上 下
111 / 116
本編

怒ってるいーくんも素敵〜♡

しおりを挟む

 それから二人とファミレスに入り浸り、いろいろな話をして過ごした。ここに来る前にイライラしていた俺はすっかり落ち着いて今では二人と笑いながら話せている。
 

「はぁ、明日からまた学校か~。ダルいなぁ」

「それな。茜とクラス同じだったら良かったのに」

「俺は秋山に会えるから学校楽しみだぞ」

「お前って本当俺の事好きだな」

「当たり前だろ。秋山は可愛い後輩だし、一番の友達だからな♪」

「嬉しい事言ってくれるねー。てか茜って普通に良い奴だよな。周りともこうして話せば仲良くなれんじゃね?」

「ならなくていーし。茜は俺だけでいーの」

「ところで、秋山さっきからスマホをチラチラ見てるけど、予定があるのか?」

「へ!?嘘!俺そんな見てた?」


 やべ。無意識に見てたみてぇだな。
 一応空から連絡来るかもだし気にはしてたけどよ。てかシカトしたままとか明日から気まずいじゃんよ……


「あれだろ?早川から返事待ちだろ?それかいーくんからの待ってるとか。てか電話してみろよ」

「やだ!出なかったらムカつく!」

「でも明日から学校だぞ?秋山がいいなら無理強いはしないけど」

「そうだけど、シカトされてるし俺からはちょっとな……」

「そのシカトっての許せねぇな。付き合ってんだったらそれはダメだろ。貴哉俺が掛ける。スマホ貸せ」

「貸す訳ないだろ!いいよ。空がそういうんなら俺はそれで」


 正直、時間が経ってるのもあって空と会って話す事が怖くなっていたのもある。
 伊織からはあれから毎日ちょこちょこ連絡は来てて、まだかまだかと毎回告白の催促をされていた。それはまだいい。問題は明日の朝だ。


「はぁ、俺起きられるかなぁ」

「ああ、早川が学校がある日は毎朝迎えに行ってるとか言ってたな」

「そうなんだよー。俺遅刻出来ねぇからさ、起こしてもらってたんだけど、明日来てくんねーかもじゃん?目覚ましじゃ意味ねぇし」

「それならいーくんに迎えに来てもらえばいいじゃねぇか」

「伊織にぃ?」

「貴哉から頼めば喜んでやるだろ。なぁ?茜」

「ああ、それは名案だな。一応早川にも連絡しておけばいい。明日からは桐原に頼むからってな」

「嫌ならすぐに返事してくるかもだしな!よし、貴哉、まずはいーくんに電話して迎えの予約しろ。そしたら早川だ」

「でもあいつんち遠いんだよなぁ……やってくれっかなぁ」


 ここで二人がニヤニヤし出した。俺また余計な事言ったか?


