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シミュラクラ現象を想像せし、暇人。
しおりを挟む「ほー、雑学の本だな。どれどれ。」暇人は、うれしくなって若い男性が、読んでいる文庫本を読んでいる。男性の背丈が、ちょうど、暇人の目線にピッタリで顔の斜め隣、台座を背もたれにして、男性が読んでいるので、暇人にも、文庫本でも良く読める。いつもは、暇人より50メートル先の向かいのベンチ2台あり、そこが読書スポットだが、そこが、満員でなおかつ、今すぐその本を読みたいという人が暇人の作る影だったり、下の台座を背もたれにして立ち読みしに来るのである。
ちょうど、若い男性が読書をし始めて、30分後、男性は身に付けていた腕時計の時間を気にし始め、文庫本をリュックにしまい、その場をあとにした。予定していた時刻のための時間つぶしだったようだ。暇人は、男性の後ろ姿に静かに礼をのべた。
男性が去ったあとに暇人は、両サイドの植木、右くん、左くんに話しかけた。
「お~い、右くん、左くん、話をしょう。」
すると、右くん、左くんも、ゆさゆさ、ゆさゆさ、枝を揺らして合図を送った。彼らなりのOKの合図である。
「さっきの御人が、読んでいた本に、※シュミラクラ現象というのがあるそうだ。なんでも3つ点が集まると人の顔に見えるそうだ。我は、右くん、左くんに想像の中で、3つの蘭の花をそれぞれに咲かせてみようと思う。これから、思い浮かべてそうなるかためして見て、結果を2人に報告したいのだが、いいだろうか?」
すると、右くん、左くんはまた、ゆさゆさ、ゆさゆさ、枝を揺らしてOKの合図を送った。暇人は、嬉しそうに声を弾ませて、
「よし、じゃあさっそく思い浮かべる。しばし、待たれよ。」
「確かに、右くん、左くんに蘭の花を3つづつ、咲かせたら、人の顔になった。味のある良い顔だった。」暇人は、15分ほど、想像してから右くん、左くんに結果を報告した。すると、右くん、左くんは、ゆささ、ゆささ、ゆささ、ゆささと先ほどより、大きく枝を揺らして彼らなりの拍手を送った。
「うむ。」暇人は、うなずいた、そして、続けた。
「なぜ、蘭の花にしたかといえば、我の実家に、一度だけ、蘭の花が贈られたことがあり、父、立山ロドンのわれとは、別の作品が、大賞を受賞した時の副賞として白い蘭が送られて来た時、父さんが、我の前にその蘭の花をならべて、母さんや姉さんたちを集めて嬉しそうに自慢していて、その時に蘭の花は、お祝いの贈り物ということも父さんから、教えられた。」さらに、暇人は、続けて
「うむ、その、だから、遅ればせながら、我の背丈より成長した、お祝いと思ってほしい。実物でなくてすまん。右くん、左くん、成長、おめでとう!」確かに、暇人がこの公園に設置された時、右くん、左くんは、ようやく添え木が、とれたような若い低木だったが、現在では、暇人より1メートルくらい高いなかなか立派な樹木となった。
聞き終えて、右くん、左くんは、
ゆささ、ゆささ、ゆささ、ゆささ、ゆささ、と『ありがとう』の文字数で枝を揺らした。
「ただ、その、なんだろう、これからの成長は、ゆっくりでいいと思う。我が、目立たなくなってしまうから。」暇人は、遠慮がちに本音を言った。
※【参考文献】『アレの名前いえますか?』博学こだわり倶楽部 編・著
河出書房新社 刊 項96~97 より
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