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本編
※那智は歩く爆弾だ
しおりを挟む※伊織side
しばらく二人とバッティングセンターの涼しい所で待ってると、一人の若い男が入って来た。
そいつは黒髪でキャップを深く被って顔を隠すようにしていた。黒のデカいTシャツに足首が出る丈のブルーのGパン。一見普通の高校生っぽいけど、何故か俺はそいつの事を目で追ってしまった。
するとそいつがつばから目を覗かせてこちらをチラッと見た。
「あ」
「げっ!」
目が合ってお互い小さく声を漏らした。
そいつは貴哉だったんだ。向こうは気まずそうに顔を引き攣らせてたけど、俺は会えた事が内心嬉しくて仕方なかった。
「おー!秋山ー!こっちだこっちー」
「おいなっち!伊織がいるなんて聞いてねぇぞ!」
「俺もいるよーん♡」
急足で俺達に近付いて来て、バンっとテーブルを叩いて那智に言う貴哉。いつもの貴哉だ!俺は嬉しくてニヤけてしまった。
「言ってねーもん。てか俺に誘われたら二人もいると思え!あはは!」
「くそっ……おい、何笑ってんだよ」
「いや、いつもの貴哉だなって」
「あっそ。なっち、打たねーのか?」
「お、やるやるー♪秋山勝負しようぜー!」
「望むところだ!」
貴哉は那智と仲が良い。きっと似た者同士気が合うんだろ。二人はノリノリで外に出て行った。
てか那智の奴、貴哉を呼んだ理由忘れてねーだろうな?
「俺達も見に行こうか♪賑やかなのって楽しくていいよねー」
「あの二人が揃うとうるさ過ぎるけどな」
二人に付いて行く怜ちんの後を追うように俺も立ち上がった。
まだ貴哉と話すのはぎこちない感じはするけど、俺がいるって分かっても帰らないでいてくれたのにはホッとした。
貴哉はただ純粋に那智と遊ぶ為に来ただけかもだけどな。
バッティングエリアに入ると既に二人はそれぞれのコートに入って構えていた。
俺は怜ちんが座ってるベンチに座る。
「貴ちゃんてバッティングできるのかなぁ?」
「さぁ、水泳は得意みたいだけどな」
「嘘!意外なんだけどっ!俺泳げないからなんか悔しい!」
「俺も驚いた。あいつ運動音痴そうなのにな」
そう思うのは貴哉の見た目だ。いつも怠そうに、面倒くさがってるイメージがあるから、スポーツとかやらないだろうって思ってしまう。
興味があったから貴哉のバッティングを見てたら綺麗なフォームでバットを振って綺麗な音を鳴らして飛んできたボールを向こう側のネットまで飛ばしていた。
めちゃくちゃ上手いんだけど!
「惜しいなー!ホームランの板まであと少しだったのに!」
「秋山やるなぁ!俺も負けねぇぞ!」
「なっちの本気が見てみたいっ♪」
隣にいる那智を茶化すように口ずさみながら次のボールが飛んでくるのを構えて待つ貴哉。
その後ろ姿に見惚れていた。
貴哉、どこまでも俺を夢中にさせてくれるな。
こりゃ辞められねぇわ。
「ふふ、いーくん良い顔になって来たね♪」
「んー、まぁな。俺やっぱ貴哉が好きだわ」
「だろうね。俺はさ、いーくんが幸せならそれでいいから。これからも良い事も悪い事も全部話してよ。俺と那智くんで聞いてあげるから♪」
「お前ら最高。うし!俺も貴哉にかっこいいとこ見せてやるか!おーい、那智ー!次変わってくれー」
「やっといつものいーくんに戻ったか!いいぜー♪なぁ、秋山!いーくんってこんなんだけど、ちゃんと見ててやってよな!結構繊細で支えてあげねぇと崩れちゃう時あんだ!そんないーくん見たくねぇからさ!俺達がいない時は秋山が支えてやってくれよな!」
「な、なっち?何言ってんだよ……」
「だぁー!クソ脳筋が!余計な事言ってんじゃねー!」
正に那智は歩く爆弾だ。何も考えずに物事を話すこいつには迂闊な事は喋れない。
でも今回は励まされたかな。こんな形で何よりも嬉しいプレゼントをくれたんだからな。
まだ終わってない那智をコートから引きずり出してバットを構える。
横のコートにいる貴哉は俺を見ていた。
そして飛んできたボールを思い切りバットを振って飛ばしてやる。
さっきまであんなにスカってたのが嘘みてーに気持ち良い音を鳴らす事が出来た。そして凄い勢いで飛んでった球は貴哉が一生懸命狙っていたホームラン扱いになるボードに当たって派手な音が鳴った。
「伊織すげー!一発じゃん!」
「当たり前だろー?俺を誰だと思ってんだ♪」
貴哉から褒められてテンション上がりまくりの俺。やっぱ貴哉といるの好きだわ。
その後も四人でバッティングを楽しんで帰りに近くのファミレスで飯食って行く事になった。
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