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2章 球技大会
ありがた迷惑ってやつか
しおりを挟む久しぶりの学校の門をくぐり、久しぶりの校舎に足を踏み入れる。
周りにすげぇ見られてるイラッとしたけど、空になだめられながら何とか教室へ辿り着いた。
教室の中は相変わらずな陰キャ達で賑わっていて、球技大会とは無縁な雰囲気が漂っていた。
教室に入った俺に気付いたクラスメイトの一人が「あ」と声を上げると、みんなが一斉に俺に注目する。
もう慣れたけどよ……けど、イラっとするよなぁ。
「テメェらジロジロ見てんじゃねぇ!文句のある奴はかかって来い!相手してやる!」
「貴哉っいきなり何言ってんだよっ!大人しくしろって!」
空にしーっと人差し指で静かにしろと言われたけど、何もしてねぇのに見られて腹を立てない奴なんかいるのか?
機嫌悪くしてると、窓際にいた数馬が駆け寄って来た。
「貴哉!おはよう!」
「おお、数馬。お前もちゃんと学校来てんだな。偉い偉い」
「うん。貴哉復活おめでとう!」
「ん、ああサンキュー」
「もー、復帰そうそうクラスメイトにメンチ切ってどーすんのさ?貴哉らしいけどー」
直登も数馬の後ろから現れた。
おー、何かこの感じ懐かしいなぁ~。
後はあの鉄仮面が……うんうん。この騒ぎの中動じる事無くいつも通り自分の席で本を読んでるな。戸塚も異常無しっと!
「ジロジロ見て来るのが悪ぃんだっ!見せもんじゃねぇっての」
「あ、あの……」
俺がブーブー言ってると、後ろから誰かに蚊の鳴くような声で声を掛けられた。
振り向くとオドオドした瑛二がいた。
「おー!瑛二じゃねぇか!久しぶりだな!」
「秋山くん……俺のせいで本当にごめんなさいっ」
ここで瑛二はガバッと俺に頭を下げて来た。
おいおい!ただでさえ見られてんのに、そんな事したら余計目立つだろ!
これは空から聞いた話だが、瑛二が屋上から写真をばら撒いた事は一部の奴しか知らない事になってるらしい。紘夢が謝罪放送で、自分がやったと言った事で、全ての罪を紘夢が被り、瑛二がやった事はバレてないらしい。
生徒会長と、美化委員にはちゃんと謝ったらしいけどな。
「やめろバカ!その事はもういい!」
「あの、実は……日曜日に一条さんが家に来たんだ」
「紘夢が!?」
日曜日って、俺達が紘夢んちを掃除した次の日じゃねぇか。紘夢は何も言ってなかったけど、何しに行ったんだ?
空も気になったみたいで、瑛二に聞いていた。
「一条さんがどうして倉持んちに行ったんだ?」
「俺を脅して利用した事を謝りに来てくれたんだ。お母さんにも」
「へー、あいつちゃんと考えてたんだな。んで?瑛二は紘夢の事許してやったのか?」
「うん。言う事聞いちゃった俺も悪かったから。お母さんも、一条さんの事を許してたよ」
「そりゃ良かった♪また何かされそうになったら俺に言えよ。あいつをぶん殴ってやるから」
「な、殴るのはダメだよ……それとね、謝罪してくれたのもあるんだけど、一緒にお詫びで持って来てくれた物があったんだけど……」
「あー、一条さんの事だからまた凄いの持ってったんだろ?何貰ったんだ?」
「それが……新品の家具一式を……何でも、一条さんの家で売ってる物らしくて、その中でも最高級の物だよって……」
「家具一式!?あいつ馬鹿だろ!」
「あはは!やっぱり普通じゃないだろ一条さん!」
「倉持、新しい家具なら使い道あるし良かったじゃん。なのに何でそんなに困った顔してんの?」
ここで直登が会話に入って来た。
瑛二はずっとオドオド、何か焦っているような感じだった。まぁいきなり新しい家具あげますよなんて言われたら戸惑うわな。
「えっと、気持ちは有り難いんだけど、家って狭いから、一条さんがくれた家具だと生活するスペースが無くなっちゃうんだ。お母さんも悪いからって断ってとりあえず新しい家具は引き取ってもらったんだけど、どうやら何かをしないと一条さんの気が済まないみたいで……どうしたらいいかなって」
「ありがた迷惑ってやつか」
「それなら家に入るだけにすれば?古くなった家具だけ交換するとかさ。まぁ貰っておいて売っちゃうってのも有りだよね~?高く売れそうじゃない?」
「直登っそれはダメでしょ!」
直登が意地悪そうに言うと、数馬が怒ってた。
そんな事は瑛二はしねぇだろうけど。
でも、紘夢も何かしらをしないと瑛二に対しては示しがつかないんだろうな。
んー、俺なら喜んで受け取るけどなぁ。母ちゃんも喜びそうだし?
瑛二も、瑛二の母ちゃんも喜ぶ物かぁ~。
二人共すげぇ仲良い親子だもんな。
どうせなら二人が嬉しいもんがいいんじゃね?
紘夢は普通の感覚とズレてるから、すぐに手配出来る自分んちの家具を用意したんだろうけど、きっと紘夢なら他にも何でも用意出来るはずだ。
俺なら何を頼む?
母ちゃんも喜ぶ物……
「あ!瑛二!紘夢にこれ頼め!」
「な、何?」
「旅行だ!瑛二と母ちゃんで二人で旅行行け!旅費を紘夢が出す。そんぐれぇ高級家具に比べたら安いもんだろ?」
「旅行か~。いいじゃんそれ!思い出にもなるしね」
「貴哉凄い♪」
「…………」
「旅行……そう言えばお母さん、お父さんいなくなってから仕事ばかりで旅行とかしてない……」
「んじゃ決まりだな!そんでさ、旅行行って帰って来たら紘夢に土産話してやってよ♪あいつそういうの好きだろうからさ」
「うんっ秋山くん、ありがとう!」
やっと見れた瑛二の笑顔。
きっと瑛二の母ちゃんも大好きな瑛二と旅行すれば喜ぶだろ。
これで紘夢の瑛二への罪滅ぼしも完了~ってね!
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