68 / 116
本編
何で俺とじゃコンビニ行けねぇの?
しおりを挟む空を引っ張って俺の部屋に連れて行き、思い切りぎゅーってしてやった。
あー、やっと二人きりになれたぜー。
空も腕を回して優しく抱き締めてくれた。
「貴哉、珍しいな。ちょー可愛いんだけど♡」
「んー、かっこいいじゃねぇの?」
「貴哉は可愛いだろ」
「まぁいっか。なぁ、今日待たせて悪かったな」
「ほんと遅すぎだろー。凛子さん達と楽しかったからいいけどさ」
「母ちゃんに俺の話何聞いた?」
「いろいろ聞いた♡凛子さんて本当貴哉の事大好きだよな」
「俺と母ちゃん見てみんなそれ言うけどさー、親なら子供好きなの当たり前じゃね?」
「……俺んちは違う。俺はあんなに愛された事ないから羨ましいよ」
空は笑顔だったけど、声のトーンが落ちたのが分かった。前に少し聞いたけど、あまり仲良くないらしいな。空の母ちゃんだし、気にはなるけど……
「今度会わせろ」
「はぁ?いやいや、会わなくていいよ」
「何で?卒業したら同棲すんだろ?挨拶しとく」
「まだ早いだろ。気持ちは嬉しいけど、本当に俺の母さんはちょっと……てか貴哉に会わせて嫌われたくねぇし」
「俺が空を嫌いになる?めちゃくちゃ厳しい母ちゃんなのか?俺の母ちゃんより?」
「厳しいとかはねぇよ。むしろ逆で、ずっと放置されて来た。あんな風に家族で撮ったアルバムなんてねぇし、人に話せる思い出も何もない」
「……そっか。しつこくして悪かったよ。なぁ兄貴は?会わせてくれるか?」
「ああ、兄貴なら。てか兄貴が貴哉を連れて来いって言ってたんだ」
「俺の事話したのか?」
「うん。付き合ってる事も知ってる。何か兄貴が前に男と付き合って良い思いしなかったから心配してんだよなー」
「ふーん。俺達なら大丈夫だって見せ付けてやろうぜ」
俺はベッドに移動しながら空に言ってやった。
俺もその内弟が出来るかもしれねぇからな、兄貴ってやつを勉強しなきゃだからちょうど良い。
空も俺の横に座ってほっぺにキスして来た。
「貴哉ってば兄貴の前でこういう事出来んの?」
「キスする必要はねぇだろ」
「見せ付けるんだろー?」
「んー、そういう見せ付けるじゃなくて……」
見てるだけで仲良しですって分かるようなとこを見せてやりてーんだよなぁ。そう、茜達みたいなバカップルみてーに。
あ!茜達と週末祭り行くの言わなきゃだった!
「空!今週末空いてるか!?祭り行こーぜ♪」
「いきなりだな!いいじゃん♡行こうぜ」
「実は茜達に誘われたんだ。ダブルデートしようって」
「ダブルデートか。あの人達となら楽しそうだな♡」
「んじゃ土曜日空けといてな♪」
「りょーかい。なぁ貴哉……」
「ん?」
無事祭りに誘う事が出来て満足した俺は、ベッドに寝転がると、空が上に乗って来てキスされた。
空の長い髪が垂れて顔に当たってくすぐったかった。
「そ、ら……んっ」
「貴哉♡イチャイチャするんだろ♡」
「おう……」
「てか貴哉だけ風呂入ってズルいんだけど。俺もシャワーぐらい浴びたかったな」
「入ってくれば?何なら泊まってけばいいじゃん」
「いいの?」
「もう時間も遅いし。てか空が風呂入ってる間にコンビニ行ってくる。何か欲しい物あるか?」
「え、それなら俺も一緒に行く」
「いや、一人でいいし」
「何それ?怪しくね?」
「怪しくねぇよ。ほら早く風呂入って来いって」
「何で俺とじゃコンビニ行けねぇの?」
あちゃー、すっかり怪しまれちまったな。実はローションが欲しかった俺。空とイチャイチャしたらヤリたくなるだろうからあのヌルヌルする液体を買いに行きたかったんだ。
んー、もう空と買いに行っちゃうかー。
「うるせぇなぁ。ローション買うんだよ」
「ローション?えっ貴哉、ローションって何の事だか知ってるの?」
「知ってるわ!ヌルヌルするやつだろ。空を傷付けたくねぇから使った方がいいだろ」
「んんん?待て待て。いろいろ突っ込みたいけど、順番に行くわ。まず、ローションをどこで知った?」
「あ?そんなの伊織に……あ」
「桐原さんね。だと思った」
普通に答えちまったけど、やべーよな。これから空とするかもしんねぇのに、他の男とヤッた話なんて。空は笑ってるけど、すげー我慢してるのが分かる。
「悪かったよ……」
「ふぅ。すげぇムカつくけど、終わった事だから」
空怒ってるよー。これじゃイチャイチャどころじゃなくね?どうすれば空の機嫌良くなるかなぁ?ダメだ!思いつかねぇ!
そもそも俺が人の機嫌を取るなんて出来る訳がねぇ。もう何も考えずに、普通にしたい事を、空をギュッて抱き締めて俺からキスしてやった。
「……空、怒らないでくれよ。もう空だけだから」
「貴哉ぁ♡……怒ってねぇよもう!そんな事言うとか可愛い過ぎるだろー!よし!一緒に買いに行くぞローション!てかコンビニに売ってねぇだろ。ドラッグストア行くぞ」
「コンビニにないのか?てか空も知ってたんだな、ローション」
「……男なら知ってんじゃね?それともう一個突っ込みてーんだけど、貴哉が挿れんの?」
「おう♪俺、そっちは初めてだからやってみてーんだ♡」
「貴哉の初めてとか欲しい!いや、でも絵的に俺が挿れるべきじゃ……あ、これは雰囲気で決めるかー♡」
やっぱり男だからそっちもやってみてぇんだ。
俺と空はチャラ男号で最寄りのドラッグストアまで最速で向かった。
10
お気に入りに追加
41
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?
ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる