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1章 写真ばら撒き事件

今日は大事な用があるからまた今度にするわ

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 俺はベッド、空は床に敷いた布団にそれぞれ寝転がりながら部屋でくつろぎながら紘夢の話をしていた。
 
 空は持って来た寝巻きに着替えていた。

 
「貴哉の話を聞いて一条さんが本当に悪い人じゃないってのは分かった。でも悪い事をして来たのは事実だからなぁ」

「これから良い事してきゃいいだろ。過去は過去、今は今」

「許せない人もいるんじゃないかな?倉持とか一番許せないんじゃない?」

「瑛二はかわいそうだが、あいつも従っちゃったところあるからな。お互い様だろ」

「うわー、貴哉ってば一条さんの肩持つね~。幼馴染だからそんな風に言えるんだよ」

「だってあいつ悪い奴じゃねぇもん。もういいだろ、嫌いな奴は嫌いなままで。それにあいつがどう対応するかだし」

「……まぁいっか。貴哉が俺の事一番大事に思ってくれてるなら」


 空はふふと楽しそうに笑った。
 うつ伏せの体勢で枕に肘を立てて上半身だけ起こしてる状態なんだけど、足をバタバタさせてた。


「そうそう!だからあまりうるさく言うんじゃねぇぞ。伊織にもどっちを選ぶかってなったら空だって言ったんだ。今はそれで十分だろ?」

「え!桐原さんに言ったの!?何て言ってた!?」

「嫌だって駄々こねられて結局それならどちらも選ばなくていいってなったよ」


 伊織が泣いた事は黙っておいてやるか。
 それを聞いた空は体を起こして喜んでいた。


「それすげぇ嬉しい♡俺、桐原さんに勝ったんだ」

「そう言う事。今は付き合ってねぇけどな」

「それは桐原さんの事も好きだからか?」

「……ああ」

「分かった。それなら仕方ないな!ちょっとぐらい我慢すっかー!」

「そうしてくれ。なぁ俺寝ていい?」

「えっ!もう!?まだ21時前だぞ!?」


 正直、連日誰かしら来たりで疲れてるんだよ。
 家にずっと引きこもってるってのもダルいもんだ。
 あと、空には言えねぇけど、伊織とセックスしたからってのもあるけどな。

 欠伸してると、空がベッドの端っこにちょこんと手を置いて覗き込んで来た。


「もっと話してぇよ!貴哉ぁ!」

「明日話してやるよ」

「明日は桐原さんに勉強教わるんだろー」

「ずっとじゃねぇだろ。合間に話そうぜ」

「それって、俺もいて良いって事?」

「当たり前だ。帰りてぇなら帰っていいけど」

「いる!てっきり桐原さんが来たら帰されるのかと思ってたんだよ。ほら、貴哉は俺と桐原さんが揃うのめんどくさがるじゃん?」

「あー、確かに面倒だな。でもいいよ。だってうるさく言った方追い出すし」

「貴哉は桐原さんより俺の方が好きなんだよな?どちらかと言ったら俺を選ぶんだよな?」

「何度も言わせんな。そうだよ」

「分かった!それなら大丈夫♪やったー♡貴哉といられる~」


 喜ぶ空を見てたら何だか俺も笑えた。
 やっぱり空といるのは楽だし、居心地がいい。
 今日来てくれたのも実は嬉しかったりもするしな。空っていろいろ動いてて忙しいのかと思ってたからな。

 ウトウトしてると、俺のスマホが鳴った。
 あー、今机の上にあるんだよなー、取るの面倒くさいな。


「空~、誰からか見て~」

「あー、はいはい」


 言う事を聞く空。こう言うところも好きだ。


「あ!一条さんから電話だよ!」

「まじ?んー、空出て」

「俺ぇ!?さすがに無理っ!」

「んだよっ。じゃあ出てスピーカーにしてくれ」


 俺は目を閉じたまま空に指示した。
 空は俺のスマホを枕元に持って来て言われた通りにしていた。

 すると紘夢の声が聞こえて来た。
 何か楽しそうな、明るい声だった。
 スピーカーにしてるからもちろん空にも聞こえてる。


『貴ちゃーん♪電話ごめんねー!』

「おう。紘夢元気そうだな」

『ちょっと今楽しくてね♪貴ちゃんは何か声遠くない?元気ないのー?』

「眠いだけ。それよりお前学校辞めるってなんだよ」

『え!何で貴ちゃんが知ってるの!?』

「空に聞いた」


 目を開けて空を見るとじっと黙って俺を見ていた。
 そんな良い子な空を見たら笑えた。
 俺はゴロンと体を空に向き直して、こっち来てと手招きをしてやった。

 すると、すぐに寄って来て俺の手を握って来た。


『空くんか~。なるほどね~。うん。辞めるつもりだよ』


 とここで紘夢が話す声とは違う声が聞こえて来た。紘夢の後ろにいるのかその声は遠くて何て言ってるのか聞き取れなかった。


「お前外にいんの?」

『んーん。自分の家だよ……え?ちょっと待って、今貴ちゃんと話してるから』

「ん?」


 紘夢は誰かと話してるみてぇだった。
 俺と空は顔を見合わせて不思議に思っていると、紘夢は言った。


『あのね、今茜ちゃん達が家に来てるんだ。みんなも貴ちゃんと話したいみたいだからスピーカーにするね♪』

「茜が!?」


 意外な奴の名前が出て来てさすがに目が覚めた。
 何で茜が紘夢の家にいるんだ?
 それに茜達って、他にもいるって事だよな?
 
 紘夢が言うように向こうもスピーカーになったみたいで、すぐに賑やかな声が聞こえて来た。


『秋山!俺だ!分かるか!?』

「茜だろ?何で紘夢んちにいるんだよ?」

『ああ、話せば長くなるんだ』

『おい貴哉~。お前も今から紘夢んち来いよ♪お泊まり会すっぞ♡』

「桃山ぁ!?お前までいんの!?」

『貴ちゃーん、今日いろいろあって、茜ちゃんと桃が泊まる事になったんだ。あと少し前まで卯月もいたんだけど、さっき帰っちゃったんだ』

「卯月……演劇部の部長か!」


 どんなメンバーの集まりだよ!
 茜もいるし、話も気になるし、すげぇ行きたかった。
 ここで握られた空の手に力が入ったのが分かった。

 
『貴ちゃんも泊まりに来てー♡的羽に迎えに行かせるから』

「行きたいのは山々なんだけどよ、今日は大事な用があるからまた今度にするわ」

『えー、大事な用って何ー?こんな時間に?』

『あ、分かった。空がそこにいるんだろ?』


 断ると思ってなかったのか、紘夢が残念そうに言うと、次に桃山が言った。
 俺は隠す事なく普通に答えた。


「そう言う事。だから悪ぃけど、話はまたゆっくり聞くな」
 
『早川がいるなら仕方ないな。秋山、後日また話そう』

『残念だけど、貴ちゃんが言うなら。空くんによろしく伝えてよ♪じゃあおやすみ~』


 ここで賑やかな通話は終わった。

 紘夢達との電話が終わった後、まだ黙ったままの空を見ると、今にも泣き出しそうな顔をしていた。
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