5 / 13
転移
しおりを挟む
「わかりました、行きますよ。でも、せめて一日待ってくれませんか? 今後手紙を届けてくれるといっても、事前にきちんと家族には説明したいですし」
“ありがとうございます、サリ!! ……でも、その、実は、私の世界とあなたの世界では、時の流れが少々異なりまして。できれば今すぐに行っていただきたいと言いますか、こうしてあなたと言葉を交わすのにも膨大な神力が必要で、次に神力が貯まるまで待つとなれば、あなたの世界でいうひと月後、私の世界ではさらに長い時が経つことになるのです。その間、魔族の侵攻に人間たちが堪えられるかどうか……”
えええええ~!?
「でも、急に私までいなくなったら琉生くんの時みたいに世間的にも大変なことになって、両親も誤魔化すのが難しくなると思うし……」
女神様が焦っているのはわかるが、そっちが助かればこっちの世界はどうでもいいというわけではないのだから、やっぱり準備は必要だと思う。
“大丈夫です! その辺は私が何とかしておきますから!”
「雑だな! 全然信用できないよ!?」
女神様の話を詳しく聞いたところ、ひとまず私の周囲の人たちの記憶を改竄して、外国へ留学に行ったということにしておくらしい。その後、私からの手紙を届けるのと一緒に記憶を元に戻そうと考えているのだとか。
……手紙での説明が難しそうだけど、それなら、失踪したのではと心配をかけることもないし、この辺が落としどころかなぁ。
「わかりました、それでお願いします。で、私はどうすればいいんですか? 何を持っていけばいいの?」
“良かった! 本当にありがとうございます!! いえ、あなたは琉生の元へ行くだけでいいんです、そして話を聞いてあげてください。それでいいはずです、たぶん”
「たぶん!?」
おおおおい! こちとら人生かけて行くってのに、曖昧すぎませんか!?
“い、いえ、きっと! そうだ。サリ、あなたにこちらを差し上げます”
神様がそう言うと、右手の中指に、いきなりキラキラと輝きを放つ指輪が現れた。
「わぁ、なにこれ!?」
“それはあなたの身を守ってくれる防具です。魔王に会うまでに死なれてしまっては目もあてられませんからね。大抵の物理・特殊攻撃を防げるようになっています。これを破れるのはまぁ、他の神くらいのものでしょう”
……それなんてチート道具!?
それって、要するに全部の攻撃が効かないってことですよね? これがゲームだったら、バランス崩壊も甚だしいアイテムだよ!?
まぁ、これはゲームじゃなくて現実だし、私も死にたくはないから、ありがたく受け取りますけども。
琉生くんのためとはいえ、見知らぬ土地である、危険な異世界へ向かうのだ。不安が大きかったけれど、これで少しは安心できる。
“幸いあなたには癒やしの魔法適性があったので、できる限りの祝福を授けておきました。その力で、どうか魔族に荒らされた土地を癒やしてくださいね”
……おおおーい? なんか今、さりげにかなり大変そうな仕事増やしましたよね? やっぱり、行くのやめてもいいですか?
“では、健闘を祈ります。どうか、私の世界を救ってください!”
愕然としてしまい文句を言う暇もなく、そんなRPGゲームのお決まりのようなセリフをを残して、女神様の気配が遠くなっていった。
そしてその後すぐにやってきた浮遊感に、私は仕方なく、身を任せたのだった。
“ありがとうございます、サリ!! ……でも、その、実は、私の世界とあなたの世界では、時の流れが少々異なりまして。できれば今すぐに行っていただきたいと言いますか、こうしてあなたと言葉を交わすのにも膨大な神力が必要で、次に神力が貯まるまで待つとなれば、あなたの世界でいうひと月後、私の世界ではさらに長い時が経つことになるのです。その間、魔族の侵攻に人間たちが堪えられるかどうか……”
えええええ~!?
「でも、急に私までいなくなったら琉生くんの時みたいに世間的にも大変なことになって、両親も誤魔化すのが難しくなると思うし……」
女神様が焦っているのはわかるが、そっちが助かればこっちの世界はどうでもいいというわけではないのだから、やっぱり準備は必要だと思う。
“大丈夫です! その辺は私が何とかしておきますから!”
「雑だな! 全然信用できないよ!?」
女神様の話を詳しく聞いたところ、ひとまず私の周囲の人たちの記憶を改竄して、外国へ留学に行ったということにしておくらしい。その後、私からの手紙を届けるのと一緒に記憶を元に戻そうと考えているのだとか。
……手紙での説明が難しそうだけど、それなら、失踪したのではと心配をかけることもないし、この辺が落としどころかなぁ。
「わかりました、それでお願いします。で、私はどうすればいいんですか? 何を持っていけばいいの?」
“良かった! 本当にありがとうございます!! いえ、あなたは琉生の元へ行くだけでいいんです、そして話を聞いてあげてください。それでいいはずです、たぶん”
「たぶん!?」
おおおおい! こちとら人生かけて行くってのに、曖昧すぎませんか!?
“い、いえ、きっと! そうだ。サリ、あなたにこちらを差し上げます”
神様がそう言うと、右手の中指に、いきなりキラキラと輝きを放つ指輪が現れた。
「わぁ、なにこれ!?」
“それはあなたの身を守ってくれる防具です。魔王に会うまでに死なれてしまっては目もあてられませんからね。大抵の物理・特殊攻撃を防げるようになっています。これを破れるのはまぁ、他の神くらいのものでしょう”
……それなんてチート道具!?
