめてよぉ」
「俺は何もしてねぇ!アイツがいきなりあんな態度になったんだ!」
「あんな態度って?ちょっといーくんに挨拶してくるー」
七海は迷惑そうな顔をしながらそう言って伊織の所へ行った。
俺はこれ以上気にしないように、茜を探した。
茜がいねぇ。
「詩音、茜は?」
「二之宮くんなら裏方に呼ばれて様子を見に行ったよ。もうすぐ戻るんじゃないかな?」
「ふーん」
伊織はあんなんだし、茜といて気を紛らわそうと思ったんだけどなぁ。
「さっき小平くんも言ってたけど、貴哉くんと二之宮くんは今日小平くん達と練習の予定になってるからね。小平くんも実力はピカイチだから分からない事あったらいろいろ聞くといいよ」
「七海ねー。分かった。行ってくる」
まぁ同じ女役だし、七海の事はちょっと気にして見てみるか。
俺は七海の所へ行くと、伊織と話していた。
伊織は俺を見る事なく、七海との話を続けていた。
「で、いーくんは何が不満なのー?秋山が俺に八つ当たりして迷惑なんだけど」
「おいっ!八つ当たりなんかしてねぇだろ!」
近付いて聞こえて来た七海のセリフに、俺は慌てて入って行った。伊織は気にする様子もなく七海に返していた。
「別に、不満がある訳じゃねぇよ?他と変わらず接してるし」
「それがおかしいんでしょ。ねぇ?秋山?」
「知らねー!俺も伊織とは関わらねぇからもういいし!」
「はぁ!?そう言う事言わないでよ!一緒にやりづらくなるじゃん!」
「七海、迷惑掛けないようにするから」
伊織がそう言う態度取るなら俺だってもう話してやんねーよ!何が気に入らねぇのか知らねぇけど、ガキみたいな事しやがって。
そんな険悪な俺達の所に裏方から戻って来た茜が合流した。
「待たせたな。小平、桐原、今日はよろしく頼む」
「うい」
「待ってたよ~!早速始めようか~」
主に七海が仕切って俺達が一緒に演じるシーンの練習が始まった。
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