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1章 写真ばら撒き事件

俺も紘夢の事は好きだぜ!気が合いそうだな的羽~!

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 昼になったから勉強を中断して三人で昼飯を食っていた。
 そこへ桃山から電話が来て一緒に紘夢んちの掃除をしないかと誘われた。

 てかあの二人まだ紘夢んちにいたのか。
 電話の向こうで随分楽しそうにしてたけどよ。

 紘夢が誰かと笑って過ごしているって知れて俺は嬉しくなった。


「あー、ほんと紘夢には敵わねぇなぁ」

「あの人いつもめちゃくちゃ過ぎるんだよ」

「でも母ちゃんがいいって言ってるんだし出掛けられてラッキーだろ♪」


 俺は久しぶりの外にドキドキワクワクしていた。
 まだ腰は痛むけど、歩けない程じゃない。ただ走れって言われたら無理なだけ。
 掃除なんて空とかにやらせりゃいいし、何よりなっちがいるんだろ?何して遊ぼう♪


「でも正直助かったかも。貴哉に勉強教えんのすげぇ大変だし」

「所詮その程度って事ですよ。部長は」

「あ?喧嘩なら買うぞ。副部長」

「喧嘩すんじゃねぇよ!的羽って奴が来るから準備しろー」


 午前中伊織に勉強を教えてもらったけど、もちろん何も頭には入ってない。
 まぁ空よりは分かりやすかったかな?
 ここに来て完全無欠の男が崩れて来て、空はご機嫌だった。

 それからうちに高級車が来て、俺達三人はそれに乗り込み紘夢んちへ向かう。
 的羽って男は若そうな感じだった。
 タレ目で緩いパーマ頭の、今時の男。
 一応スーツ着てるけど、この人の場合チャラく見える。ネクタイ締めるの俺並みに下手過ぎだろ。


「お待たせしましたーっと。どなたが貴哉さんです?」

「あ、俺俺」


 名乗り出ると、ペコっと頭を下げられた。
 何か緩い感じの男だな~。
 紘夢の何なのかは知らねぇが、送ってってくれるっつーから黙ってやり過ごす事にした。

 そして的羽は走りながら話掛けて来た。


「俺、的羽って言います。お見知り置きを」

「はぁ」

「ずっと会いたいと思ってました、坊ちゃんの憧れの人に」

「憧れの人?貴哉が?」


 的羽が言う事に伊織が答える。
 俺も驚いた。


「はい。坊ちゃんがヤバい奴なのは知ってます。世話係の面接の時に聞かされましたから。でもそんなのどうでも良かったです。俺が惹かれたのは給料だけですからね」


 その後も勝手に話し続ける的羽。
 世話係を雇うとか、やっぱり一条家は金持ちだな。


「坊ちゃんの世話係になる条件は監視する事でした。一応まだ未成年ですから、下手な事されたら困るんでしょうね。他に条件はありませんでした。家事が出来るとか、何でも言う事を聞くとか、想像してた世話係とは違いました」

「…………」

「初めて会った時、坊ちゃんは俺にこう言ったんです。好きにしていいよ。だから好きにしました。でも飢え死にしちゃったら困るので最低限のご飯は用意しました。それ以外はお互い自由。坊ちゃんが学校でヤバい事してるのも知ってました。でもチクらなかったですよ。だって坊ちゃんはただ遊んでるだけでしたからね。高校生の遊び。それを親に報告する必要あります?はい、無いですよね」

「…………」

「坊ちゃんが学校を辞めるとか言い出したので、それは話そうかと思ってます。さすがに俺が何で黙ってたんだって怒られますからね」

「あのさ、紘夢が辞めるのって無しに出来ねぇかな?世話係なら説得出来ねぇ?」

「俺はただの世話係です。無理ですね。でも貴哉さん、貴方なら出来るでしょうね。だって友達だから」

「そうだけど、みんなから言えば気持ち変わるんじゃねぇか?」

「いえ、坊ちゃんは貴哉さんを望んでます。今は湊さんと茜さんと仲良くなって楽しそうにしてるけど、やっぱり坊ちゃんは貴哉さんなんです」

「……俺も説得してみるけどよ」

「俺、坊ちゃんの事を初めは生意気で嫌な奴だと思ってました。家を追放されて当たり前だとか。でも、坊ちゃんと過ごす内に応援したくなったんです。坊ちゃんは周りが思ってるより悪い子じゃないですよ。俺から見たらただの高校生です。周りと違うのはちょっと他より賢い事と金持ちなだけ」


 的羽は俺達にずっと紘夢の話をして来た。
 この人は紘夢の味方なんだな。
 ちゃんと紘夢の事分かってるし。

 良かったじゃん紘夢。
 ちゃんと本当のお前を見てくれる人がいたじゃん。


「あのー、的羽さんはそう言いますけど、一条さんは結構酷い事しましたよ?学校中が一条さんを恨んでるんじゃないかってぐらい」

「それは坊ちゃん自信が良く分かってますよ。俺も何度も忠告しました。でも坊ちゃんはいつも笑って言ってました。全世界の人間を敵に回してもいい。貴ちゃんに思い出してもらえるなら。ってね。だからいいんじゃないですか?恨まれるぐらい」

「あいつ、そんな事を……」


 バックミラー越しに的羽と目が合った。
 そして笑って的羽のタレ目が細くなった。


「俺、今は坊ちゃんの事好きですよ。だから料理なんてした事ないけど、ナポリタンも作りました。湊さんに言われたのもありますけど、坊ちゃんの為に料理の勉強しようかなと思ってます」

「そうか。俺も紘夢の事は好きだぜ!気が合いそうだな的羽~!」

「貴哉さん、貴方が坊ちゃんに気付いてくれて本当に良かったです。これからも坊ちゃんの事よろしくお願いします」


 的羽はペコリと頭を下げて言った。
 俺はニカっと笑って的羽の肩を叩く。

 そのやり取りを見て俺の両サイドにいた二人が冷ややかな目で見てたけど、俺はその後も的羽と紘夢の話で盛り上がった。
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