上 下
28 / 116
本編

何だよこの飢えたライオンみたいな奴らは!

しおりを挟む

 頭の中の記憶を頼りに親睦会の会場の店の名前を芽依の運転手に伝えてとある焼肉屋に到着した。
 多分ここだと思う。集合時間には少し遅れたが、顔を出すだけだし問題ないだろ。

 芽依に軽くお礼を言って走り出すのを見送ってから店の中に入る。外で待たれたら大変だからな。


「秋山!来てくれたのか!」

「よう茜~♪悪いな、スマホと財布忘れて来ちまった」

「どんなけ忘れ物してんだよ」


 入ってすぐに茜が寄って来てホッとした。やっぱりここだったみたいだな。
 聞いてみると、俺からの連絡が無くて心配した茜はこうやってちょくちょく入り口まで見に来てくれてたらしい。良い先輩だな。
 会場になってる奥の広い席まで行くと、十数人が座ってもう始めているようだった。桐原もいるな。


「貴哉くん!よく来てくれたね♪さぁ俺の横に座って♪」

「あ、薗田さん秋山の席はここなんで」

「いやいや、俺の横空けるからこっち来いよ♪」


 詩音、茜、桐原の順に言われたけど、俺は空いてた茜の横に座った。
 あとは副部長と、知らない奴ばっかだなー。少人数でやるって言ってたけど、結構来てるみたいだな。


「貴哉くんはすっかり二之宮くんと仲良くなったみたいだね」

「茜ってめちゃくちゃ良い奴だからな♪」


 詩音に言われて俺がそう答えると、他の知らない奴らが一斉に驚いた顔で見て来た。
 俺変な事言ったか?


「あ、茜は友達いないんだっけ」

「お前もだろ」

「はは!お前らそんな事言えるまで仲良くなったのかよ!面白すぎ。貴哉何飲むー?」


 桐原に聞かれたけど、そんな長居する気はねぇから断る事にした。


「あ、俺すぐ帰るからいい。財布忘れたし」

「飲み物ぐらい飲んで行けよ。貴哉の分は俺が払うし」

「いーくん、今日は二人の歓迎会も兼ねてるんだ。君達は気にせず楽しんでよ♪貴哉くんはコーラかな?お茶かな?お肉は適当に頼んだから好きなの食べてよ。あ、ライス頼もうか」

「えー、じゃあお言葉に甘えて♪って事だ。貴哉好きなの食おうぜー♪」

「いや、マジでこの後用があっから」

「おい秋山、この箱は何だ?プレゼントか?」


 俺が持ってた唯一の私物の芽依からもらった箱に気付いた茜が不思議そうに見ていた。
 あ、一応空っぽの財布だけは持ってたな。


「それ貰ったんだ」

「て、貴哉このブランド好きなのか?めちゃくちゃ高いとこだぞ」

「そーなの?俺は知らねーけど」


 桐原が箱を取ってパカっと開けて中身を見てた。
 すると更に驚いてた。


「お前これ限定のやつじゃん!数十万はするぞ?誰に貰ったんだ?」

「はぁ!?そんなすんのかよ!」

「貴哉くんの誕生日か何かなの?」

「ううん。ただちょっと頼まれた事を手伝っただけ。ちょっと頭おかしい女なんだ」

「女ぁ!?」


 何だ?俺が女って言っただけで、桐原だけじゃなく、他の知らない奴らまで食い付いて来やがった。


「お前女いるのか!?紹介しろ!」

「合コンセッティングしてくれ!」

「どこの女だ!」

「うるせぇなぁ!一気にしゃべんな!」


 わらわらと群がって来た。何だよこの飢えたライオンみたいな奴らは!


