完璧君と怠け者君

pino

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一章

偶然の再会

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 放課後、いつもすぐに帰ってしまう白崎を先回りして呼び止める。
 昨日もしたからまたかと言う顔をされたけど、気にしない。


「白崎ー、ちょっと付き合ってくれない?」

「断る。今日こそは塾に行かなくてはならないんだ」

「少しだけ!頼むよ」

「なら内容を話せ。猶予は……五分までだ」

「五分!?せめて十分!」

「良いから早く話せ」

「あのな?屋上にいる俺の友達分かるだろ?ほら、白崎がカツアゲと間違えた三人」

「ああ、今日も昼に見たからな。そいつらがどうした?」

「白崎の事紹介させてくれないか?」


 俺はあの後三人に昼休みの事をメッセージで報告したんだ。そしたら利人が白崎の事を紹介しろとうるさいから軽く紹介しとこうと思ったんだ。


「紹介だと?何の為に?俺はそんなのいらない」

「えっとー、三人は俺の数少ない友達なんだ。だから、白崎の事を知っていて欲しくて」

「だから、何で俺を紹介するんだ?」


 好きだからとは言えずに答えに困っていると、鞄を持った三人がやって来た。
 ちょうど良かった!このまま紹介しちゃおう。


「ようみーくん!来てやったぜ♪」

「みーくんのクラスって何か地味ー♪あはは!」

「…………」

「みんな、改めて紹介するよ。こちらが白崎」

「白崎ー!話は聞いたぜ!あの佐倉に堂々としてたらしいな!やるじゃん♪気に入ったぜ!あ、俺は長谷川って言うんだ。よろしくな!」

「はーい♡次は俺ねー!俺は間宮利人♪白ちゃんは初めから面白くて気になってたのー♡俺らとも仲良くしてねー!あはは♪」

「……栗原だ。美月が世話になった」


 各々名乗ってくれたから良かった。白崎もちゃんと聞いていてくれたみたいだから安心した。
 さて、白崎の機嫌が悪くなる前に三人を帰さなくちゃ!


「さぁみんな帰ろうか!白崎は塾に行きたいんだ」

「塾だと!?根暗かコラ」

「そんなの行かないで俺達と遊ぼうよー♪」

「ちょっと待て、栗原……お前栗原と言ったな?」


 うるさい二人を黙らせようとしてると、白崎が翔太郎に聞いていた。
 当の翔太郎は頭にハテナを浮かべて黙っていた。


「栗原翔太郎!そうだな?お前は栗原翔太郎だろ!」

「……あっ、いっちゃん!?」


 名前をフルネームで呼ばれて、いつも無表情の翔太郎がハッと驚いた顔をした。え、あんな顔すんの翔太郎ってぐらい驚いて目を見開いていた。
 何だ?白崎と翔太郎って、知り合いなのか?


「やっぱり!いやー驚いたな。何年振りだ?それにしても変わったな翔太郎。名前を聞くまで分からなかったぞ。あのお前が黒髪か。うんうん。とてもいいぞ!」

「…………」

「ちょっとちょっとー!二人で盛り上がってるけど、どう言う事ぉ?翔ちゃんのこんな顔見た事ないんだけど!」

「ああ、俺と翔太郎は小学校が一緒だったんだ。最も翔太郎が四年生で転校したからそれっきりだったがな」

「マジかよ!?すげぇ偶然だな」

「感動の再会ってやつ~?」

「感動……確かにそうなるな。だって翔太郎は俺の……ぐっ!」


 白崎が何かを言おうとして翔太郎が慌てて白崎の口を塞いで止めた。
 え、あの翔太郎が白崎に触れた?


「いっちゃん辞めろ!今は違うからっ」

「ぷはぁ!そうだとしても事実だろう?まぁいい。そろそろ俺も時間だ。懐かしい思い出に浸りながら帰るとしよう」


 白崎も翔太郎の行動に怒らねぇし。
 何なんだよ二人の関係って。
 それに、白崎のあの笑顔……凄く嬉しそうにしてる。

 俺達から離れて帰ろうとする白崎を追おうとすると、翔太郎に呼び止められた。


「美月っ」

「翔太郎、お前は着いてくんな」

「っ……」


 冷たく言うと翔太郎は黙って俺を見送った。
 絶対二人の間に何かあったんだ。
 白崎のあの感じなら聞けば教えてくれるかもしれない。

 すぐに追いついて、隣に並ぶと機嫌の良さそうな白崎がいて、追って来たのに嫌がられなかった。


「なぁ白崎、翔太郎とどう言う関係なんだ?」

「どう言うってさっき言った通りだが?あ、歩きながらでもいいか?間に合わなくなる」

「うん」


 白崎と帰れるなら何でも良い。
 そして翔太郎との関係を聞いてスッキリしたい。
 それから街中を歩きながら白崎は翔太郎との事を話してくれた。


「翔太郎と俺はライバルだったんだ。事あるごとに競い合っていてな。いつの間にか仲良くなっていたんだが、何で仲良くなったのかは覚えていないな」

「なぁ、さっき白崎が言いかけてたのって何?翔太郎は俺のって」

「ああ、それか。翔太郎は俺の事が好きだったんだ。転校する日、告白をされたよ」

「好き……?」

「まぁお互い子供だったからな。知らず知らずの内惹かれ合っていたんだろうな。競い合う内に」

「惹かれ合ってって、まさか白崎も翔太郎を?」

「ああ、あの時は俺も好きだと答えたよ」


 ショックで倒れそうだった。
 翔太郎は白崎の事が好きで、白崎も翔太郎を……
 

「それにしても見た目が変わり過ぎていて面白かったぞ。小学校の時はなんと金髪だったんだ翔太郎は。それがあんなに見違えるような姿になって」


 そんなに楽しそうに話さないでくれよ。
 俺以外の奴の事で、笑わないでくれよ。
 しかも相手が翔太郎だなんて……


「おい、黒田?どうした?」

「……白崎は今でも翔太郎が好きなのか?」

「黒田……お前……」

「答えろよ!」

「人間としては尊敬しているし、好きだ。翔太郎は驚く程に優秀な奴でな」

「はは、そっか」

「なぁ黒田、お前何かおかしいぞ?」

「俺がおかしい?二人共友達だから気になるだけだしっ」

「ならば何故泣きそうな顔をしているんだ?」

「え?」

「今にも泣きそうな……あ」

「っ……」


 ヤバい!俺ってば取り乱し過ぎた!
 白崎に好きだって事バレた!


「もしかしてお前、翔太郎の事が好きなのか?」

「え!?そっち!?」

「そうか、まぁ翔太郎も何でも出来る男だったからな。きっと今でもそうなのだろう。あの頃の翔太郎もモテてたからなぁ」

「違うっ!逆だ逆!」

「逆?」

「俺が好きなのは翔太郎じゃなくて白っ……」


 このまま告白してしまおうとして辞めた。
 だって白崎は翔太郎の事が好きだから。
 俺が好きだって言っても相手にされないなら言っても意味がない。


「黒田、お前何て……?」

「ごめん、何でもない!」


 足を止めて俺を見てる白崎にフイッとして逃げた。
 きっと頭の良い白崎なら気付いたかもしれない。
 次会った時にはもう俺の事なんか怒ってもくれないかもしれない。

 人を好きになるのがこんなに辛い事だったなんて知らなかった。
 白崎と隣の席にならなければこんな思いしなかったんかな……

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