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本編

浮気してもか?

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 日付けが変わった頃、俺は家に着いて部屋のベッドの上でスマホを眺めていた。
 空からの大量のメッセージと着信。
 伊織とあんな事した後だ、返す気が起きねーからそのまま寝ようかと思ってると、今正に電話が来た。
 

「…………」


 俺は目を閉じて電話を取った。
 すると聞き慣れた空の声がして目を開けた。


『やっと出たー!貴哉!おーい?貴哉ー!』

「何だよ。んなでけぇ声出さなくても聞こえるって」

『だって全然連絡ないんだもん!なぁ今まで先輩といたのか?』

「いや、花火大会終わってそのまま帰って来て寝てた」


 嘘ついちまった。電話だから大丈夫だと思った。


『マジかよ!もー連絡ねぇから何かあったのかと心配したじゃん!』

「…………」


 空の素直な感情に俺は自分の事が憎くて悔しくて泣いた。
 バレたくなくて黙ってると、空がまた心配そうにしてた。


『あれ?貴哉?』

「悪いな。寝ぼけてるんだ」

『え、ちょっと、もしかして泣いてるのか?』

「……切るぞ」

『待って待って!なぁ今から会いに行っていいか!?』

「ダメだ!」


 空と今会うなんて出来る訳ねぇ。
 そんな事したら俺は全部本当の事を話して空を傷付けちまう。


『だって泣いてるんだろ?側にいてぇよ!』

「あー、あれだ!芝居の練習してたんだ!だから嘘泣き!」

『本当かよぉ?そうだとしたらめちゃくちゃ上手かったけど。てか寝てたんじゃなかったのかよ?』

「……もー切るからな」

『貴哉怪しすぎる!花火大会で何があったんだ?』

「ねぇよ」

『なぁ、貴哉ぁ……俺の事嫌いになったのか?』

「!」


 空からのまさかの質問に驚いた。
 何で急にそんな事言うんだ?
 俺が連絡に反応しないのはいつもの事じゃねぇか。


『なんつーか、俺ってウザいかな?』

「お前らしくねぇじゃん」

『いやぁ、俺って貴哉の事大好きじゃん?だからちょっと連絡途切れたりすると不安になるって言うか、会いたくて堪らなくなるんだよ』


 そうだよ。これが空だ。
 いつでも俺の事好きで、いつでも構って構ってって言って寄って来る。


「……どんな俺でも好きでいられるのか?」

『もちろん!今まで俺が貴哉を嫌いになった事なんてねぇじゃん?』


 そんな空を裏切った俺でも好きでいてくれるのか?
 やっぱり俺には隠し事は無理なのか?
 今すぐに空に打ち明けたい気持ちと言っちゃダメだと言う気持ちが入り乱れてて吐きそうな気分だ。


「浮気してもか?」

『はぁ?そりゃアウトだろ。てか貴哉が前に俺が友達と浮気してるって勘違いしてぶん殴ろうとしてたんだろー?』

「そっか……」

『なぁ貴哉、まさか浮気したのか?』


 何て答えたらいい?
 電話だからしてないって言えばそれで誤魔化せる。でも誤魔化していいのか?もし誤魔化せてもまた隠し事して苦しい思いすんじゃねぇの?
 それならもういっその事本当の事を……


『おい貴哉!』

「ごめん。空の事が好きなのに、他の人の事を好きになったんだ」

『はぁ?』


 堪え切れなくて本当の事を言うと、空は今までにないぐらい低い声を出した。
 空が怒ってる。当たり前か。俺はそれだけの事をした。いや、まだ全部話せてない。もし全部話したら怒られるじゃ済まないよな。


『誰を好きになったんだ?』

「…………」

『何で黙るんだよ!貴哉……頼むから嘘だって言ってくれよ!』

「そ、ら……」

『今から行くからな!ちゃんと話してもらうからな!』

「待て!来るな!」


 電話はすでに切れていて、空が慌ててこちらに向かう姿が目に浮かんだ。
 ヤバい。今会ったら確実にバレる。

 いや、もう全部言おう。
 もう空に黙ってるのとか出来ねぇや。
 謝って許してもらえる何て思ってねぇけど、ちゃんと謝ろう。

 いっその事ぶん殴ってくれりゃいいのにな。
 そしたら俺も目が覚めるかもしれねぇな。

 俺は空と揉めた所を母ちゃん達に知られたくねぇからそっと家を出て空んちの方角へ歩き出した。

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