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「わかりました、行きますよ。でも、せめて一日待ってくれませんか? 今後手紙を届けてくれるといっても、事前にきちんと家族には説明したいですし」

“ありがとうございます、サリ!! ……でも、その、実は、私の世界とあなたの世界では、時の流れが少々異なりまして。できれば今すぐに行っていただきたいと言いますか、こうしてあなたと言葉を交わすのにも膨大な神力が必要で、次に神力が貯まるまで待つとなれば、あなたの世界でいうひと月後、私の世界ではさらに長い時が経つことになるのです。その間、魔族の侵攻に人間たちが堪えられるかどうか……”

 えええええ~!?

「でも、急に私までいなくなったら琉生くんの時みたいに世間的にも大変なことになって、両親も誤魔化すのが難しくなると思うし……」

 女神様が焦っているのはわかるが、そっちが助かればこっちの世界はどうでもいいというわけではないのだから、やっぱり準備は必要だと思う。

“大丈夫です! その辺は私が何とかしておきますから!”

「雑だな! 全然信用できないよ!?」

 女神様の話を詳しく聞いたところ、ひとまず私の周囲の人たちの記憶を改竄して、外国へ留学に行ったということにしておくらしい。その後、私からの手紙を届けるのと一緒に記憶を元に戻そうと考えているのだとか。

 ……手紙での説明が難しそうだけど、それなら、失踪したのではと心配をかけることもないし、この辺が落としどころかなぁ。

「わかりました、それでお願いします。で、私はどうすればいいんですか? 何を持っていけばいいの?」

“良かった! 本当にありがとうございます!! いえ、あなたは琉生の元へ行くだけでいいんです、そして話を聞いてあげてください。それでいいはずです、たぶん”

「たぶん!?」
 
 おおおおい! こちとら人生かけて行くってのに、曖昧すぎませんか!?

“い、いえ、きっと! そうだ。サリ、あなたにこちらを差し上げます”

 神様がそう言うと、右手の中指に、いきなりキラキラと輝きを放つ指輪が現れた。
 
「わぁ、なにこれ!?」

“それはあなたの身を守ってくれる防具です。魔王に会うまでに死なれてしまっては目もあてられませんからね。大抵の物理・特殊攻撃を防げるようになっています。これを破れるのはまぁ、他の神くらいのものでしょう”

 ……それなんてチート道具!?

 それって、要するに全部の攻撃が効かないってことですよね? これがゲームだったら、バランス崩壊も甚だしいアイテムだよ!?
 
 まぁ、これはゲームじゃなくて現実だし、私も死にたくはないから、ありがたく受け取りますけども。
 
 琉生くんのためとはいえ、見知らぬ土地である、危険な異世界へ向かうのだ。不安が大きかったけれど、これで少しは安心できる。
 
“幸いあなたには癒やしの魔法適性があったので、できる限りの祝福を授けておきました。その力で、どうか魔族に荒らされた土地を癒やしてくださいね”
 
 ……おおおーい? なんか今、さりげにかなり大変そうな仕事増やしましたよね? やっぱり、行くのやめてもいいですか?
  
“では、健闘を祈ります。どうか、私の世界を救ってください!”
 
 愕然としてしまい文句を言う暇もなく、そんなRPGゲームのお決まりのようなセリフをを残して、女神様の気配が遠くなっていった。

 そしてその後すぐにやってきた浮遊感に、私は仕方なく、身を任せたのだった。
 
 
 
 
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