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1章 写真ばら撒き事件

空の事、誰よりも大事だと思ってる

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 夜の19時過ぎに空が来た。
 もううちに来ても勝手に上がって来るようになったからわざわざ出迎えには行かねぇ。

 バタバタと駆け上がる音がして、空がデカい鞄を持って部屋に入って来た。
 一回帰ったのか、私服姿だった。


「おう空。何か久しぶりだな」

「貴哉ぁ~」


 俺は机に座ってゲームをしてた。
 そして俺の顔を見るなり泣きっ面になって抱き付いて来た。
 あ、シャワーしたのかな?
 髪良い匂いする。


「会いたかったー!」

「そうかよ。とりあえず荷物置けば?」


 俺が言うと、バッと持ってた鞄を適当に捨てて、また張り付いて来た。
 こいつは犬かよ……

 ちょっと邪魔だったからゲームを辞めてパソコンを閉じて空の方を向く。


「貴哉!桐原さんに何もされてない!?大丈夫!?」

「されてねぇよ。それよりも動画ありがとうな。あいつから連絡ねぇんだけど、どうなったんだ?」

「どうって、俺は一条さんに会ってないから分からないけど、噂ではめちゃくちゃ良い人になってて、髪色も黒になってたって聞いたけど」

「へー、銀髪辞めたんだぁ」


 そりゃ一度見てみてぇな。
 でもあいつの事だからまた染めそうだけどな。


「で、あいつ学校辞めるって本気なのか?」

「だから俺に聞かれても分かんねぇって」

「なんだよっお前に聞きたい事それだったのに、なら用はねぇよ。帰れ帰れ」

「はぁ!?俺泊まるし!帰らねぇし!」

「いいけどお前床に布団敷いて寝ろよ。一緒には寝ないからな」

「なんか冷たくね!?桐原さんとなんかあったんだろ?」

「なんもねぇよ!疑うんじゃねぇ!追い出すぞ!」


 今日伊織とセックスしたなんて言ったら俺もとか言い出しそうだからな。
 体は風呂入って綺麗にしたけど、まだ余韻が残ってるし、さすがに腰痛ぇからもう無理は出来ねぇ。

 だからあまり空とくっ付きたくねぇんだ。
 知られて傷付けたくもねぇし。

 俺がキツく言うと悔しそうにしながら床に座った。


「貴哉は俺に会いたくなかったのかよ?」

「はぁ?」

「俺はずっと会いたかったよ。貴哉がいないと寂しいよ……」


 シュンとして下を向く空。
 んー、少し突き放し過ぎたか?

 でも付き合う前とかの俺ってこんなだったんじゃねぇかな?
 空といつも言い合って、それでも一緒にいてさ。


「空、俺達付き合ってねぇんだぜ?友達だろ」

「こないだ好きって言ってくれたじゃん。嘘だったのか?」

「……嘘じゃねぇよ」


 空の事はちゃんと好きだ。
 伊織にもどっちを選ぶかはちゃんと言ったしな。
 
 でもそれとこれとは別。
 空を大切にしたいから、今はこうするしかねぇんだ。


「好きだよ。空の事、誰よりも大事だと思ってる」

「貴哉……」

「だから半端なまま寄り戻したくねぇんだよ。じゃないとまた傷付けるからな」

「傷付いてもいいよ。貴哉とまた付き合えるなら、俺……」

「俺が嫌なの!」

「……分かったよ。我慢する」


 やっと大人しくなってくれたか。
 さっき伊織とヤッてなかったら空とヤッてたのかな。それは分からねぇけど、とりあえずこれで今日は休めるな。


「布団持ってくる……」

「あ、それならクローゼットにあるぜ」

「え?何で貴哉の部屋に布団があるんだ?」

「昨日紘夢が泊まったんだよ。下に持って行くの面倒くさかったからクローゼットに押し込んどいたんだ」


 本当は母ちゃんに干しておけと言われたんだけど、やった事にしてそのまま閉まったんだ。
 

「い、一条さんが泊まった?」


 また空は険しい顔し出した。
 あー、俺と紘夢の事知らねぇもんな。
 話したら何て思うかな?
 てか空にはちゃんと話しておかなきゃな。

 伊織にも話したように、俺と紘夢の事を空にも話してやった。

 昔話から今までの話まで全部。

 信じられないと言った顔で聞いていたけど、紘夢の謝罪もあってか嫌な顔はしていなかった。


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