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2章 球技大会
嘘だったら分かってるよな?
しおりを挟む昼休み、空はずっと項垂れながらブツブツ言っていた。
「貴哉が俺を選んでくれなかった……貴哉が俺を選んでくれなかった……」
「うっせーなぁ。別れるって言ってんじゃねぇんだからそれぐらい我慢しろよ」
本当にうるさかったから俺が嫌な顔をしながら言うと、一緒に昼飯食ってた直登と数馬が笑ってた。相変わらず直登が作る弁当は旨そうで、今では数馬の分まで作って来てるらしい。
そういや、この二人もカップルなんだよな。
うん。お似合いじゃん。
「お前ら何かいいよな。見てて安心するわ」
「でしょー?数馬くんがね、意外とやきもち焼きでね~♡もー可愛いのなんのって♡」
「な、直登っ!貴哉に変な事言わないでっ」
「いいですねー。恋人に想われてる貴方達はー。とても羨ましいですー」
「空くん怖いからやめて~。ねぇ、ところで貴哉、ココと話した事あるのー?」
「ココ?誰だそりゃ?」
直登にそう聞かれて、ピンと来なかった。てかココって名前か?何人だよ?
「藤野心だよ~。心って書いて、しんって言うんだけど、ココロとも読むからみんなココロとかココって呼んでるんだよ」
「ココとかしんとかどっちも知らねーわ」
「知らない訳ないじゃん。一緒にテニスやるんでしょー?」
ん?もしかして、元テニス部だって言う球技大会での俺のパートナーの事か!
あいつの名前、藤野心って言うのか!
「名前知らなかった。藤野な!覚えた」
「その様子だと話した事無いんだね。クラスでもココは比較的話しやすい方だよ。いつもボーッとしてて大人しいイメージだけど、普通に話すし成績も良かった気がする」
「ふーん。テニス経験者なら何でもいいけどな。直登は仲良いのか?」
「普通に話すぐらいだよ。クラスのちょっと良いかもって人はチェックしてるから俺」
「藤野……あいつ貴哉を狙ってんじゃねぇだろうな?」
ここでずっと項垂れてた空がムクリと顔を上げて言った。
「それは無いんじゃない?ココはバレーに手を挙げてたし、クラスがまとまらないから名乗り出たんだろ」
「おいっ元テニス部ってのは嘘だったのか!?」
「そうとは言ってないでしょー。俺もそこまでは知らないよ」
「ちょっと聞いてくる!」
「あ、貴哉っ」
これは大問題だぞ!嘘ついたらぶん殴らなきゃいけねぇしな!
俺は藤野に声を掛ける事にした。教室の前の方で数人で話をしている奴らの中にいた。俺が近付くと、気付いたら奴らがジーッと見て来た。
「おい!藤野!お前元テニス部っての本当なのか?」
「え?本当だけど」
「悪いけど、証拠見せてくんね?」
「証拠ぉ?うーん、今は難しいなぁ」
「嘘だったら分かってるよな?」
俺が拳でグーを作りながら言うと、藤野はニコニコ笑ったままだった。周りにいた奴らは焦ってフォローしようとしていた。
「ココ!写真とかないのか?テニスっぽいさ」
「そうだよ!中学ん時のやつとかさ」
「えー、無いよ~?家になら写真はあるけど、わざわざ持ってくるのもなぁ。あ、秋山って二年の二之宮さんと仲良いよな?」
「茜か?仲良いけど」
「二之宮さんなら俺の事知ってると思う。同じ中学で部活一緒だったから」
「何!?茜と一緒だったのか!?」
「うん。あの人世話好きでさ、結構良くしてもらったよ」
何だよ茜の奴!友達いるんじゃん!
んー、茜の知り合いなら藤野も悪い奴じゃないんだろうな。きっと。
「分かった。茜に聞いてみるわ~。んじゃ邪魔したなー」
「あ、秋山コレ!」
「ん?」
俺は席に戻ろうとすると、藤野といた奴がポッキーを渡して来た。
「くれんの?サンキュー♪」
「復帰祝い!秋山がいねぇと教室すげぇ静かでさ、おかえり!」
「……ああ、ただいま」
ポッキーくれた奴におかえりと言われて、一瞬戸惑った。てかこいつ誰だ?名前も知らない奴におかえりって何か変な感じだ。
でも、悪い気はしねぇな。
「あー、俺からも何かあげたいな。球技大会の相棒だし……」
「別にいいよ。くれなくても」
俺とそいつのやり取りを見ていた藤野がポケットとか漁りながら言った。
すると、藤野のポケットから何かがポロッと落ちた。
「あ、何か落としたぜ?」
俺は拾ってやろうとしゃがんで落とした物に手を伸ばす。四角い形で手の平サイズの物は見た事がある物で、真空パックされた中にはリング状のゴムが……ってコンドームじゃねぇか!!
「藤野ぉ!!お前なんつーもん持ち歩いてんだっ!」
「やべ。拾ってくれたのが秋山で良かった~」
「良かった~じゃねぇよ!こんなのセンコー達にバレたらやべーだろ!」
「そうね。気を付けるよ」
コンドームを俺から取って再びポケットに閉まった。その間も顔色変えずにニコニコ笑ってた。
うわぁ、今ので藤野の印象変わったわー。
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