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1章 写真ばら撒き事件

ナイトォ?

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 処分が出るまでは家にいなきゃなんねぇみてぇで、帰ろうと一人で門まで歩く。
 こんな時間に帰るのは久しぶりだから変な感じだな。まだ昼前だってのに、家に食うものあるかな?母ちゃんも家にいねぇだろうしなぁ。
 
 一学期の途中までは遅刻、早退、休み、サボり当たり前にしてたけど、今じゃ遅刻一回でもしたらアウトだもんなー。ん?アウト……なんだよな?
 あれ?今日とかもう帰るけど、どんな扱いになるんだ?授業にも出ねぇし、担任は何も言ってなかったけど……まぁ担任がなんとかしてくれっか~!

 そんな事を考えながら歩いていたらいきなり目の前にデカい黒い影が、通り過ぎようとした木の横から大きな声を出して現れて声を出して驚いちまった。


「悪い子はいねぇがー!」

「っウギャアァァ!!」


 驚かされて本気で驚いてると、それを見てケラケラ笑う影の主は、なんと桃山だった。
 なんなんだこいつはよぉ!今は授業中だし、こんなとこに人がいる訳ないと油断したぜ!


「テメェいきなりなんなんだよ!」

「あひゃひゃ♪いや、外歩いてたら貴哉が見えてさ~♪あー面白れ♪」

「外歩いてたらって……」


 良く見たらこいつ、上履きのままじゃねぇか。マジで何してたんだよ?怪しすぎるだろ。
 あらかた笑った後、目尻に残る涙を拭きながら桃山に聞かれた。


「なぁ、帰んの?」

「そうだよ。これから自宅謹慎だと」

「謹慎ー?へー、いーくんも?」

「おう。処分が決まるまではな」

「いつまでー?」

「だから処分が決まるまでだって!」

「処分って何ー?貴哉達何したの?」

「お前と話してるとガキと話してるとみてぇで疲れるな!」

「貴哉に言われたくねぇよ♪アハハ~」

「不純同性……なんとかって言ってたな。良く分かんねぇけど、うちの高校そういうのダメなんだと。だからお前らも気を付けろよ~」

「へー、初耳~♪でも寂しくなるなぁ二人に会えなくなるなんて」

「……本当に思ってるのか?」


 相変わらずマスクのせいで目元しか見えないから、こいつの感情を読み取るのは難しい。今はニッコリ笑ってるみてぇだけど、俺は桃山の言う事を疑いたくなった。


「寂しいに決まってんだろ~。大好きな二人にしばらく会えないなんてさ~。茜が心配してたぞ。何かしてやれる事ないかってずっと悩んでるんだ」

「茜……家着いたら連絡するって言っておいてくれよ」


 茜の名前が出て無性に寂しくなって来たな。茜だけじゃねぇ、空や直登達にもまだ連絡してねぇし、心配してんだろうなぁ。
 俺達の事は担任辺りから聞いて知るだろうけど、家に着いたらちゃんと俺から連絡しとこっと。


「貴哉ー♪俺達もやれる事やって待ってるから、早く戻って来いよな♪」

「……おう!」


 俺はいつも通りの桃山に、今日は感動していた。
 会議室に入ってから他の生徒と顔を合わせる事が無かったからか、こうして同じ制服を着て普通に話してくれる奴がいるって事にとても嬉しく感じた。
 

「そんじゃ俺も戻るかな~!ん?」


 俺の横を通って校舎の方へ向かおうとする桃山が何かに気付いて横でピタッと止まった。
 まだ何かあるのかと横にいる桃山を見上げると、マスクをずらしてニヤリと笑っていた。
 うっ突然イケメン!!


「どうやらナイトの登場みたいだせぇ?まじかっけーなぁ♡」

「ナイトォ?」

「送ってってもらえよ♡お姫様♡」


 俺の肩をポンって叩いて、そんなふざけた事を言い残して歩いて行く桃山の後ろ姿を見てると、その奥からこちらに近付いてくる人影が見えて、俺の心はキュッとなった。
 遠くからでも分かるあの目立つ赤髪は伊織だった。
 伊織も帰るのかこちらに近付いて来る途中で桃山とすれ違って何かを話しているように見えた。


「いーくん、しばらく会えないんだって?俺寂しくて泣いちゃうぜ」

「お前、貴哉に変な事してねぇだろうな?」

「してねぇよ♪これでも俺二人の事応援してんだ。じゃあな伊織」


 すれ違う二人から聞こえて来た会話に、俺はやれやれと思って伊織を待つ事なく歩き出す。
 すると伊織は小走りで寄って来て俺の横に並んだ。
 自然と二人で帰る事になった。


「貴哉ー♡待っててくれたのかー?」

「ちげーよ。桃山に捕まってたんだ」

「あいつも自由過ぎるよな。まるで貴哉みてぇで憎めねーわ」

「俺みてぇってなんだコラ」

「柴ちゃんに本当の事話したぜ。俺と貴哉は相思相愛で、合意の上でやったって認めた。そしたら泣きながら本当の事を話してくれてありがとうって。柴ちゃんも変な先生だよなぁ」

「そう言う割には嬉しそうじゃん♪でも柴先みたいなセンコーもいるんだな」

「去年からこの高校に来た新任だぜ。真面目だけど、抜けてるとこあって面白いんだ。面白いと言えば貴哉、会議室での発言、ふざけてるだろ?笑うの堪えるの大変だったんだからな」

「ふざけてねぇよ。俺は思った事しか言わねーもん。ふざけてんのはバーコードだ!あいつ俺の事が嫌いだからあんな風に怒鳴るんだ!」

「バーコード……なぁ、貴哉。昨日からずっと避けててごめんな。貴哉の為にとか言ったけど、本当は自分のせいで貴哉を辛い目に合わせたのが嫌だったんだ。貴哉の事は守らなきゃいけないのに、ピンチにさせてどうすんだよって、情けなくなった」

「もういいよ!絶対許さねーって思ってたけど、ちゃんと話してくれたから許す」

「良かったぁ♡あーもう貴哉不足だったんだぜぇ!貴哉を突き放したのは俺だけど、ずっと心配だったし、会いてぇし、ぎゅーってしてぇし、セックスもしてぇし!」

「お前、今それを大声で言うなよ……なぁ、処分ってどれぐらいで出るんだ?てか処分って何?なんか嫌な響きだけどよ」

「簡単に言うと、この件での罰だな。軽いのは反省文とかじゃね?一番最悪は退学だろうな」

「退学!?まじかよ!ヤバいじゃん!母ちゃんに殺される!」

「今回のなら退学はないだろ。なっても停学じゃん」

「いやいや、停学もマズいって!俺今出席日数ヤバいから、休めねぇんだよ!」

「うーん、俺も停学とかなった事ねぇから分からねぇけど、確か懲戒処分で停学になった場合は欠席扱いにならなかった気がするぜ?心配なら玉ちゃんに聞いてみろよ」

「玉山に電話してみる!何が何でも俺を進級させろって!」

「脅してどうすんだよ……貴哉らしいけど」


 慌てて担任に電話してるのを横で楽しそうに笑う伊織。
 一難去ってまた一難とはこの事だな!
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