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本編

可愛い寄りのかっこいい

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 トイレで桃山に浴衣を直して貰って、やっと四人揃う事が出来た。相変わらずな桃山に俺と茜は疲れてたが、空は楽しそうにしてた。
 それを見たら空が楽しいならいっかとか思っちまったよ。


「桃さん、バンドやってるんですねー。ギターですか?」

「んーん。ドラム。でも楽器は一通り出来るよ。なに、空もやってんの?俺ヘルプだけどね」

「俺はやってません。兄貴の知り合いが昔やってたから見に行った事はありますよ」

「へー、空ってああいうの平気なんだ。茜は苦手だからって見に来てくんねーんだよ」

「いいじゃん。今度三人で見に行こうぜ。歌は歌わねーの?」

「あんま歌わないかなぁ。歌うの好きだけどな」

「秋山、こいつらのバンドってめちゃくちゃうるさいんだぞ?パンクロックってやつだ」

「俺聞いた事ねぇけど、かっこいいんだろ?楽しそうじゃん」

「楽しいぞー♪歌って踊って暴れて最高ー♪」

「茜さん、苦手なら後ろで立って見てればいいんですよ。音はどうにもならないですけど、嫌ならすぐ外に出ればいいし」

「それでもいいのか?湊の話だと、観客は暴れてるって、酷い時は倒れる人もいるそうだ」

「熱狂的な人がいるんですね。貴哉にも危ない思いさせたくないし、一緒に安全なところで見てましょうよ♪」

「俺って人気だからなー。それより何か食ってかね?それとも現地まで我慢するー?」

「食う!腹減ったぁー!」


 駅の中を歩きながらそんな話をしていた。今日は数カ所で祭りがあるみたいで、俺達の他にも浴衣を着た人達がいて、もう自分の浴衣姿にも慣れた。空のカッコ良さにはまだドキッとする事はあるけどな!

 俺達は駅の中のカフェに入って少し腹ごしらえして行く事にした。


「早川、イメチェンしたんだな。バッサリいったなー。印象変わったよ」

「それ俺も思った。ちょーイカしてんじゃんその髪型」


 バカップルに褒められて照れる空。そうだろう?俺の自慢の彼氏だからな。彼氏が褒められるのって気分良いな。


「でもそれ痛くないのか?普通の三つ編みとは違うみたいだが」

「普通に編み込んであるだけなんで痛くないですよ。茜さんもやってみます?」

「茜!やるなら俺がやってやるぞ♡」

「俺はこのままでいい!髪をいじるな湊!」


 桃山がノリノリで茜の髪をいじろうとすると、バシッと手を弾いて本気で嫌がってた。
 相変わらずだなこの二人は。

 俺は運ばれて来たカツサンドを頬張りながらそんな二人を見ていた。
 すると、隣から視線を感じて見てみると、空がアイスコーヒーを飲みながら俺を見てた。
 

「貴哉、美味しい?」

「美味いよ……あんま見んなよ……」

「だって可愛いんだもん♡」


 やばい。今日の空はイケメン過ぎる。俺って長い髪より短い髪のが好きなのか。自分のタイプとか気にした事ねぇけど、髪切った空にこんなにドキドキするんだからそうなんだろうな。


「貴哉って可愛いよな~♡だから早く茜とイチャイチャして欲しいんだけどさー、なぁ空からも言ってやってよ」

「何言ってるんですか桃さん。暑さで頭やられました?」

「いや、残念だけどこれが桃山の正常運転だ」

「空、湊の事はスルーしてくれて構わないからな。ほら、ホットサンド来たからお食べ」

「だってさー、可愛い同士がちちくり合ってるのヤバくね?ほら、空も想像してみ?」

「……いやいや、貴哉が他の人となんて想像もしたくありませんっ」

「空、一瞬想像しようとしただろ?」

「ちょっと危なかったよ!でもしなかったから♡」

「それと、俺はかっこいいがいいんだ!可愛いって言うんじゃねぇ!」

「あー、はいはいかっこいいよ貴哉は可愛い寄りのかっこいいな」

「可愛い寄りのかっこいい。分かるかも」

「俺は本当に秋山はかっこいいと思うぞ!」

「茜だけだな俺を分かってくれてるのは」


 だんだん空が桃山に汚染されてく気がするけど、茜を味方に付けときゃいい。何だかんだ桃山は茜には逆らえねぇからな。

 さて、腹ごしらえが終わったらいざ祭りの会場へ出発だ。しばらく電車に乗って行くらしいんだけど、空とは初めて乗るからこれも楽しみだったんだ。
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