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描かれたし、暇人。

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 「おー、スケッチブックを持ったお子たちが、よりどりみどり。」暇人は、感嘆の声を上げた。
 「しかしだんな!だんなを描いてくれるかは、選べませんよ!」すかさず、オナガくんがツッコミを入れる。
 「うむ、わかっておる。だが、画題に我を選んでもらえるように、我も準備をしてきた!」暇人は、得意げだ。 
 「準備・・・、何をしたんですか?」オナガくんは、たずねた。
 「引率の先生が5日前から、下見に来ていたのでな、『もう一つの両手』でまんべんなくちょっとずつ、体をぬぐって、キレイにしていたのだ、吉野さんのメンテナンスは、年2回しかしてもらえないのを先々月にしたばっかりだったからな。」
 よく見ると、確かに綺麗だった。  
 「しかし、小中高生、みごとに揃いましたね。」オナガくんの説明の通り、子どもちは、上下私服の子たちもいたが、お揃いの体操着に4-1、4-2と記載されていたり、中の刺繍のマークがついた、学ランや、セーラー服の子たち、なんと行っても、有名私立高校中宮トータル学院の子たちの男女共に珍しい、白いブレザーが、ささやかな校外授業の、格を上げていた。
最初に、画題選びにみんなあちこち散らばって散策していた。小学生は、児童公園エリア、中学生、高校生は半数以上、スポーツエリアの方向に移動して行くと暇人は、その一団に見慣れた人物を発見する。
 「あれは、我が宿敵、一番星美星!ぐぬぬ。」一番星美星、中宮トータル学院高等学校に通う高校生だ。やたらと暇人にからむ自意識過剰ぎみの男子である。わざわざ暇人によってきて、「そこの間抜けな石像よりも、スケボーしている人に、協力してもらって描こう!」と、言い放ち去っていった。
 「ぐぬぬぬ、言わなくてもよいことを小癪な小僧め。」暇人は、腹がたったが、むしろ移動してもらってせいせいしたと、気を取り直した。オナガくんは、沢山の子どもたちにワクワクして、やりとりに気が付がなかったようだ。やがて、暇人の周りにもゾクゾクと、児童、生徒が集りはじめなんと10人の子どもたちが集まった。 
 「おー、お子たちぐふふ、我を存分に描いてくれ!そして、我を有名にしてほしい!」予想以上に集まった子どもたちに、暇人は、興奮していた。
 『うーん、尊敬出来ないな~。』オナガくんは、つくづくそう思うのだった。
 「あっそうそう、オナガくん、その~、申し訳ないんだが、我だけを描いてほしくて・・・その~」暇人が言葉を濁していて、オナガくんは仕方ないな~というふうに、理解してため息をつきながら、「はいはい、だんなだけの方が、有名になるために、効果が、ありますもんね。じゃあ。失礼します。」オナガくんは、空中でしばしホバリングし始めて暇人から、ゆっくり離れていく。
  「うむ、すまない、また明日。」平謝りで、オナガくんへの挨拶を済ますと、暇人は顔に気合いを入れた。
 「よし、お子たちよ!我を美しく、画用紙いっぱいに、賞をねらって描くように!」しかし、そんななか、3人の小学生が、困惑した表情を見せはじめ、ついにがっかりした顔で、
 「鳥さん、いなくなっちゃったね~。」 
 「どうしょう、他行くー?」
 「花壇の花も綺麗だったから、そこ行こうか?」1人の子が、提案すると、他の友人らしき2人の子たちも、喜びながら、
 「賛成!」と答え、去っていった。
去っていく3人の子たちを横目に暇人は、心の中で大号泣した。
 「我、我のバカ、オナガくんにいてもらえば、よかった。」「我、うすうす、オナガくん込みの人気かなと思っていたが、まさかこれほどとは~、とほほ。」「いやいや、あと7人の子たちがいる!このチャンス、これ以上逃すわけには、行くまい!よし!気合いだ!」暇人が、どのような心理状態になっていても、見た目は、変わらぬ石像なので、特に気合いを入れても変わりはなかった。
 と、そこえトータル校のおそらく友人同士という生徒が、近づいてきた。
 「おい、どうしょう描くものきまんねー。もー、このさい児童公園の山型の滑り台にでもしねえ?」 
 「でもさ~、さすがにかんたんすぎてダサくね?」 
 「たしかに、じゃあ、妥協してあの寝そべっている石像にしない?あれも簡単そうだけど、滑り台よりマシじゃねえ?」友人の妥協案に対して、もう一人の生徒は、10秒くらい考え発言する。
 「そうだな、時間もないからそうしよう!」妥協案を出した友人も、やや、喜んで「だな。」と答えた。暇人は、近づいて来て腰を下ろしスケッチブックを開き始めた、男子高校生2人に、ご満悦だ。 
 「うむ、若干やる気なさそうなのが、気になるが、贅沢は言っておられん、これで9人、四捨五入で10人だ、ポジティブに行こう!」こうして、画題選びに迷う子たちはいなくなり、みなもくもくとスケッチブックに鉛筆を走らせていた。早い子は、外出用すいさいかセットの小型のバケツに水を入れたり、パレットに絵の具を、出し始めていた。

 ふと、遠くのほうから熱をおびたような視線を感じ、暇人はそちらの方に目をやったら、友人の1人だったのでやや驚く。
『あれは、嶋くんだ。私服姿だなー。ということは、休みか。……休みならなぜいるのだろう?、それに木の陰に隠れて、隠れきれてないがおしのびで誰かと待ち合わせかな?』暇人が、木の陰に見つけた人物は、名を嶋穏やかという青年で、この公園の清掃、保守係員であり、園内の美術館の学芸員と掛け持ちの契約で働いている青年だ。ゆくゆくは、全日学芸員として正式採用されるらしい。暇人の大ファンという理由で、この仕事を志望した変り者だが、優秀な青年である。ニックネームは、嶋くんである。そんな、嶋くんはこんなことを考えていた。
『あ~、あんなにたくさんの子たちが、暇人を描いてくれてる~。写生会で暇人の人気がなかったら、どうしょうと思っていてもたってもいられなくて休みの日だけど、来てよかった。着の身着のままサイフだけカバンに入れて来たけど、これは、写真撮りたかったー、スマホもってくればよかった。そこだけ、後悔。』嶋くん、この時、目はハートである。

 しばし、暇人は嶋くんをみていたが、熱心に写生している子どもたちに向き直り、再び気合いを入れた。
 「まあ、嶋くんはどうでもいいかあ、そうだな、今はお子たちに我を素晴らしく描いてもらうことに、集中しなければ、あ~、われ幸せ~、頼むぞ!お子たち!」しかし、暇人の気合いの顔面に触発されたのか、半分の子たちが、暇人の顔面を全面に描き迫力はあったが、そうじて頭部一番の特徴の毛先がカールの髪の毛の部分は描かれていないので、彫像であることがわかるものの、暇人であることはわかりにくくなっていた。絵の具も黒と白を使って灰色一色を濃くしたり、薄くしたりなので、なかなか地味な作風になってしまい、その子たちの親子さんでなければ、通り過ぎてしまいそうな作風で、作品を見れないという環境が、ある意味暇人にとって幸せだった。あとの子たちは、暇人の希望通り、全身と左右の植木❨暇人は、右にある植木を右君、左にある植木を左君と呼んでいる。❩、背景が、程良いバランスの構図でうまく描かれているが、入賞はなかなか難しそうだった。
 秋晴れの空にいつの間にか、鰯雲が美しく並んでいた。

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