それって、要するに全部の攻撃が効かないってことですよね? これがゲームだったら、バランス崩壊も甚だしいアイテムだよ!?
まぁ、これはゲームじゃなくて現実だし、私も死にたくはないから、ありがたく受け取りますけども。
琉生くんのためとはいえ、見知らぬ土地である、危険な異世界へ向かうのだ。不安が大きかったけれど、これで少しは安心できる。
“幸いあなたには癒やしの魔法適性があったので、できる限りの祝福を授けておきました。その力で、どうか魔族に荒らされた土地を癒やしてくださいね”
……おおおーい? なんか今、さりげにかなり大変そうな仕事増やしましたよね? やっぱり、行くのやめてもいいですか?
“では、健闘を祈ります。どうか、私の世界を救ってください!”
愕然としてしまい文句を言う暇もなく、そんなRPGゲームのお決まりのようなセリフをを残して、女神様の気配が遠くなっていった。
そしてその後すぐにやってきた浮遊感に、私は仕方なく、身を任せたのだった。
1
お気に入りに追加
51
あなたにおすすめの小説
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
彼氏に別れを告げたらヤンデレ化した
Fio
恋愛
彼女が彼氏に別れを切り出すことでヤンデレ・メンヘラ化する短編ストーリー。様々な組み合わせで書いていく予定です。良ければ感想、お気に入り登録お願いします。
冷徹義兄の密やかな熱愛
橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。
普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。
※王道ヒーローではありません
皇帝陛下は身ごもった寵姫を再愛する
真木
恋愛
燐砂宮が雪景色に覆われる頃、佳南は紫貴帝の御子を身ごもった。子の未来に不安を抱く佳南だったが、皇帝の溺愛は日に日に増して……。※「燐砂宮の秘めごと」のエピローグですが、単体でも読めます。
獣人の彼はつがいの彼女を逃がさない
たま
恋愛
気が付いたら異世界、深魔の森でした。
何にも思い出せないパニック中、恐ろしい生き物に襲われていた所を、年齢不詳な美人薬師の師匠に助けられた。そんな優しい師匠の側でのんびりこ生きて、いつか、い つ か、この世界を見て回れたらと思っていたのに。運命のつがいだと言う狼獣人に、強制的に広い世界に連れ出されちゃう話
国一番の大悪女は、今から屋敷の外に出て沢山の人達に愛されにいきます
海咲雪
恋愛
私、マリーナ・サータディアはユーキス国の第一王女でありながら、身体が弱く引き篭もりがちだった。
齢10代も半ばの頃には大分良くなり、そろそろ学園にも通えると思っていた矢先……
ユーキス国で、流行病が猛威を振い始めた。
そんな時、私の前に突然若い青年が現れた。
「マリーナ。いっぱい嫌われて」
「え……?」
「君が嫌われた人数分だけ命を救ってあげる。というか、嫌われた人数にだけ免疫をあげるよ。あー、でも、この流行り病からユーキス国全てを救うためには国民全てに嫌われるくらいじゃないと無理かな?」
その青年は不思議な力を秘めていた。
だから、はっきりと答えた。
「分かりました。その言葉が聞けただけで十分ですわ」
そして、私は国一番の悪女になった。
この物語はここから始まる。
私が国一番の悪女と呼ばれるようになった日、その青年はもう一度現れた。
「じゃあ、好かれてきて」
「君の人柄で、努力で、どれだけ変わるのか俺に見せて」
そして、学園に通い始めたマリーナは隣国の公爵子息であるクラヴィス・イージェルと出会う。
「君が誰かに嫌な言葉を吐かれた時は……その分、私が君を甘やかそう」
「マリーナ、大丈夫だから。どうか私に君を守らせて」
「ただそばにいたいだけなんだ」
世界が変わり始めた音がする。
【登場人物】
マリーナ・サータディア・・・ユーキス国の第一王女。17歳。
クラヴィス・イージェル・・・隣国マリス国の公爵子息。実際は・・・?
クロル・サート・・・マリーナに仕えている護衛騎士。サート伯爵家の次男。
リーリル・カリナ・・・マリーナのメイド。共に信頼しあっている。
フリク・・・不思議な力を持ち、マリーナを振り回す青年。神秘的な力を持つ。
【事前に書き上げている作品ではありませんので、不定期更新です。申し訳ありません】
【この物語は架空の設定であり、フィクションです。言葉遣いや設定があまい所があるかもしれませんが、温かい目で見て下さると嬉しいです】
聖獣の卵を保護するため、騎士団長と契約結婚いたします。仮の妻なのに、なぜか大切にされすぎていて、溺愛されていると勘違いしてしまいそうです
石河 翠
恋愛
騎士団の食堂で働くエリカは、自宅の庭で聖獣の卵を発見する。
聖獣が大好きなエリカは保護を希望するが、領主に卵を預けるようにと言われてしまった。卵の保護主は、魔力や財力、社会的な地位が重要視されるというのだ。
やけになったエリカは場末の酒場で酔っ払ったあげく、通りすがりの騎士団長に契約結婚してほしいと唐突に泣きつく。すると意外にもその場で承諾されてしまった。
女っ気のない堅物な騎士団長だったはずが、妻となったエリカへの態度は甘く優しいもので、彼女は思わずときめいてしまい……。
素直でまっすぐ一生懸命なヒロインと、実はヒロインにずっと片思いしていた真面目な騎士団長の恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
表紙絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID749781)をお借りしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる