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ある日。雨の降る街を歩いていると、一匹の子猫が箱の中で鳴いているのを見つけた。
俺は、彼に近づき、そこにしゃがみこんだ。
「お前、捨てられたのか?」
傘を差して、そう聞く。
「ニャー」
彼は答えた。
「そうか……」
「ニャーン」
彼は悲しそうな声で鳴いた。
「今夜は大荒れになる。そんなところにいたら風邪を引くぞ。」
俺の言葉に、彼は何も言わなかった。ただ、寂しげな鳴き声をあげるだけ。
「、、、俺に愛があれば、お前を救うことが出来たのにな。」
彼は、じっとこちらを見つめている。
「俺には愛がないから、、お前を拾ってやることはできないんだ。」
「…………。」
俺は立ち上がって言った。
「元気で暮らせよ。」
そして、また歩き出した。

その日は、酷い嵐だった。
雷も酷く鳴り響いていた。
俺は、布団の中であの子猫のことを考えていた。
『あいつ、生きてるかな……。』
俺に、人の心があれば、あいつを助けてやることが出来たのに。
でも、今の俺にはそれすらできない。

その日は、いつの間にか眠っていた。
次の日。俺は昨日の場所に行ってみた。するとそこには……
あの時の子猫がいた。しかし、、その姿はあまりにも変わり果てていた。
毛は抜け落ち、痩せ細り、骨が浮き出ていて、顔も体も傷だらけだ。恐らく車に轢かれたのだ。それでも彼は生きていた。
俺は、その無惨な姿を見て、涙を流すことすら出来ない。
こうなることくらい、簡単に予想出来ていた筈なのに。
俺は、それを見て見ぬ振りをした。
俺は最低だ。
自分のことしか考えていない。自分の都合の良いように物事を考えてしまう。
俺は、、、、俺は!!
「ニャーオ。」
彼の鳴き声を聞いてハッとした。彼は、まだ生きている。弱々しく、今にも死にそうだが、まだ生きている。
「ごめんな。こんな俺を許してくれ。」
俺の言葉を聞いた彼は、優しく微笑んでくれた気がした。
それから数秒後。
彼は、息を引き取った。
俺は彼を庭に埋めることにした。土を掘り起こして穴を作り、そこに彼を入れる。
そして上から土をかけた。
その上に木の実を置いた。
彼が天国で幸せになれますように。
そう願った。
その日の空は、雲ひとつない青空だった。


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