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本編
※思い出し笑いとかキモいですよ
しおりを挟む※空side
夏休みが始まってからの初めての日曜日。
昨日ってか日付け変わってたから今日だけど、夜に貴哉から衝撃的な話を聞いて家に帰ってから一睡も出来なかった。まだ朝の6時前だった。
あの貴哉が桐原さんの事を好きになってセックスまでしたなんて……
何とか貴哉とは別れずに済んだけど、俺の心はモヤモヤしたままだった。
貴哉には愛想尽かされるのが怖くて強がってああ言ったけど、本当はめちゃくちゃムカつくし、悲しい気持ちでいっぱいだ。
今日は貴哉も疲れただろうから昼過ぎまで寝てるだろ。俺はボーッとする頭のままシャワーを浴びて家を出た。
そしてある人物に電話を掛ける。
宿敵である桐原伊織にだ。
もちろん貴哉には言わないつもりだ。
番号は部活の人達のを一通り聞いてあるから知っていた。まさか掛ける事になるとは思わなかったけどな。
しばらく鳴らすけど出ない。電話を辞めようとした時、通話中の画面になりまたスマホを耳に当てた。
『はいはーい?早川とか珍し過ぎて出るの躊躇っちゃったわ』
「桐原さんに話があります。今すぐ出て来てもらえますか?」
『今すぐ?こんな朝早くに?』
「逃げませんよね?」
『まぁいいけど。どこ行けばいいの?』
「学校の近くのファミレスに向かってます。待ってますんで。じゃ」
桐原さんの返事を聞かずに電話を切って自転車を漕ぐ。今日は貴哉んちは素通りして学校方面へ向かう。
桐原さんの電話の声は寝起きっぽい感じだけど、いつもと変わらないように感じた。
会ってハッキリ言ってやる。
俺の貴哉に手を出すなって。
ファミレスに着いたのは7時前。客は少なく、一人で新聞を読んでるおじさんと、朝帰りっぽいカップルが一組。それと奥の席に赤い髪のやたら目立つ男が一人……桐原さんだ。
「おーい早川!こっちー」
手を振って俺を呼ぶけど、シカトしてそのまま近付いて向かいの椅子に座る。
桐原さんはやれやれと言った感じでホットコーヒーを飲んでた。
ここでホットコーヒーの香りと共にフワッと少し甘く爽やかな香りがして、桐原さんの匂いだと分かって怒りが込み上げて来た。
貴哉からもこの匂いがした時は胸糞悪かった。
「早川も何か飲みなよ。ドリンクバーだから取って来なきゃだけどな」
「桐原さん!貴哉と話しましたよ。俺怒ってますよ」
「……話したって何を?」
「しらばっくれないで下さい。貴哉に手を出したくせにっ」
「貴哉から聞いたのか?ならいいか。手を出したのは認めるよ。でもあれは合意の上でした事だ」
「そんなのは知ってます!貴哉は貴方の事が好きだと言ってました」
「それで?」
「でも最後に選んでくれたのは俺でした。だから今回の事は目を瞑ります。本当は殴りたいですけど、貴哉が怒るのでやりません。でも次に手を出したら許しません」
「ふーん。そん時に貴哉が俺を選んでもか?」
「っそんなのさせません!」
「分かんねーだろ。実際今回みたいな事があったんだし」
「あんたっ!全く反省してねぇな!」
「する訳ねぇだろ。無理矢理やった訳じゃねぇ。好き同士仲良くして何が悪い」
俺が思わず乱暴な口を聞くと、桐原さんの声のトーンが低くなって、軽く睨まれた。
ここで引いたら負けだ。
「好き同士だったとしても恋人がいる相手だ!それを知ってて手を出すのは間違ってる!」
「誰でも欲しいものは何が何でも手に入れたくなるもんだろ。お前さ、こんな朝っぱらから俺を説教する為に呼んだのか?実は俺今機嫌悪ぃんだ」
「そんなの俺もですっああ殴りたい!」
「早川さ、こんな事してねぇでもっと貴哉を大事にしたら?俺に説教なんかしなくても貴哉はお前のとこに戻るんだからさ」
「俺は貴方に謝って欲しいんだ!そしてもう二度と貴哉に手を出さないって誓って欲しい!」
「はぁ?どっちもやだよ。今機嫌悪いんだって。好きな奴に逃げられちまったからな」
「っ…………」
「お前が羨ましいよ。貴哉にあんなに愛されててさ。だから俺が少しちょっかい出すのなんて多めに見ろよ。可哀想な奴とでも思って」
「少しじゃないじゃないですか!ガッツリ手出しておいて何ですかその言い方!」
「あ、そっか」
ここで桐原さんは何かを思い出してニヤニヤ笑っていた。何だよいきなり?全く反省してないこの男、一体どうすればいいんだ。
「思い出し笑いとかキモいですよ」
「いや、こっちの話だ気にしないでくれ」
「はぁ?気になるでしょ、教えて下さい」
「何か思い出したらちょっと申し訳無くなって来たな。やっぱり謝っとくか。うん、悪かったよ早川」
いきなりあっさり謝って来た。何を考えてるのか全く分からず、目を丸くしてると、ニヤリと笑って言葉を続けた。
「本当に悪かったな。早川より先に貴哉とヤっちゃって♡心苦し過ぎて笑えるわ」
「っ!!!!」
この男!絶対に許さない!
ワザと俺を挑発するように言ってる桐原さんはいつもと感じが違って、まるで悪ガキのようだった。
「いい加減にしろ桐原ぁ!」
「先輩に向かって何だよその口の聞き方はぁ?機嫌悪いつったろ?相手してやるから外出ろ!」
「上等だジジイ!地面に這いつくばらせてやるよ!」
睡眠を取っていないからテンションがおかしくなった。もうこのまま殴って分からせてやるしかない。桐原さんの言葉に乗っかりそのままファミレスを出て、学校の近くの公園の芝生があるところに向かい合って立ち、お互い睨み合っていた。
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