「貴哉くんは本当にモテるね~♪男子校だと出会いが無いからみんな必死なんだよ」

「お前ら秋山に近付くな!散れ散れ!」

「たーかや?詳しく聞かせてくれよ♪その女の事♪」


 俺の隣に無理矢理座り込んで桐原がニコニコ笑顔で言う。何だこの笑顔なのに怒ってるようなオーラは……
 てかそろそろ帰らねぇと、空が来るからって言うんで母ちゃん張り切って庭でバーベキューやるって言ってたんだ。準備手伝ってねぇし、遅くなると怒られちまう。


「俺そろそろ帰るわ!スマホ置いて来ちまったし、母ちゃんに怒られるから!」

「そうか、家族との約束なら仕方ないね。貴哉くん、またゆっくり出来る時に食事をしよう」

「秋山、気をつけて帰れよ」


 白崎さんと茜に言われて俺は立ち上がり席を後にする。すると桐原が付いて来た。


「貴哉、忘れてるぞ」

「あ?ああサンキュー。失くすと芽依がうるさくなるからな」


 芽依に貰った財布だった。桐原から受け取ってそのまま帰ろうとするとまだ付いて来た。


「何だよ。お前は戻れよ」

「送ってくよ。俺タクシーで帰るつもりだったからついで」

「タクシーだと?高校生の癖に贅沢だな」

「それを言うなら貴哉だろ。芽依ちゃんって子に貰ったんだ?その財布」

「……そうだよ」


 桐原と店を出て桐原が呼んだタクシーを待つ。もう暗くなってるし、これ以上遅くなったら母ちゃんだけじゃなく、空まで機嫌悪くなりそうだから、桐原に送ってもらう事にした。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

くまさんのマッサージ♡

はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。 2024.03.06 閲覧、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。 2024.03.10 完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m 今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。 2024.03.19 https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy イベントページになります。 25日0時より開始です! ※補足 サークルスペースが確定いたしました。 一次創作2: え5 にて出展させていただいてます! 2024.10.28 11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。 2024.11.01 https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2 本日22時より、イベントが開催されます。 よろしければ遊びに来てください。

男だけど女性Vtuberを演じていたら現実で、メス堕ちしてしまったお話

ボッチなお地蔵さん
BL
中村るいは、今勢いがあるVTuber事務所が2期生を募集しているというツイートを見てすぐに応募をする。無事、合格して気分が上がっている最中に送られてきた自分が使うアバターのイラストを見ると女性のアバターだった。自分は男なのに… 結局、その女性アバターでVTuberを始めるのだが、女性VTuberを演じていたら現実でも影響が出始めて…!?

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

俺の義兄弟が凄いんだが

kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・ 初投稿です。感想などお待ちしています。

転生したらBLゲーの負け犬ライバルでしたが現代社会に疲れ果てた陰キャオタクの俺はこの際男相手でもいいからとにかくチヤホヤされたいっ!

スイセイ
BL
夜勤バイト明けに倒れ込んだベッドの上で、スマホ片手に過労死した俺こと煤ヶ谷鍮太郎は、気がつけばきらびやかな七人の騎士サマたちが居並ぶ広間で立ちすくんでいた。 どうやらここは、死ぬ直前にコラボ報酬目当てでダウンロードしたBL恋愛ソーシャルゲーム『宝石の騎士と七つの耀燈(ランプ)』の世界のようだ。俺の立ち位置はどうやら主人公に対する悪役ライバル、しかも不人気ゆえ途中でフェードアウトするキャラらしい。 だが、俺は知ってしまった。最初のチュートリアルバトルにて、イケメンに守られチヤホヤされて、優しい言葉をかけてもらえる喜びを。 こんなやさしい世界を目の前にして、前世みたいに隅っこで丸まってるだけのダンゴムシとして生きてくなんてできっこない。過去の陰縁焼き捨てて、コンプラ無視のキラキラ王子を傍らに、同じく転生者の廃課金主人公とバチバチしつつ、俺は俺だけが全力でチヤホヤされる世界を目指す! ※頭の悪いギャグ・ソシャゲあるあると・メタネタ多めです。 ※逆ハー要素もありますがカップリングは固定です。 ※R18は最後にあります。 ※愛され→嫌われ→愛されの要素がちょっとだけ入ります。 ※表紙の背景は祭屋暦様よりお借りしております。 https://www.pixiv.net/artworks/54224680

刑事は薬漬けにされる

希京
BL
流通経路がわからない謎の薬「シリー」を調査する刑事が販売組織に拉致されて無理やり犯される。 思考は壊れ、快楽だけを求めて狂っていく。

処理中です...