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2章 球技大会
好きなだけ!?面白そうだな!
しおりを挟む忙しかった演劇部の仕事を終えて、帰ろうと思って玄関で空を待つ。
もうボラ部部室に戻る気も起きないぐらい疲れた。
下駄箱の前に座ってボーッとしてると、目の前に派手な赤い髪が現れた。
「よう貴哉。お疲れ」
「あれ、お前ボラ部戻ったんじゃねぇの?」
「早川に任せた。貴哉と話したくてな♪」
「まるで前の部長みてぇだな」
「なぁ、貴哉。今日貴哉んち行っていいか?」
「ダメに決まってんだろ。てか何しに来るんだよ?」
「イチャイチャしたい♡」
「尚更ダメだ!」
「だって貴哉のあんな姿見たらさぁ~。だから猿野の気持ちも分からなくはねぇよ」
「え、やっぱり変なのか?アレ」
「そうじゃなくて、貴哉の事をそう言う目で見てる奴には刺激的過ぎるって事。白い太ももがガッツリ見えてて、今みたいに足開いて座ったりでもしたら見えちゃいそうな感じとかヤバい」
「変態かよ」
「したい」
「ダメだって。てか空が来るから早く帰れよ」
「貴哉……」
とうとう伊織は悲しそうな顔をした。
それはズルいんだって。
そんな顔されたら俺どうしたらいいか分かんねぇじゃん。
「あのさ、伊織の事は好きだけど、俺は今空と付き合ってんだよ。だから俺は空を優先する」
「分かったよ。しつこくして悪かった」
「ん」
「貴哉がそこまで言うならもう困らせるような事しねぇし言わねぇ。じゃあな貴哉。幸せになれよ」
「お、おう?」
あれ?意外とあっさり引いてったな?
伊織は靴を履き替えて外に出ていなくなった。
しかも最後のあの言い方って何か、サヨナラみたいじゃなかったか?
妙に引っ掛かったけど、その後すぐに空が来たから深く考えるのはやめとく事にした。
「貴哉お待たせ~!帰ろう♪」
「うん」
空の顔を見てたら、笑いながら「何?」と聞かれた。
そして俺は伊織とトイレでした事を打ち明けた。
空に話した理由は隠したくなかったから。同じ傷付けるでも、嘘をついて傷付ける方が嫌だった。
そしたら空は怒ってた。
「何してくれてんだよあの人!しかも学校なんかで!全然反省してねぇな!」
「拒否らなかった俺も悪ぃんだって。それよりもさ、伊織の様子が変だったんだ」
「あの人の心配なんかしなくてもいい!貴哉ももう簡単に許しちゃダメだ!個人的に嫌なのもあるけど、もし誰かに見られてたりしたらどうするんだよ!?また停学になんてなったら嫌だよ!」
「わ、悪かったって。そんな怒るなよ」
「今日は朝からいい事無くてイライラしてんの!貴哉にはテニスの相手に選ばれないし、部活でも部長に仕事押し付けられるし!」
「…………」
そうか。空にもいろいろ溜まってる事があるんだな。俺は伊織の事を考えるのをやめて、空に集中する事にした。
「そう言えばさ、ボラ部も文化祭で催し物やる事になったんだよ。貴哉は演劇部で忙しいだろうから参加は強制しないけど」
「えっ、何やるんだ?」
「なんかね、去年もやったらしいんだけど、野菜の詰め放題をやるんだって」
「何だそれ!?」
「このくらいの袋に好きな野菜を好きなだけ詰めてくんだって。去年それやったら好評だったらしくて、今年もやろうってなったんだ」
「好きなだけ!?面白そうだな!」
「ねー。主婦にウケが良かったらしいけど、俺は子供向けにお菓子の詰め放題とかも面白いかなぁって思ってるんだ」
「それはいいな♪でも野菜もお菓子もどうやって用意するんだ?詰め放題って言うぐらいだから大量に用意するんだろ?」
「野菜は元部長の渡辺さんの実家で出た売れない野菜を使うんだって」
「え、あの人んちって野菜作ってんの?」
「うん。農家やってるんだって。渡辺さんは進学しないで家を継ぐらしいよ」
「マジで!?あ、だからあの人良く花壇とか世話してんのか!」
「意外だよな~。俺農家とか絶対無理だけどなー。虫とか怖いしー」
「お前は向いてねぇだろうな」
「貴哉もだろ。朝早起きしなきゃなんだぜー?」
「そりゃ無理だ」
ボラ部元部長の意外な情報に驚きつつも、野菜の詰め放題とか母ちゃん好きそうだなとか思った。
よし、母ちゃんに教えてやろっと♪
それと、話してて空の機嫌も普通に戻ったみてぇで俺はホッとした。
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