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本編

ほらピーマン食べてみなさい

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 風呂から上がると、食卓には母ちゃんと父ちゃん、そして俺の部屋着を着た空が仲良く焼肉してた。


「って空、何俺の服着てんだよっ」

「私が出したんだよ。貴哉が帰って来るの遅いから制服のままじゃ可哀想だろ?」

「凛子さん優しい~♪美人だし、俺もこんな母さん欲しいな~♡」

「本当に良い子だね空はー♪早く酒が飲める歳になんな!美味しい店連れてってやるから♪」

「空くん!人の妻を口説かないでくれるかな!?」

「父ちゃん、目が笑ってねぇから」


 母ちゃんは俺と空が酒飲んでる事を知らない。知られたら殺される。俺の母ちゃんはそういうのはうるさい。中学の時、金髪に染めた事があるけど、そん時撲殺されるって思うぐらい殴られた。それも庭で。たまたま帰って来た父ちゃんが止めてくれたから良かったけど、それから俺はずっと黒髪のまんま。空とか着けてっけど、ピアスなんて開けたら耳ちぎられると思う。


「本当に賑やかでいいなぁ。二人は仲良いですけど、喧嘩とかしないんですか?」

「するよ。竜太郎が変なやきもち焼くからうるさい時は怒るよ」

「母ちゃんはいつも父ちゃんに怒ってるよ」


 俺は空いてる空の隣に座って、小さい肉を摘んで会話に参加した。あー、腹減ってたらもっと食うのになー。


「あのー、俺は凛子さんと喧嘩してるつもりはないですよ?」

「そう言えば、あんたドMだったね。てか高校生相手にやきもちなんか焼くんじゃないよ、みっともない」

「だってぇ」

「竜太郎さんの気持ち分かりますよ?俺も貴哉が誰かと仲良くしてたら若くても老いてても嫌な気持ちになりますからね」

「老いてても?いや、俺婆さんには興味ねぇよ?子供にもだけど」

「例えだ例え!」

「空くん!君とは分かり合えそうだぁ!さぁどんどん食べて!」


 父ちゃんが無理矢理空の取り皿に焼けた肉をこん盛りさせてるのを母ちゃんは笑いながら見てた。
 やっぱり二人は仲が良い。俺の前でも平気でイチャつくもんなー。


「そうだ、貴哉のガキの頃の写真見るか?竜太郎アルバム持って来てよ」

「見たい!貴哉の小さい頃とかやばい♡」

「あーはいはい」


 出た。誰か客が来ると高確率で出してくる昔の写真。かなりの親バカだから酔うと必ず引っ張り出して来てガキの頃の俺を自慢するんだ。
 父ちゃんが持って来たアルバムを受け取った母ちゃんは空をソファがある方のテーブルに連れてって広げて見せてた。俺と父ちゃんはまだホットプレートに残ってる肉を見ていた。


「ほら!これが赤ちゃんの貴哉♡可愛いだろー?で、こっちは初めて歩いた時だ♡」

「ちょー可愛いー♡この泣き顔とか最高ですね!」


 聞こえてくる何度も聞いたようなセリフにうんざりしつつも耳を傾ける俺。今度俺も空のガキの頃の写真見せてもらおっと。
 ここで父ちゃんが俺の取り皿に黙ってピーマンを置いた。


「父ちゃん?悪ぃけど、今腹減ってねーから」

「貴哉は野菜嫌いだろ?食べられるようになったのか?」

「何父親らしい事言ってんの。今日の昼飯、野菜弁当だったんだぜ」

「どうせ残したんだろ。ほらピーマン食べてみなさい」

「やだ」

「…………」

「分かったよ。食うよ。てか普通に食えるけど、美味いと思わないだけだし」


 俺がピーマンをパクッと食べると、父ちゃんは嬉しそうに笑った。
 正直、父ちゃんに父ちゃんらしい事を言われるのは気まずい。ってか照れる?俺と父ちゃんは血が繋がってないんだけど、何かと父親っぽくしようとしてくるんだ。
 俺にとってはもう父ちゃんだけど、ガキの頃の俺は父ちゃんの事を毛嫌いしていたらしい。
 本当の父ちゃんは俺が産まれる前に死んだから写真でしか見た事がない。写真で見る本当の父ちゃんはいつまでも若いままで、もう少しで俺は写真の父ちゃんより年上になる。本当の父ちゃんに会ってみたいと思う時もあるけど、それは口には出さない。
 だって俺にとっての父ちゃんは今目の前にいるから。


「野菜食べられるようになったか!偉いぞ♪」

「もうガキじゃねーし」


 本当の父親じゃないから、父親らしく振る舞おうとしてるのがバレバレなこの父ちゃんが俺は好きだ。
 俺がなかなか懐かなかった頃の父ちゃんは本当に悩んでいたらしい。どうにかして懐いてもらおうとあの手この手を使ったがダメだったんだって。だけど、ある事件が起こって父ちゃんは俺にとってのヒーローになった。
 これは父ちゃんと母ちゃんがちゃんと結婚するきっかけにもなった事件だ。
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