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本編

俺よりメロンなのかよー!

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 一人で焼けた野菜をつまみながらお茶を飲んでいた戸塚の隣に座ると、目線だけ俺にやってそのままの体勢でいた。
 相変わらずクールな奴だな。こんな騒がしいところ早く帰りてぇだろうに。


「戸塚もご苦労様だな。芽依お嬢様の世話役も大変だな」

「悪いな秋山、俺は芽依に逆らえないんだ」

「それ昼間も言ってたよな。何で?」

「訳ありでな」

「お嬢様とお坊ちゃんの事だ、また想像もつかねぇやり取りがあったんだろーな」

「芽依も可哀想なんだ。まぁ紘夢くんもだけどな」

「可哀想だぁ?二人共好き放題やってんのにどうして可哀想になるんだよ?」

「秋山にはそう見えるだろうな」

「庶民には分からない事情ってやつですか!」


 無理に知りたいとは思わねぇし、変な事に首突っ込みたくないからな。俺は持って来た肉を食いながら戸塚と話していた。


「戸塚はどうなんだよ?好き放題やれてんの?お前いつも窮屈そうだよな」

「俺は俺で好きにやれている……と思うが」

「何だよその曖昧なの。芽依に尻に敷かれてんのに好きにやれてるとかドMかよ」

「まぁそれは置いといて」

「でもよ、前よりは話しやすくなったよなお前。前は俺の事大嫌いで、良く睨まれてたもん」

「あれはすまなかった。俺もどうかしていた」

「人を好きになると変わるっていうやつですか?今は好きな奴いねーの?何ならこの中の誰かを引き取ってくれたら助かるんだがよ。あ、空以外な」


 目の前で騒いでる奴らの事を言うと戸塚は少し笑いながら首を横に振った。


「とてもじゃないが俺には手に負えない奴らばかりだな」

「それな。みんな濃すぎんだよなぁ。でも良い奴らだよな」

「きっと秋山の人柄が引き寄せているんだろう」

「あ?俺は何もしてないぜ?てか戸塚も入ってるからな?」

「あいつらと一緒にされるのは癪だが、秋山に選ばれるのなら悪くないな」

「お、戸塚にそう言われると何か嬉しいな♪」


 戸塚としんみり話し込んでると、芽依が近寄って来た。こいつも母ちゃんがいるとは言え、男ばかりの所で良くやってんな。


「春樹、今日は泊まる事にしたわ。貴方はどうするの?」

「はぁ!?何勝手に決めてんだよ!」

「ちゃんとお母様とお父様の許可を貰ったわよ」

「じゃあ俺も泊まって行こうかな」

「そう来なくっちゃ♪私手ぶらで来ちゃったから荷物を頼むのだけれど、春樹はどうする?一緒に持って来てもらいましょうか?」

「ああ、着替えがあると助かるな」

「任せなさい。ここにいる全員分用意させるわ」

「ちょっと待て!全員って何だ!?俺何も知らねーぞ!」

「さっき決まったのよ。お母様が今日はみんな泊まってけって♪楽しい方ねお母様って」

「また母ちゃんってば勝手な事言って!布団そんなにねぇだろ!」

「そんな事?新しい寝具も一式用意するわ。貴哉は場所だけ確保してくれる?」

「ダメだ!芽依には何言っても勝てる気がしねぇ!仕方ねぇ!場所は用意してやる!」

「何だかんだお似合いだぞお前ら」

「戸塚ぁ!それ絶対空の前で言うなよ!空が聞いたらまた面倒な事にっ」

「あ、もう聞かれてしまったみたいだな」


 戸塚が俺の後ろを見ながらクスクス笑うから恐る恐る振り向くと、半泣きの空がそこにいた。
 もう面倒くせぇじゃん!


「貴哉ぁ!俺というものがありながら他の女とイチャつくなんて!」

「空!戸塚は笑えない冗談を言うのが得意なだけだ!気にするんじゃねぇ!」

「貴方ねぇ、それぐらいでメソメソするなんて、貴哉の彼氏として失格じゃないかしら?もっと堂々としていなさいよ」

「め、芽依の言う通りだ!」

「芽依ちゃん!貴哉は俺のなの!他の人に言い寄られてるの見て堂々としてなんかいられる訳ないだろ!」

「そうかしら?私は全然平気だけど。だって貴哉にとって一番の女である自信があるもの♡」


 芽依が俺を見てニヤッと笑った。
 どちらかと言えば芽依みたいな方が俺も楽だけどな。伊織も芽依派な気がするが……空は無理だろうな。ずっと前からやきもちやき続けてきたしな。
 芽依に言い負かされてそろそろ心折れるんじゃないか?そろそろ肩持ってやるか。


「空ー?何芽依に負けてんだ。俺にとって初めての恋人なんだからもっと強くなれって。俺が好きなのは空だけだから」

「貴哉ぁ……」


 肩をポンと叩いてそう言ってやると、空は嬉しそうに笑った。
 その一方で芽依の目がギラリと光った気がした。そして厄介な奴らまで入って来やがった。


「それは聞き捨てならないわね。俺が好きなのは空だけ?私の事も好きなのよね?どうなのよ」

「俺はー?俺の事も好きだろ貴哉ー♡」

「貴哉、いつでも俺の所に戻って来ていいんだよ♪なんてったって俺は貴哉の元彼だし♡」
 

 芽依に続き伊織と直登まで……
 やっと空が戻るって時にうるせぇ奴らだなぁ。


「ほらー!みんなメロンだよー!おいでー」

「メロン!俺食ってこよー♪」


 良いタイミングで父ちゃんが家の中から切ったメロンを持って出て来た。メロン食えるなんて滅多にねぇから楽しみだったんだ♪


「貴哉ったらあんなに嬉しそうにして♡私も食べるわー」

「こう言う時ってメロンよりスイカじゃね?まぁ俺もメロン好きだけど」

「桐原さん、俺も思いましたけど最高級らしいんで食べましょ♪」

「貴哉ぁ!俺よりメロンなのかよー!」


 その後はみんなで最高級の美味いメロンを食べて騒がしいバーベキューはお開きになった。

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