88 / 178
1章 写真ばら撒き事件
空の事、誰よりも大事だと思ってる
しおりを挟む夜の19時過ぎに空が来た。
もううちに来ても勝手に上がって来るようになったからわざわざ出迎えには行かねぇ。
バタバタと駆け上がる音がして、空がデカい鞄を持って部屋に入って来た。
一回帰ったのか、私服姿だった。
「おう空。何か久しぶりだな」
「貴哉ぁ~」
俺は机に座ってゲームをしてた。
そして俺の顔を見るなり泣きっ面になって抱き付いて来た。
あ、シャワーしたのかな?
髪良い匂いする。
「会いたかったー!」
「そうかよ。とりあえず荷物置けば?」
俺が言うと、バッと持ってた鞄を適当に捨てて、また張り付いて来た。
こいつは犬かよ……
ちょっと邪魔だったからゲームを辞めてパソコンを閉じて空の方を向く。
「貴哉!桐原さんに何もされてない!?大丈夫!?」
「されてねぇよ。それよりも動画ありがとうな。あいつから連絡ねぇんだけど、どうなったんだ?」
「どうって、俺は一条さんに会ってないから分からないけど、噂ではめちゃくちゃ良い人になってて、髪色も黒になってたって聞いたけど」
「へー、銀髪辞めたんだぁ」
そりゃ一度見てみてぇな。
でもあいつの事だからまた染めそうだけどな。
「で、あいつ学校辞めるって本気なのか?」
「だから俺に聞かれても分かんねぇって」
「なんだよっお前に聞きたい事それだったのに、なら用はねぇよ。帰れ帰れ」
「はぁ!?俺泊まるし!帰らねぇし!」
「いいけどお前床に布団敷いて寝ろよ。一緒には寝ないからな」
「なんか冷たくね!?桐原さんとなんかあったんだろ?」
「なんもねぇよ!疑うんじゃねぇ!追い出すぞ!」
今日伊織とセックスしたなんて言ったら俺もとか言い出しそうだからな。
体は風呂入って綺麗にしたけど、まだ余韻が残ってるし、さすがに腰痛ぇからもう無理は出来ねぇ。
だからあまり空とくっ付きたくねぇんだ。
知られて傷付けたくもねぇし。
俺がキツく言うと悔しそうにしながら床に座った。
「貴哉は俺に会いたくなかったのかよ?」
「はぁ?」
「俺はずっと会いたかったよ。貴哉がいないと寂しいよ……」
シュンとして下を向く空。
んー、少し突き放し過ぎたか?
でも付き合う前とかの俺ってこんなだったんじゃねぇかな?
空といつも言い合って、それでも一緒にいてさ。
「空、俺達付き合ってねぇんだぜ?友達だろ」
「こないだ好きって言ってくれたじゃん。嘘だったのか?」
「……嘘じゃねぇよ」
空の事はちゃんと好きだ。
伊織にもどっちを選ぶかはちゃんと言ったしな。
でもそれとこれとは別。
空を大切にしたいから、今はこうするしかねぇんだ。
「好きだよ。空の事、誰よりも大事だと思ってる」
「貴哉……」
「だから半端なまま寄り戻したくねぇんだよ。じゃないとまた傷付けるからな」
「傷付いてもいいよ。貴哉とまた付き合えるなら、俺……」
「俺が嫌なの!」
「……分かったよ。我慢する」
やっと大人しくなってくれたか。
さっき伊織とヤッてなかったら空とヤッてたのかな。それは分からねぇけど、とりあえずこれで今日は休めるな。
「布団持ってくる……」
「あ、それならクローゼットにあるぜ」
「え?何で貴哉の部屋に布団があるんだ?」
「昨日紘夢が泊まったんだよ。下に持って行くの面倒くさかったからクローゼットに押し込んどいたんだ」
本当は母ちゃんに干しておけと言われたんだけど、やった事にしてそのまま閉まったんだ。
「い、一条さんが泊まった?」
また空は険しい顔し出した。
あー、俺と紘夢の事知らねぇもんな。
話したら何て思うかな?
てか空にはちゃんと話しておかなきゃな。
伊織にも話したように、俺と紘夢の事を空にも話してやった。
昔話から今までの話まで全部。
信じられないと言った顔で聞いていたけど、紘夢の謝罪もあってか嫌な顔はしていなかった。
10
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説
目が覚めたら、妹の彼氏とつきあうことになっていた件
水野七緒
BL
一見チャラそうだけど、根はマジメな男子高校生・星井夏樹。
そんな彼が、ある日、現代とよく似た「別の世界(パラレルワールド)」の夏樹と入れ替わることに。
この世界の夏樹は、浮気性な上に「妹の彼氏」とお付き合いしているようで…?
※終わり方が2種類あります。9話目から分岐します。※続編「目が覚めたら、カノジョの兄に迫られていた件」連載中です(2022.8.14)
[R18]難攻不落!エロトラップダンジョン!
空き缶太郎
BL
(※R18)
代々ダンジョン作りを得意とする魔族の家系に生まれた主人公。
ダンジョン作りの才能にも恵まれ、当代一のダンジョンメーカーへと成長する……はずだった。
これは普通のダンジョンに飽きた魔族の青年が、唯一無二の渾身作として作った『エロトラップダンジョン』の物語である。
短編連作、頭を空っぽにして読めるBL(?)です。
2021/06/05
表紙絵をはちのす様に描いていただきました!
僕が玩具になった理由
Me-ya
BL
🈲R指定🈯
「俺のペットにしてやるよ」
眞司は僕を見下ろしながらそう言った。
🈲R指定🔞
※この作品はフィクションです。
実在の人物、団体等とは一切関係ありません。
※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨
ので、ここで新しく書き直します…。
(他の場所でも、1カ所書いていますが…)
嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....
クラスでバカにされてるオタクなぼくが、気づいたら不良たちから崇拝されててガクブル
諏訪錦
青春
アルファポリスから書籍版が発売中です。皆様よろしくお願いいたします!
6月中旬予定で、『クラスでバカにされてるオタクなぼくが、気づいたら不良たちから崇拝されててガクブル』のタイトルで文庫化いたします。よろしくお願いいたします!
間久辺比佐志(まくべひさし)。自他共に認めるオタク。ひょんなことから不良たちに目をつけられた主人公は、オタクが高じて身に付いた絵のスキルを用いて、グラフィティライターとして不良界に関わりを持つようになる。
グラフィティとは、街中にスプレーインクなどで描かれた落書きのことを指し、不良文化の一つとしての認識が強いグラフィティに最初は戸惑いながらも、主人公はその魅力にとりつかれていく。
グラフィティを通じてアンダーグラウンドな世界に身を投じることになる主人公は、やがて夜の街の代名詞とまで言われる存在になっていく。主人公の身に、果たしてこの先なにが待ち構えているのだろうか。
書籍化に伴い設定をいくつか変更しております。
一例 チーム『スペクター』
↓
チーム『マサムネ』
※イラスト頂きました。夕凪様より。
http://15452.mitemin.net/i192768/
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる