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高3

和泉の初体験(2)

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 どうやら、亜姫はイヤイヤスイッチが入ってしまったようだ。
 この状態の亜姫は非常に不安定なので、言葉を慎重に選ばなければ取り返しがつかなくなる。
 
 ただ……これについては簡単に言えるものではないし、理解されるかもわからない。だから余計に……聞かれれば聞かれるほど、焦りや冷や汗しか出てこない。
 
 嫌われないだろうか。
 軽蔑されないだろうか。
 信頼を、全て失ったり……しないだろうか。
 
 和泉の中に、暗雲が立ち込めるように不安が広がっていく。
 
 そんなことを思うに、亜姫はハリケーンが発生するかの如く感情の激しさを増していく。
「いつ? 和泉の初体験って、いつだったの?
 全部教えてくれるんでしょう?……聞きたい……知りたいの……」
 
 言いながら、亜姫はまた落ち込み始めた。
 本来、自分から無理して聞き出すようなことはしない子だ。こんなことを口走ってしまう自分の行動にも、欲と理性の間にいる状態にも酷く苦しんでいるのだろう。
 
 すぐにでも取り除いてやりたいが、今回ばかりは言葉を選んでしまう。
 さて、どうするか………。
  
「誰だったの? 初めての人」
「えっ………?」
「何歳? 年上?」
「……あ、あぁ……歳上、かな」
「何歳の時?」
「……中二の初めの方、ぐらいかな」
 
 時期の早さに衝撃を受け、亜姫が目を見開く。
 
「ごめんな、早熟で。幻滅した?」
 
 亜姫はぶんぶんと首を振り、否定する。
 そして少しずつ、けれど止めることなく質問を重ねていった。

「何回もしたのは……その人?」
「うん……まぁ、そうだな」
「それも嫌な思い出、だったの……?」
「嫌、というか……今思えば、感謝してるって感じかな」
「何回、ぐらいしてたの……?」
「何回っつーか、時期的には一ヶ月ぐらい……。詳しく数えてねーよ」
 
 亜姫は泣きそうになってきた。
「……好き、だったの?」
「それはない。ヤるっつーより……」
「私の、知ってる人……?」
 言葉を被せて聞いてしまった。
 
 亜姫は不安にまみれていた。先程から嫌な予感しかしない。
 その相手に対して、和泉から「嫌悪感」が全く見えないのだ。逆に相手をいたわる気持ちすら伝わってくる。
 
 聞きたくない。違う人であって欲しい。
 
「そう、だよ。……亜姫が知ってる人」
 
 亜姫の願いは届かなかった。
 はっきり告げられた一言に、絶望する。
 
「それ、は……誰?」
 
 和泉は亜姫から目を逸らして言い淀んでいたが、やがて観念したように言った。
「絶対に、誤解、するなよ? ちゃんと、説明するから。
 初めての相手は…………里佳子だ」
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