「いーくんち知ってるとか怪しくね?絶対今回以外でもヤッてるだろ」

「ああ、二人なら無くは無いな」

「黙れ!伊織に電話すりゃいいんだろ!」


 半ばヤケクソで伊織に電話してみた。するとすぐに出てくれた。


『貴哉ー♡ちょうど俺も電話しようと思ってたんだぁ♡』

「へー、なんで?」

『夏休み最後だし、会いたいなぁって。なんかしてた?』

「茜達と飯食ってた。それより伊織に頼みたい……」

『なんだよそれー!どーして俺は誘ってくれねぇんだよ!てか達って誰?他に誰がいんの?』

「え、茜とー……桃山だけだけど」


 二人を交互に見て言うと、伊織は電話の向こうで何かをしているようなバタバタした音が聞こえてきた。


『分かった。どこで飯食ってんの?俺も行くから教えて』

「は?ちょ、来なくていいって」

「いーくんくんのー?やったー♪」

『場所は桃山に聞くわ。じゃあな貴哉♡』


 一方的に電話を切られて俺はボーッとしていた。
 すぐに桃山のスマホはピロン♪と鳴って桃山は笑顔になった。


「いーくんからだぁ♪」

「良かったな秋山」

「良くねぇだろ。はぁ」

「どうしてだ?会いたくないのか?」

「……気まずいじゃん」

「俺達もいるんだし、いつも通りにしたらいいだろ。今日の秋山は元気なかったから桐原に癒してもらえって」

「そうそう♪愛の力で元気いっぱい♡」


 桃山は伊織が来る事で浮かれているのか、マスクをずらして隣に座る茜のほっぺにチュッとキスをした。


「湊!こういう所では辞めろって何回も言ってるだろ!」

「だって茜が可愛いくて♡」

「お前らって本当仲良いよなー」

「貴哉もして欲しいのか?んじゃしてやるよ♡」

「こっち来るな!おい茜!止めろ!」


 マスクをずらしたまま俺の空いてる隣の席に座って近寄って来る桃山。こいつ本当イケメンだなぁ!って、そんな事言ってる場合じゃねぇ!
 こんな人が大勢いる所で、しかも桃山に!そんな事されたくねぇ!


「俺ドリンク取って来る」

「あ!桃山を押し付けやがったな!」

「茜は俺の味方なのー♡貴哉にチューとか初めてで嬉しいー♡」

「ぎゃー!彼氏いるのに何してんだてめぇ!」


 俺の抵抗も虚しく、桃山に取り押さえられて俺のほっぺを奪われた。軽くチュッてされながら思うけど、こいつ力強すぎん?なんかいつかの直登を思い出すわ!

 どうにかして逃げようともがいている所に、桃山越しに見えた男を見て俺は血の気が引いた。そこには笑顔だけど、めちゃくちゃ怒ってる伊織が立っていたんだ。


「マジで何してんのかなー?桃山ー?」

「あ♡いーくんだぁ♡」

「とりあえずここじゃ迷惑になるから外出ようや」

「怒ってるいーくんも素敵~♡」


 伊織は本当に桃山を連れて店を出て行ってしまった。残された俺は飲み物を持って戻って来た茜と苦笑いを浮かべた。


「秋山、俺達も行こうか?」

「そうだな。桃山のフォローしてやんねぇとな」


 思ったより早く登場した伊織に、桃山を救出する為急いで会計を済ませて二人の後を追った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

早く惚れてよ、怖がりナツ

ぱんなこった。
BL
幼少期のトラウマのせいで男性が怖くて苦手な男子高校生1年の那月(なつ)16歳。女友達はいるものの、男子と上手く話す事すらできず、ずっと周りに煙たがられていた。 このままではダメだと、高校でこそ克服しようと思いつつも何度も玉砕してしまう。 そしてある日、そんな那月をからかってきた同級生達に襲われそうになった時、偶然3年生の彩世(いろせ)がやってくる。 一見、真面目で大人しそうな彩世は、那月を助けてくれて… 那月は初めて、男子…それも先輩とまともに言葉を交わす。 ツンデレ溺愛先輩×男が怖い年下後輩 《表紙はフリーイラスト@oekakimikasuke様のものをお借りしました》

どいつもこいつもかかって来やがれ 5thのその後

pino
BL
どいつもこいつもかかって来やがれ5th seasonのその後の話です。 秋山貴哉は口悪し頭悪しのヤンキーだ。無事文化祭をやり遂げたけど、実はまだやり残した事があった。 二年でフェミニンな男、小平七海との約束を果たす為に遊ぶ約束をするが、やはりここでも貴哉は遅刻をする事に。寝坊しながらも約束通りに七海と会うが、途中で貴哉の親友で真面目な性格の二之宮茜と、貴哉の元彼であり元チャラ男の早川空も合流する事になって異色のメンバーが揃う。 他にも貴哉の彼氏?桐原伊織の話や元チャラ男の早川空の話もあります。 5thの新キャラ、石原類、浅野双葉も登場! BLです。 今回の表紙は褐色肌キャラの浅野双葉くんです。 こちらは5th seasonのその後となっております。 前作の続きとなっておりますので、より楽しみたい方は、完結している『どいつもこいつもかかって来やがれ』から『どいつもこいつもかかって来やがれ5th season』までを先にお読み下さい。 貴哉視点の話です。 ※印がついている話は貴哉以外の視点での話になってます。

一人の騎士に群がる飢えた(性的)エルフ達

ミクリ21
BL
エルフ達が一人の騎士に群がってえちえちする話。

処理中です...